23:天匠流抜刀術の心得
令和二日目の更新です。
天匠流抜刀術。とは言うものの存在している奥義はたった一つしかない。『抜刀術:鏡雀』ただ一つ。
だがこの鏡雀こそ基本にして究極の抜刀術である。
その極意は相手に剣を抜いたことも、斬られたことも悟られずに斬るという音速を超える居合い切りを放つことにある。
相手は自分が死んだことすら気づかず、死の感覚すら抱かずに死んでいく。
鏡雀習得のために必要な修行は大きく分けると二つ。
1、例えどんな体勢であろうとも抜刀するために体幹を極める基礎修行。
2、音速の抜刀を行うために抜刀の速度を高めるために素振りなどの基礎修行。
文字で書くと簡単だがやってみるとそうはいかない。1の修行は足運びに始まり相手の弱点へ的確に刃を当てるための距離の把握、さらに集中力を高めるための実践修行。
そしてどんな体勢でも同じ形を繰り出すための無限に続く抜刀の繰り返し。少しでもズレれば鏡雀は成功せず、相手に攻撃の隙をさらけ出してしまう。
そして2の素振りだが最初は普通の素振り、段階を踏むごとに両手に一本ずつもって素振り、さらに進めば足で素振り。さらに行けば腕だけで素振り。果てには体の軸のみを動かす素振りなど人間業ではない素振りまでやらされる。
けれどそれを乗り越えた先に究極の抜刀術『鏡雀』は完成する。そしてそこで止めず、更なる高みへと至るための努力を惜しんではいけない。
天上など存在せず、己は新たなる天を越える匠となるべく励むことからそう呼ばれるようになった『天匠流』
「天匠流抜刀術『鏡雀』」
それを見せるためにゆっくりとその動きを行う。鞘を前に出しながら刃を抜き、腕の位置まで鞘を出したら前に出した倍の速度で鞘を引き、刃を放つ。
獲物を切り終えたら同じように鞘を腕の長さ分前に出して刃を収める。元の位置へ戻す。
俺が斬った対象は手頃にあった海岸の岩。目で追える程度の速度でもこの程度の岩ならば簡単に斬れる。
「いやアール、『な?』みたいな顔されても普通におかしい。なんで豆腐みたいに岩が真っ二つになるんだよ・・・」
「修行の結果としか、流石にまだ手刀でこの大きさは無理だけどな」
「・・・・・そういえば剣聖でも師範は手刀で斬ってたな・・・あれ正直フィクションだと思ってたけどマジでやれんのか・・?」
「石ころ程度なら」
右手を剣、左手を鞘に見立て抜刀。流石に最初の大きさの岩はまだ無理だが、半分になったこの石ころなら手刀でも斬れる。流石にゆっくりはやれないので普通に高速でやるけどな?
イメージとしては小指から手首までが刃、それ以降が柄。どちらかと言うと槍振るっている様な感じかも知れない。けど剣もしくは刀であると認識することが重要だ。
斬れた石ころだがまだ斬られたことを認識しておらずくっついたままだ。だが足で軽く蹴飛ばしてやれば石は正しく斬られたことを認識して真っ二つに分かれた。
「「「『・・・・・・・』」」」
ギルファーも含めて黙るんじゃない。見たいって言ったから見せてやったのに。確かに常識外の出来事だろうから驚くのは無理ないけど、どこまで現実に近くてもVRには変わりないんだから『へぇ』ぐらいの気持ちでいる方がいろいろ楽だぞ?
まぁ確かに現実で飯作るときとか前よりずっと包丁が手に馴染むようにはなったけど。流石に手刀は現実では使ったことないぞ?なにか飛び散ったら片付けがめんどくさいし。
「うん。私アールが五年もやってた結果怪物になったのは理解できた・・・・けど好き」
「おい惚気るな女狐。アールがカッコいいのはお前に会うずっと前からアタシの方が知ってるんだぞ」
「「・・・・・」」
「いやなぜこのタイミングで喧嘩できるのお二人さん。俺としては言葉が見つからなくて困惑してるんだが?この犬っころまで見ろよこの表情」
『我はよくこの化物相手に戦いを挑んだと思う』
「現実逃避し始めたぞこの犬」
『カカカ・・・そういう時もあるっ』
いや確かにいろいろ言いたいことはあるんだけどよ?あるんだけどよぉ・・・・それでも一つだけ。これだけは言っておきたい。
「『鏡雀』の真髄はなんでも斬れることじゃないからな?」
なんでも斬れるのはあくまでオマケ。真髄は何度も言っている気がするが究極の居合術を生み出すことにある。
その果てはなく、一秒ごとに進化を重ねていくことにある。現に俺は他の流派との応用にて1度で5度斬るとか、衝撃を斬るとか、自分の存在を斬るとかいろいろ試したし。できたのは存在と衝撃しか斬れなかったけど。
鏡雀は長い年月をかけて生み出された最速の抜刀術でしかない。対象を斬ることに関しては自分の技能によって変わってくる。
例えば鏡雀を使えるようになったばかりの奴なら切り口は歪だし、綺麗に斬れないから相手に下手な苦しみを与えるし、剣もすぐに壊れてしまう。
対して熟練した技術を持つ奴が放つ鏡雀は相手に斬られた認識を与えず、切り口もわからないほど綺麗だ。もちろん剣には傷はおろか液体一つ付着しない。
つまり、ただ単に使えるようになった程度では天匠流のひよっこ以下、まだ卵程度でしかないのだ。
「まぁこんな感じだが他に見たいことと聞きたいことは?」
「ハイ!!」
「レイレイ」
「全力でやって」
「いいよ・・・・天匠流抜刀術『鏡雀』」
近くに全力の大きさをわかりやすく伝えられそうな物体がなかったので目の前に広がる海の方を向く。水は斬り方を少し変えてやれば鏡雀の熟練度を測ることができる最も良い計測器替わりだ。
今回は卵になる前の奴らに見せるので分かりやすい斬り方を選んだ。剣を抜いてから数秒もしないで目に見えると思う。
「「「『っ?!?』」」」
海が一瞬ではあるが横に割れ、縦に割れた。いわゆる十文字切りという奴だ。一度横に斬り、鞘に戻す。再び抜刀して今度は縦に振り下ろす。
これを瞬時に行うことで天匠流抜刀術鏡雀で行う十文字切りになる。
海は波しぶきをあげるのでそれが見えたのは僅か数秒だ。すぐに波と同化して斬った痕跡は見えなくなる。
「これでいいか?」
「うっそ・・・・冗談でしょ?・・・海が””凹んでる””!?」
「えぐったって言うのか・・・海底をっ・・・!!!」
あぁ、確かに少し縦に凹んでる箇所が出来てしまっている。まぁほんの数メートル程度だし別に生態系に問題はないだろう。
「マジかよ・・・天匠流ってこんな怪物生み出す流派だったのかよ」
はいはい、化物化物。
『『兇波鋭豹』を撃破しました』
『素材:兇豹の荒皮・兇豹のヒレ・兇豹の肉×3を入手』
『レベルアップ!アールLv15になりました』
『SP15を取得』
なんか巻き込まれた奴いたみたいなんだけどどういうこと?
とあるゲームのとあるキャラの戦い方を見てに天匠流抜刀術の発想が出てきました。




