22:斧と師範代
令和元年
皆さん令和でもよろしくお願いします。
無事にエリアボスを倒した俺たち・・・・いや正確には俺なんだが、それはともかく。ボスを倒したことで、塞がっていた道が開き、その先へ続く洞窟へと進んでいた。
この洞窟を抜けた先に次の街エーテリアがあるという。
その道中、特殊条件とやらを達成したことで入手した武器、『恨血木の破斧』の力を試してみようとなり、一先ず効果の確認をすることにしたのだが・・・・・まずは説明なんだがこれだ。
武器:斧『恨血木の破斧』
効果:攻撃力+36(+α) 特殊効果『猛血毒』
『グロルブルートバオム』の恨血が染み付いた斧。戦う毎に怨念を重ね強くなる。血の刺が刃に付着しており触れればその血は毒となり相手を呪うだろう。
説明が武器のやばさを物語っている。序盤で手に入る武器としてはとんでもない装備だろう。
しかもこの書き方だと戦う毎に強くなる。もしくは強化可能みたいだからずっと使い続ければ第一線でも活躍しそうだ。
それにしても恨血木から手に入ったのが伐採するために使う斧とは皮肉が利いている。
「情報屋の連中に流してみたけどこの武器の情報は持ってないってさ」
「こっちもダメ。誰も知らないみたい。ってことは初ドロップか情報隠蔽ってことだね」
マー坊とレイレイにもその筋の知り合いに情報を流してもらい聞いてもらったが誰も知らないらしい。
『話しているのもいいが雑魚が湧いてきたぞ』
洞窟の奥から出てきたのは眼球に羽を付けたようなコウモリと同じく眼球に手足をつけたカエルだった。数は・・・意外と多い12体だ。見た目がかなり気持ちが悪いのでウジャウジャいると余計悪い。
「ディジャブヴァンプとディジャブフロッグか・・。丁度いい相手かも」
「確かにな。こいつらならこの武器の強さ見るにはちょうどいいかもしれないな」
マー坊に続くように全員が同じ武器を構える。リーチは手から肩くらいまであり、重さも斧としては少々重い程度だが余裕で振り回せそうだ。それじゃぁお試し戦闘と行こうか。
それぞれが別方向へと動き出し、俺が向かう先にいたのはコウモリだ。パタパタと飛んでいるので上に逃げられると少々めんどくさい。なので軽くジャンプしコウモリよりも上から斧を振り下ろした。
だが器用なコウモリだ。飛ぶのに合わせて後ろへ下がるように飛んでいた。まぁこちらもその程度は対応できるので問題ない。空を踏み少し前へ跳ぶことでアックスブレードが当たる位置に体の筋を伸ばし、回避しようとしたコウモリを真っ二つへ切り裂いた。
やべ、なんだこの切れ味。言葉にするの難しいけどとにかくヤバイ。
斧の強さが全然わからんスパッと切れすぎる。近くにもう一匹カエルがいるよな・・・いた。今度はもっと適当に振り下ろしてカエルへと攻撃しよう。斬るのではなくイメージは叩く感じだ。
見た目通り動きはそこまで速くないようで、俺と目があってもゆっくりとした動きで迫って来る。舌伸ばしてきそうだなこいつとか思っていると案の定伸ばしてきた。眼球から舌を。っていうか舌そこにあるんかいっ気持ち悪っ。
とりあえず横に避けて下に向けて今度こそ適当に斧を当てる。重さと衝撃を限りなく少なくした接触は成功したようでカエルは大したことないようにカエルだけにケロッとしていた・・・・・
と、思ったら急に目から泡を吹いて倒れてしまった。もしかして毒?そう思って近づいてみるとカエルは光となって消滅してしまった。
毒もやべぇ・・・・他を見れば俺と同じように敵と武器を交互に見ながら現状に戸惑っていた。これとんでもない武器みたいだ。
特に苦戦する敵もおらず、ボス戦も無かったので洞窟をさっさと抜け、その先に広がったのは美しいライトグリーンの海だった。ほのかに香る潮の匂いと海風がなんとも心地よい。
その先を見れば次の街エーテリアと思われる街が見えた。街までの海岸線にはヤドカリやヒトデのようなモンスターがそれなりの数湧き出ており、俺たち以外のプレイヤーの姿もちらほら見えた。
「この星空の海岸からエーテリアの他に三つの街に繋がる街道に出られるんだ。だからああしてプレイヤーが結構いるんだよ」
だからプレイヤーの姿が見えるわけか。けどモンスター目当てに来ている奴も結構いるように見えるんだが?
「あのヤドカリは『流れ星の貝殻』ってアイテムを落とすの。結構いい値段で売れるからそれじゃないかな?」
つまり金策か。金は大事だからな。うん。
『なぜ我を見る』
お前のせいで街中走り回ってバイトしたりしたからだよアホ犬。街についたら首輪の購入も視野に入れようか・・・だめだ。斬られて終わる。
「どうするアール、敵無視して街まで走るか、敵全部相手にして金策してくか」
「マー坊。金は大事だ。いくらあっても困ることがない」
「決まりだな」
ニヒルな笑みをマー坊とともに浮かべる。金持ちでもコイツはそういう考えを持っているので考えることは同じだったようだ。
「ねぇアール?どうしてマー坊と同じ顔をしているの?なんでどうして私をのけ者にしないでよ一緒に冒険してるんだよ?悲しいよ?泣いちゃうよ?あ、そうかマー坊が邪魔なんだよね邪魔だね邪魔だよ邪魔だからここで」
「あー!!リークも一緒に倒してくれると嬉しいなぁ!!」
「うん!!アールと一緒に頑張るよ!!」
「・・・・・アタシもいるのにのけ者にするんだ・・・へぇ・・・・のけもの・・・のけもの・・・アタシ・・・いらない子だったのかなぁ・・・・・・!!」
「こういうのに詳しいレイレイもいてくれると俺は非常に助かるんだけどな!!」
「うん!!任せて!!あたしの知ってること全部教えてあげる!!」
あっぶねぇ・・・・まさかこのタイミングでこいつらの闇の人格出るところだった。油断も隙もあったものじゃない。メンタルケアはこいつらと一緒に居る上では最重要事項です。じゃないと人が消えかねん。
「これがお前の日常だ」
「お前もそこに含まれてるの忘れるなよ」
「オラォ!!アールの為に貝殻落とせぇ!!」
「貝殻ドロップ条件は貝殻無傷で確率上がるから傷つけんじゃないわよ女狐!!」
「了解よメス猫!!ついでにお前も消えろぉメス猫ォ!!」
「その言葉そっくりそのまま返してあげるわ女狐ェ!!」
俺が手を出すまもなく、あの二人はヤドカリ狩りをかれこれ三十分はしていた。半分以上は同士討ち狙いの仲間割れをしてるけど、いくら無限湧きとは言えやりすぎは良くないと思うんだがどうだろう?
「気にしなくていいと思うぞ?別に独占してるわけじゃないし」
「そうだといいんだがな・・・ヒトデきしょい」
いつの間にかズルズル迫っていたヒトデを斧で切り潰す。マー坊の方も丁度出てきたヤドカリを木っ端微塵に叩いていた。
レイレイによるとこのヤドカリもとい『オーシャンシザー』はレアドロップで『星屑の麗貝』なるアイテムをドロップするらしい。
一つ30000Dで売買されており、武器の強化にも幅広く使用されている貝殻を目当てに無限湧きの新しいポイントを即座に判明させたレイレイに追従し現在に至る。
ここは浜辺の岩陰で周囲を大きな岩で覆われている。実は来た途端に初心者御用達の蟹のレイドモンスター『ガンドロックキャンサー』というモンスターが偶然現れたんだがリークとレイレイの持つ限定ASが炸裂しものの数秒で討伐してしまったのだ。
哀れ蟹さん。出る場所と相手が悪すぎたんだよ。せめて次回は別の場所に出て欲しい。
「しかしレアな光景だぞ?二人揃っての限定奥義なんて滅多に見れたもんじゃないぞ」
「今後いい頻度で見そうな気はするけどな。けど確かにあの奥義は結構いい威力でそうだな・・・・何かに応用できるか?」
「・・・・・・なんで生身で使おうとするのかねぇこの男は」
レイレイの武器はトンファー。その限定AS『戦光麗撃』
リークの短剣2個持ち、その限定AS『サイレントスクリーマー』
マー坊によると限定奥義とは武器に備わっているもしくは特殊条件をクリアすることで習得できる奥義でその数は少なくとも18個存在が確認されている。
ふたりが使った奥義だが、まず『戦光麗撃』は高速移動しながら秒間23発の攻撃を約30秒間放つ攻撃で、『サイレントスクリーマー』は姿が消え、そのまま相手の器官を引き裂き抉る攻撃だった。
俺が言うのもなんがだお前らの奥義も十分人間離れしてないと戦えないような動きをしていると思うぞ?
「それを全部スキルもなしで見えてたお前が一番化物だって」
「なんか化物言われるの慣れてきた」
「「よっしゃぁ!!!レアモンスター撃破!!」」
俺たちが知らないうちにレアモンスターを撃破していたようだ。それと同時にリザルトが表示された。終わったのね。
『オーシャンシザーを231体撃破しました』
『海鳴ヒトデを54体撃破しました』
『レイドモンスター『ガンドロックキャンサー』を撃破しました』
『ブルーフォースシザーを撃破しました』
『海鳴オニヒトデを2体撃破しました』
『素材:星屑の貝殻×64・星屑の麗貝×15・海居虫の鋏×89・海居虫の心臓×27・海鳴塩×34・海鳴獣の核×12・岩刃蟹の鋏×2・岩刃蟹の甲羅×4・岩刃蟹の核・青海虫の住貝・青海虫の鋏・海鬼塩・海鬼の核を入手』
『レベルアップ!アールLv14になりました』
『UtS:師範代Lv1を習得』
『UtS:師範代Lv1の効果が発動。バトル参加プレイヤーにUtS月光流・UtS天匠流習得のためのスキルポイントを獲得』
「「「「っ!?!?!?」」」」
なんだそりゃ!?スキル確認!師範代!!
UtS:師範代Lv1:自分のパーティーに参加した全プレイヤーにUtS『〇〇流』習得のためのポイントを取得させる。習得までのポイントはUtS師範代スキルを持つ者だけが確認できる。
習得条件:UtS流派スキルを二個以上所持
修行者
リーク 月光流Lv1 1/150 天匠流Lv1 6/150
レイレイ 月光流Lv1 4/150 天匠流Lv1 0/150
俺はマー坊 月光流Lv1 0/150 天匠流Lv1 0/150
マジかよ。いやいやマジかよっ!?
「「アール!!?」」
「どういうことだっ!?」
ちょっと待て!!俺もちょっと混乱してるから!落ち着け・・・・落ち着け・・・よし。
スキル師範代は俺がスキルとして獲得している月光流と天匠流を俺と同じパーティープレイヤーに習得させるポイントを習得できるようになるスキルってこと。習得条件はっと・・・・流派スキル二個以上習得済み。マジか・・・・・
つまりあれだ。3人は俺の弟子扱いってことか?
「「「あっ」」」
「え?何どうした?」
「アール。これ見て」
ウィンドウを表示されリークが見せてくれたのは称号とスキルだった。
称号:月光流師範の弟子
称号:天匠流師範の弟子
UtS:天匠流(未熟):天匠流を使用することができる。
UtS:月光流(未熟):月光流を使用することができる。
UtS:天匠流(未熟):天匠流の道を進み始めた未熟者。
使用可能奥義:天匠流抜刀術『鏡雀』(未熟)
UtS:月光流(未熟):月光流の道を進み始めた未熟者
使用可能奥義:月光真流一之型『白月』(未熟)
「なんじゃこりゃぁ!?」
「私が聞きたいよ!でもこれって・・・そういうことだよね?」
だろうな・・・・(未熟)とは付くけど出来るってことだろうよきっと!!畜生!このスキルのこと広まったら嫌でもめんどくさい連中に付きまとわれること間違いなしだなおい!!!!切実に!!
「すまんお前ら!!!」
「「「誰にも言わない」」」
あ、もしかして顔に出てたやつか?それでもいいや。伝わったなら何よりです。
「ねぇアール?試しに使ってみてもいい?」
「あっ!アタシも使う!!いいでしょ!?」
「勿論俺も」
「・・・・・いや別に許可取る必要はないぞ?お前らのスキルになってるわけだし」
「「「改めて手本見せて/くれ/ない」」」
そういうことかよ。




