21:エリアボス
こんにちわ。平成最後の投稿になります。
また令和で会いましょう。
「バケモンかよ」
「おいこら」
『しかし間違いでもあるまい』
「黙れ化物筆頭アホ犬」
「でもさ?プレイヤー3人と犬一匹持った状態であそこまで飛べる普通?」
「飛んだんじゃない。跳んだんだ」
「大丈夫。私はアールの味方だから。例え人じゃなくてもアールはアールだよ」
「だから化物じゃねーって」
マー坊との決闘が終わり、私刑も終わった。ついでに貯めた衝撃の放出も兼ねて両手両肩背中に全員装備して空中散歩と洒落込んでみたらこの言いようだ。
散歩ついでに俺の現状とかジョブ以外ゲロったらドン引きされた。自分でもなんとなくそうは思ってたから気持ちはわかるけどそこまで引かなくてもいいじゃねーか。
「というかさ?着地してあたかも普通にまた飛んでるけどなんでこっちに振動来ないんだけどどうなってるんだよこれ?」
「全部もう一回飛ぶのに使っているからお前らの方に渡せないんだよ」
「「「『怪物かよ/だね/かな?/だな』」」」
最高度地点から全員全力で投げ飛ばしてやろうか?
自慢じゃないがお前らここで放り投げて全員田植えヨロシク地面に埋めてやることもできるんだぞおい。
「アール。向こうに行けばエリアボスのいるフィールドだよ」
「クランの設立はボスを倒した先にあるエーテリアじゃないと出来ないからさっさと進むのがオススメだから行こ?」
そういえばアホ犬に会う前の最初の目的はエリアボス討伐のはずだったな。クラン設立はもう確定事項みたいに話を進めないで欲しい。
でもボスはさっさと倒したいので空中で方向転換してボスエリアまで歩を進める。
「超越月光流十二宮奥義『月瓶エリシオン』」
前に進む力を無理やり回転させて別方向へ向ける。その時に発生した空気抵抗もろもろは力に変えて一気に目的地へと進んでいく。
『貴様以前よりも怪物になっているのではないか?こちらへの影響がまるでないのだが?』
「無いように動いてるんだよ。言っとくけど全部お前らに流してたら何人か剥がれ落ちてるからな?」
この状態でエリシオンと月渡の合わせ技である月瓶エリシオンは正直とても気を使っている。少しでも速度と動きを間違えれば風圧と衝撃波であっという間に剥がれ落ちると思う。わかりやすく言うとジェットコースターがいきなり速度ゼロで止まって吹き飛ばされるような感覚だ。
ジェットコースターといえば現実で三半規管トレーニングとどのあたりを揺らせば的確に三半規管に影響が出るのか検証するためにめちゃくちゃ乗り回した。
年間パスポート買って二日に一回一時間はずっと乗り回していた。スタッフに『ジェットコースター狂』と言われ、なぜか遊園地のオーナーにジェットコースター限定の永久パスポートをもらったりしたのは懐かしい記憶だ。
「みえた。あそこだよ」
リークの指差すそこは他の木よりも一際高い木々に囲まれたコロシアムのような場所だった。確かにボスエリアって感じはする。
「よっと・・到着」
「うわ地面の感覚懐かしい・・・無重力体験凄かったよ」
エリアの中央に着地して3人と一匹を下ろす。見ればボスエリアは木々に囲まれ足元の草花も他とは違う青い色をしていた。というか普通に馴染んでるよなこのアホ犬。
とか思いつついると、ひと吹きの風が駆け出すと、あたりの空気が変わっていく。同時にざわざわと恐るように木々が揺れ動き始めた。
その木の一角、他の木よりも明らかに大きな巨木が青く不気味な色へと変わっていき二つの真っ赤な眼が浮かびでた。やがて根が地表へと隆起し、足のようにその巨大を前に進め始めた。
「ニルスフィア大森林のボス『グロルブルートバオム』だ。あの果実は当たると猛毒になるから注意しろよ」
恨血の木とはなかなか面白いネーミングセンスしてるじゃないか。伐採された木々の恨みってところか?
あ?なんで日本語訳わかるかって?人間には一度闇にのまれる時期が来るんだよ。特に男子は
「あとあの木だけど戦闘を行うパーティー人数とステータスの総合レベルで攻撃力に変化があるの」
「マジで?」
「それ以外は特に変わらないから大したことないとは思うけど」
「どうする?ひとりでやる?それとも皆で始末する?」
パーティーが強ければ強いほど攻撃力が上がるボスと来たか・・・・・なかなか粋なことするじゃないか。油断すれば上位者でも一撃アウト。こういう手の込み方嫌いじゃない。
「・・・・アール、笑ってるの?」
「あぁ・・スゲェワクワクしてる」
初戦闘の相手にはいつだってワクワクだ。攻撃手段・手数・弱点。戦いながら探し出して攻略していくこの感覚が俺は大好きだ。楽しみで仕方がない。そんな折角の機会を四人で凹ってすぐに終わらせてしまうのは寂しい。
一人でやるかと聞いてくれたのだ。遠慮なく一人でやらせてもらおう。
「一人でやってみるわ。死んでも手出ししないでくれよ?」
「「それはやだ。危なくなったら手出しするからね/よ」」
さいですか・・・・ならそんな状況にならないように気を抜かず戦闘開始と行きましょうか。行くぞ恨血の木。その枝全部切り落としてやるから待ってろや。
「先手は貰うぞ・・・!!!」
返事を待たずに飛び出す。月渡で急接近し一閃の鏡雀で挨拶と行く。もちろんこの程度でボスはひるむこともない、切り抜けた俺の方を向き、勢いを殺し始めた俺へと生い茂る枝葉が槍のように向かってくる。
その中には先程の話であった毒の木の実が木の葉で見えにくいようカモフラージュされて混じり飛んできている。
気づかないで武器で防いだりすれば果実が破裂して毒を受けてピンチってか?意外と考えて攻撃してくるじゃないか。けど甘い。俺に当てたかったらもっと速度と果実の数増やしてこい。
「とりあえず全部返してやるよ・・・・流派超越抜刀術『朧鏡雀』」
触れないで果実だけ派手に切り刻めばお前の枝葉にぶちまけられるし、一部でもそのまま跳ね返してやればお前自身が自分の毒で苦しむ可能性はないわけじゃないよな?
高速で行われたみじん切りと衝撃を反転させることで元あった場所に帰っていく毒入り果実。細かく切り裂かれた果実はなかに詰まった果汁を撒き散らしながら枝葉へと飛び散り、跳ね返った実は本体へ激突し青い煙を立てながらその体を湿らせる。
『』
恨血の木は言葉を介さない。だが俺の予想は見事的中したようだ。果汁を浴びた位置から毒らしき禍々しい模様が赤く広がり、その幹を蝕んでいくのが目に見えてわかった。
真っ青だった体が真っ赤に変わりながら、徐々に枯れていくのはなかなかホラーな光景だ。そして毒に苦しむように根を地面に叩きつけ悶えながらも、己を陥れた張本人。つまり俺へと接近してくる。
おそらくその毒を俺にも味わあせてやるといった魂胆だろう。既に枯れ始めてやせ細る枝で果実をつぶしながら接近しているのがその証拠だ。
そっちがその気ならこちらはそれ相応の戦い方で行かせてもらおう。まずは動き回る根の起点となっている位置。丁度根と幹の間になる位置だ。まずはそこを抉るとしよう。剣を抜き、全身を使い描くのはフェンシングの突きに似た一撃。
違うのは前に構えるのではなく後ろに構え、飛ばす瞬間に全力で前に突き出すことだ。
よく突撃している時に、接敵してないのに途中に前に突き出して無駄でもったいない動きをしているアニメとかゲームとかがある。
見ていて格好良いが、天匠流剣術として言えば当たる瞬間、強いて言えば丁度刃の根元が相手の体に当たるくらいのタイミングで突き出すのが丁度いい。そのまま血眼雀に派生できるのでおすすめだ。
「超越流派剣技『天翔ブラッドアイズ』」
この技の射程は約5m。それが相手を貫ける距離。敵をえぐり貫く気、血を浴びることに特化した『天匠流剣技:血眼雀』と衝撃の矢を放つ『月光滅流十二宮奥義:天翔サジット』の合わせ技。
突き出された剣は斬撃を生み出し一本の矢へと変わり飛んでいく。不可視の矢は進路上に伸びた根や枝、果実を貫きながら砕いていく、何かに衝突することで落ちるはずの速度と威力は斬るごとに速さを増す『血眼雀』の特性そのままに、さらに付着した樹液や果汁が矢の姿を明白に浮かび上がらせつつ、さらに速度を上げていく。
速度が上がることで本来なら起こるはずがない小さな衝撃波が発生。その衝撃波が刃のように周囲の物をズタズタに引き裂いていく。矢はその衝撃波を背に受けてさらに加速し、恨血の木へと深々と突き刺さる。
『』
丁度そこで止まるような距離で放った矢は思惑通り深々と刺さり停止、その刃に内包した衝撃が木の内部で爆発する。上下左右あらゆる方向に暴走する衝撃は内部からズタズタに幹を引き裂き、鈍い音と共に木を根元から切り倒してしまった。
「あれ・・?これで終わり?」
あっけないほど簡単に倒れてしまったボス。根を失ったことで身動きが取れないようで枝葉を使い動こうとするが、枝に実る毒の実がその拍子に割れてさらに体を蝕んでいく。
やがて全身に毒がまわり、微動だにすることなくボス『恨血の木』は朽ち果てながら消えていった。
『エリアボス『グロルブルートバオム』を撃破しました』
『素材『恨血木の枝』『恨血木の葉』『恨血木の幹』を入手』
『グロルブルートバオムの特殊撃破条件『内部からの撃破』を達成しました』
『条件達成によりパーティー全員へ武器『恨血木の破斧』を配布しました』
『レベルアップ!アールLv13となります』
『SP15を獲得』
『UtS:天匠流Lv1を習得しました』
なんともあっけない最後ではあった。自分の武器で死んでしまうとは情けない。せめて自分の毒くらいは克服してから戦いを挑むように今後なることを期待しよう。明らかな弱点はゲームを作業にしてしまうから。
「思ったより余裕だったわ。というか拍子抜け?」
「「「『やっぱり化物』」」」
うるせぇやい。せめて攻撃力だけじゃなくてHPも増やしとけ。
自分よりはるかにレベルが高い相手二体と戦った後だとこの程度のボスはボスになりえないんですよ。




