322:試合後
設定更新忘れてた愚か者は私です。
「いやぁー危なかった・・・」
「何がだこのやろう!!? 最後めちゃくちゃ余裕そうだったじゃねぇか!!? しかもやり方が抉すぎんだろ!!? 俺じゃなかったらトラウマ間違いなしだぞコラッ!!?」
「いやいや、あの状態かなり厳しいんだぜ? 体の動かし方少しミスったら全身バラバラになるから。マジで」
『十六夜天雷』で身体強化。『天籟虚真刀:ズイカク』の『天籟』による思考加速状態と『艶姫鳳戦刀:コンゴウ』の『帰回愛』による永続回復。そしてそれらを全て考えて体を動かす思考回路の維持。
スタミナ消費が半端ないのだ。回復するけど直ぐに消費するから疲労感は消えない。それが一番でかい。ランナーズハイとかそんなもんじゃない。マジでゾーンが見えるとか、未来が見えるとかそんなレベルの疲労感が来るわけだ。
そこに極星ぶち込んでそのまま戦闘継続だぞ? マジで気を抜けば死ぬぞ? 思考回路を常に回し続けて戦い続けるとか本当に大変なんだぞ。わかりやすく言うとアーク〇イツみたいなタワーディフェンスを12倍速くらいでやらされる感じ。
タイミングとかミスったら突破されて即死だぞ即死。それを体感数十分。実際はもっと短いけど、それを続けてたんだぞ。途中で無理そうだったから解除して、比較的楽に使える『ユウダチシグレ』と『ジンツウ』に持ち替えて戦ったけど。
あれだってあくまでも『コンゴウ』『ズイカク』に比べたらってだけで、普通に疲れるし、『ズイカク』のように感覚強化じゃないから、一歩間違えばマー坊にペース奪われる可能性あったから正直ヒヤヒヤした。
試合終了と同時にアイテム使って回復してなかったら寝込んどるわ。試合終了と同時に持ってるアイテム一気飲みして、ディアたちにも全身に浴びせてもらったから今はもう平気だけど。
「攻撃出来ないし殺られる事エグイし容赦ないし喉潰されたから声出せないし針串刺しにされるしでもう勘弁してくれや・・・トホホ」
「それだけ追い詰められたってことだからよ。それよかお前こそなんだアレ? 少なくとも16回は0になったろお前? なんで負けねぇの?」
いくらエキスパートモードというHP制だからって、心臓とか肺潰されたら即死のはずなのにコイツ普通にピンピンしてたよな。
「新しいスキルだよ。『無双天命』。MPが0の間、俺のHPは0になったらHP回復と、欠損状態回復するんだわ」
「は? おかしくね? MPって攻撃しても受けても多少は回復すんじゃん?」
一応このゲーム。攻撃する、あるいは攻撃を受けると微々たるものだがMPが回復する。アイテム使ったほうが早いが、アイテムが尽きた際の最後の足掻きとしては悪くない。
少なくとも、即死状態で普通に攻撃してただろコイツ。
「それもスキルだ『オーバードライブ』って言うんだけどよ。発動時間は10分。使用回数は24時間に1回だけ。使用条件がMP300以上ある状態で全部使用。『オーバードライブ』発動中は設定した一つのスキル以外発動できなくなるし、MPも回復しないけど、代わりに全ステータス値が発動時に使用したMP×1.2倍の数値プラスされて、毎秒MP最大値分のHPを回復できる」
「ぶっ壊れじゃねぇか」
そんなスキル実装して大丈夫か運営? こんな最強スキル実装されたら皆使うだろ。
「俺の34時間ぶっ続けの努力と執念と血と汗と死闘の結晶だぜ!」
「それなら仕方ねぇな」
長時間労働には、それに見合った報酬が必要だ。これは相応しい報酬だろう。
「ちなみにどうやったの? 俺も取れる?」
「詳しくは教えんけど真化ジョブ『武神覇王』のジョブスキルなんだわこれが」
出たよ真化ジョブ。それなら納得だ。獲得条件は未だ確定してないけど、数人のプレイヤーが大なり小なり真化ジョブを手に入れ始めている。EXジョブに対抗するように存在するそれらの力は、まさに一騎当千を可能にする能力ばかりだ。
例えば『†黒悪魔†』の真化ジョブ『死神:夜天』は対峙する相手が溜め込んでいるヘイト値が高ければ高いほど強い力を持つらしい。
一匹モンスターにダメージを与えると、その周囲に居る全ての同名モンスター全てに同じダメージを与えるらしい。例えば、ゴブリン一匹倒せば周囲のゴブリンが全滅するってことだ。
その代わりメインジョブが固定されるらしいが、それほどの性能があればメイン固定程度は簡単に受け入れられるだろう。
「お前いつの間に・・・」
「つい五日前だな。取り立て新鮮だったから不意とかつけると思ったんだけどなぁ。お前全く動じねぇし。普通『勝った!』って思ったら油断するだろ? しかもほぼゾンビだったんだぜ? なのに全く動じねぇしなこんちくしょう」
内心ビビってたけどな。『何が起きたんだ?』とか『どうなってんのコイツ』とか。でもこの前『オーバーロード』と戦ってたしそこまでの驚愕はなかったな。
《《あの化物に比べたらこいつなんてカスよカス!! 負けてたら私がアンタを刺してやってたわよ!!》》
はいはい。
「ちょっと前にもっとヤバイ奴と戦ってたからな」
「あぁ〜・・・そうだった。なんだっけ?オバロだっけ?」
略すな。略したい気持ちはわかるけど、そう略すと勘違いするから。そう言えばあの時の映像使ったPV出てるんだっけか。なんだかんだ言いつつまだ直接は見てないんだよな。今度見てみよう。
「二人共凄まじい戦いだったぞ!!」
「アールかっこよかった!! あぁもう!! 私のアール好きぃぃ!!」
「師匠すごい!! あんなことまで出来たんだ!!」
「あれ? ニコニーコ? それにリークたちまで」
気が付くとニコニーコが笑顔でそこにいて、抱きぃってかんじでリークとルークがそれぞてくっついて来た。
「お前マジで気づいてなかったのかよ」
マー坊に呆れた顔で見られたのがちょっとイラっとした。仕方ないだろ。よそ見したら負けるって分かっちまったんだから。
改めてみれば試合前にはほとんど人がいなかったのに、今は人に溢れている。場内の窓に城壁の上まで凄まじい人数がこっちを見ていた。
やっぱり場内で決闘するの不味かったかな? まぁやっちまったことは仕方ない。それに被害はないし問題ないだろう。
「愛弟子」
「あ、マリアーデ・・・」
声が怖い。なんか嫌な予感。こらリークにルーク。急に離れるんじゃない。せめてくっついてろ。今日に限っては寧ろくっついててください。
「言いたいことはいくらでもあるのだが、そうだな。簡潔にまとめてやろう。感謝するが良い。そこに座れ」
「はい」
気が付くと正座してるよね。そりゃするよね。これ絶対説教入る。
「圧勝しろとは言わん。しかし自ら窮地に落ちることは今後許さん。戦うならば相手が誰であろうとも、無駄な傷を負うことは許可せんぞ。余はこのために『コンゴウ』を返した訳ではないことを心に刻め」
「はい」
「相手の情報を引き出そうと相手に対して実力を合わせることは良いだろう。だが相手とは合わせるな。相手の限界を見極めその一歩先に実力を合わせろ。出来ないとは言わせんぞ。余はそのための眼を、実力をお主に授けたはずだ。出来ないとは言わせんぞ?」
「やります」
「良い返事だ。それから愛弟子」
「はい・・・」
「『重葬剣戟』だが、以前よりも見事だった。より速く鋭い抜刀であった。それだけでなく全体的に剣技の練度も『ルナガラクシア』の連結も良い。今後も自己鍛錬は怠るなよ?」
「はいっ!」
正座中の俺の頭をくしゃくしゃと乱暴気味に撫ぜてきたマリアーデの優しい笑顔を見て、とても嬉しくなった。
「だが」
「イデデデデデ!!??!!」
「余に少しでも心配をかけた罰を執行する。感涙と贖罪の涙を流すが良い」
「待ってくれ師匠!!? 死ぬて!!? 聞こえちゃいけない音が聞こえてるからぁぁ!!?」
「大丈夫であろう? 『コンゴウ』に力が残っていることくらい余はわかっているからな」
「ギャァァァァァ!?!?!?!!!!?!!」
――――◇――――
「・・・」
「なんて言うか・・・うん。すごい光景だよね」
悲鳴を上げてるアールとか珍しすぎて何枚も記念に撮っちゃうよ。ギンは『ハァハァ』って息を荒げて立場を自分とアールに置き換えてるみたいだし。
コヨミとルークは絶句してる。そりゃね。日頃は今のアールのポジションが二人のポジションだからね。
「メス猫。写真良いの撮れたら売って。言い値でデータごと買うわ」
「お金はいいわよ。譲ってあげる」
「あら、いいの?」
「”コッチ”の権利もらったしサービスよ」
「うごごごごg・・・・・(パタリ)」
足元に転がる類人猿が泡吹いて沈んだわ。首にロープ巻かれて状態異常で身動き封じて締め上げたのだから当然よね。情報隠していた罪と、決闘とはいえアールを三回殺した罪は重いわ。
決闘の方は情状酌量の余地ありだけど、情報隠してアールのことを陥れた事実は変わらない。この類人猿含めて私たちはアールの全スキルと持ってる武器の能力を教えてもらってる。情報アドバンテージがある上で、自分が有利になる情報隠した状態でアールに挑んだこの類人猿は万死に値するわ。だから溺死させて窒息死させて惨殺して刺殺してから焼死させてやろうと思ったんだけど、湊が実験に使いたいって言ってたから譲ってあげることにした。新しい毒の被検体が欲しかったみたいだからちょうど良かったわね。毒は即効性のモノみたいで顔を七色に変えながら両目をぐるぐる回していたから首にロープを掛けるのは容易だったみたい。ロープにも毒を塗ってたみたいで、大した抵抗もできずにこうして絞殺出来たのよ。今度私も持ち歩こうかしら。アールに害をなす汚物を始末する手段はいくらあっても損はないわよね。
「ねぇレイレイ。殺すんじゃないわよ? こんなつまらない事でヘイト稼ぐことはないわ」
「当然よ。生かさず殺さずの瀬戸際で苦しめるから拷問と調教は意味があるのよ」
「あ・・・・かおぱぱ・・・・・(パタリ)」
「あぁどうしよかな。このまま街中を引きずってやろうかな。でもアールに怒られたくないし・・・うん決めた。えい」
「ごぺぇぇっ!?」
「これで許してあげる。よかったねゴリラ」
喉仏を蹴り飛ばして意識を失った類人猿を強制的に覚醒させて終わったみたい。思っていたより何もしないのね。やっぱり私が殺った方がよかったかしら?
「お・・・おっま・・・あくまかよ・・・」
「アタシに情報隠したことの罪をこの程度で終わらせてあげたのよ? 感謝しなさいよ。リークの私刑受けるよりはいいでしょ?」
「・・・・・・・・・マジでありがとうレイレイ様。生きてるって素晴らしい」
「分かればよろしい」
「失礼ね。流石にゲームの結果で殺したりしないわよ」
「ウンソウダヨネ。ゴメンナサイリークサマ」
変なの。急にガクガク震えちゃって。流石の私だって知り合いを殺したりはしないわよ。それにルールに則ったものだったみたいだし。隠してたことがあったのはまぁ、万死に値するけど殺すほどのことじゃないわ。
「精々9割5分殺しよ」
「ちなみになんだが、俺がアールに俺の情報ちゃんと言ってたら・・・」
「「何もするわけないじゃない(でしょう)? 馬鹿だったわね」」
対等な関係での決闘、もしくはアールに何かを隠してると自己申告してたならまぁギリギリ許容範囲ってことにしといてあげるわ。
師匠のアイアンクロー
こうか は ばつぐんだ!




