316:三国会合 Ⅲ
不穏な影のある会合の中、声を上げたその人とは一体・・・?
「シルヴァ。貴殿には護衛のみを頼んだはずだが?」
「勘違いしないでください公爵。私は王国の犬になった覚えはありません。たまたま目的が同じだったから着いてきただけです」
「口を慎め。この場は国の代表が集まる重要な場だ」
シルヴァと呼ばれた剣士は僅かに怒気を含んだ公爵の言葉をものともせず、なおも口を開く。
「私はラグズライド王から『七剣聖』の名を受けた女です。七剣聖の言葉にどれだけの意味が有るか、公爵も分かっているはずですが?」
「『七剣聖』・・・」
「あの気に入らん王国が新たに作った『剣聖』だ。余があの国を出た理由でもある」
ついこの前、確か自らを七剣聖と名乗っていた青二才がいたなそう言えば。一応『恋爪レオ』は使えるみたいだから、NPCとしてはそれなりの部類にはいるであろう雑魚だ。
でもそうか。今のマリアーデの発言で、王国はやっぱり『剣聖物語』本編の舞台になったあの『王国』で間違いなしか。けど時代と共に色々と変わってしまったと見てまず間違いないだろう。
「くっ・・・よかろう。ただしこの件はラグズライド王に報告させてもらうぞ」
「どうぞお好きに。改めて。初めましてアルベルト皇帝陛下、カイラ女王陛下。私はラグズライド王国前国王『ラグズライド六世』より『七剣聖』が一角『剣災』の名を襲名した『ジルヴァ』といいます。おかしな言葉があるやもしれませんがお許しを」
その場で軽くお辞儀する『ジルヴァ』と名乗った女剣士。その立ち振る舞いは以前の青二才とは比べ物にならない何かを感じさせる。名ばかりの『剣聖』じゃないってことみたいだ。
「『剣災』・・・噂では聞いたことがあるぞ。『剣災』が刃を振るった先に残るのは焼土であると。そなたがその『剣災』であると?」
「そのようなお恥ずかしい噂があるとは。しかしその『剣災』で間違いないでしょう。エリュザクト、ゼアリード両国に伝わる『剣聖』の方々の面汚しと呼ばれてしまうやもしれませんがね」
その言葉に、誰もが驚いた。当然俺とマリアーデもだ。あの時の青二才は誇りとか偉いとかを連呼していたし、公爵も言っていたが、『七剣聖』というのは国内でもそれなりに大きな発言権を持つらしい。
それを彼女は自ら”面汚し”といった。そして『本当の剣聖』ともしっかりと発言した。間違いなく彼女は俺たちを知っている。そしておそらく、俺たちに気づいている。
「ジルヴァ! 口を慎まんか! 貴殿の発言は我が王国の言葉と同義だと己でいったではないか!」
怒りを顕にして立ち上がり、吠えるように怒鳴る公爵。それでも尚『ジルヴァ』は言葉を撤回しない。
「事実を述べたまでです。それとも公爵ともあろうものが事実を受け入れられないとでも?」
「そのような事実はない! 『七剣聖』は我が王国が! ラグズライド王が七人の剣士に授けた名誉ある剣士の証! それを面汚しなどとういうのか!」
「だから事実でしょう。『七剣聖』と呼ばれている私たちは”ただ強いだけ”です。歴史に名を残している本物の『剣聖』を知る彼らにとって、『七剣聖』など侮辱以外の何者でもないと思いますが?」
「貴様・・・!!」
「ジキイド公爵閣下。我らはそうは思っておりません。確かに『剣聖』という名はエリュザクト帝国にとっても、ゼアリードにとっても、そして私個人としても思い入れのある名です。しかし私が知る『剣聖』は、”彼”は例えどんな時であろうとも自分を曲げず、信念を貫き通した方々なのです。そして私は、彼女の姿に”彼”の姿を重ねました。間違いなく彼女も『剣聖』の名を授かる者として相応しい方だと私は感じました。私などの言葉では意味はないかもしれませんが怒りをお収めください」
「・・・・・・失礼したカイラ女王。私も少々疲れていたようだ。女王陛下よりそのようなお言葉を受けて、感情に流されては幼子と同じようなもの。お恥ずかしい姿を見せてしまったこと謝罪する」
カイラの言葉に少し気分をよくしたのか、はたまた敵国となる相手に無様を見せたくなかったのかは不明だが、公爵は怒りを鎮め着席した。チラッとカイラがこちらを見て『言ってやったぜ』的な視線を投げてきたので『いいからはよ進めろ』とだけ視線を投げ返す。
「それでシルヴァさん。貴女の話とは?」
「先程公爵からの言葉がありました『すぐには信頼できない』という言葉に対して、帝国、魔国双方へ私から提案したいことがあります」
カイラとアルベルト皇帝は視線を一度合わせるとお互いに頷いた。アルベルトが口を開き彼女の発言を許可すると、彼女はしっかりとした言葉で言い放つ。
「この会合に連れてきた彼らを、この帝国で、帝国に住む方々、そして魔国方々を交えた数ヶ月間の交流を提案させていただきます」
「ジルヴァ!? 貴様何を言い出すのだ!?」
今度は怒りではなく、慌てた様子で身を乗り出す公爵。そして急に話を振られた少年少女たちもビクンと体を震わせて驚いていた。
「だってそうでしょう公爵。貴方は言った『すぐには無理だ』と。だからこそ王国の未来を担う彼らに、三国の未来を託すんですよ。私や貴方のように硬い考えを持った頑固者じゃなくて、未来を生きる彼らに」
「し・・・しかし彼らは・・・!!」
「そうだったジキイド公爵。彼らは一体? 後ほど聞こうと思っていたのだが」
「か・・・彼らは・・・」
「あの子達は前世の記憶を持つ人間。王国では輪廻転生から言葉を貰い『転生者』と呼んでいます。『転生者』と呼ばれる彼らは前世の記憶。それもこの世界に限らず、別の異世界と呼んでいるこことは異なる世界の記憶を持つ者たちです」
「・・・・・・っ」
おいおいおい!? マジでかっ!? VRMMORPGに『転生者』枠追加だとっ!? ある意味俺たち時代人も転生者のようなものだけど、直接、しかも名称として『転生者』が登場したのは聞いたことねぇぞ?
「王国ではそんな彼ら『転生者』を集めて新時代の担い手の育成をしています。前世の記憶を持つからこそ、別視点の考え方を持つ彼らだからこそできることがあると、王国は考えています。そして、彼らだからこそ未来を預けるにふさわしいと思うのですがいかがでしょうか?」
この場にいる誰もが開いた口がふさがらない。あのルシオンですら驚きを隠さず、チーザーに関しては表情が固まっている。ニコニーコなんてポカーンとしたアホ面でもうとんでもないことになっている。
チラッと実況掲示板を覗くと、まぁすごいことになっていた。こんな展開誰も予想してなかったわけだし。
「・・・帝国としては王国、魔国の友好の架け橋となれるのならば、喜んでその案を受け入れたい。カイラ女王。貴方はどうか?」
「え・・・えぇ、ゼアリードもそれは願ってもいないことです。しかし・・・よろしいのですか?」
口を開く二人の王。そんな二人に笑みを浮かべ彼女『ジルヴァ』は口をまた開く。
「もちろんそれに伴う様々な費用、そして彼らの安全の確保。そして万が一があった場合の可能性など、帝国魔国が伴う負担は大きなものでしょう。しかしそれだけの価値があると私は思うのですがどうでしょうか?」
二人の王はもう一度お互いを見合うと、力強く頷く。
「ジキイド公爵、剣災シルヴァ殿。帝国はその案を受け入れたい」
「ゼアリードも素晴らしい未来作りの手伝いをさせていただきたいです」
「わ・・・わたしには・・・」
「七剣聖が一角『剣災ジルヴァ』の名において誓いましょう。この交流が三国に素晴らしい未来を描くきっかけにするために、実行します」
こうして、今回の会合はある意味第四勢力とも言える『剣災ジルヴァ』によって、まさかの展開へと転び始めた。
「それでですね。ひとつだけ私からお願いがありまして・・・アルベルト皇帝陛下に言うべきでしょうか?」
「うむ。ジルヴァ殿の言葉だ。聞こう」
「そちらにいらっしゃる方々のことを紹介して頂けませんか?」
「ッ・・・わかった」
やっぱりバレてたか。マリアーデと顔を見合わせ、諦めたような、けどほんの少しだけ、彼女の誠意に応えるために、俺たち二人は彼女たちの前に足を踏み出した。
二人目の七剣聖『剣災』のジルヴァ登場。
思いっきり『クラス転移者』のことをバラした上で和平に転がるように話を持っていく。




