315:三国会合 Ⅱ
王国と帝国と魔国。
それぞれの運命はいかに・・・
「開門!!!」
王国の大使の直衛に回っていたレイレイからの連絡通り、一時間ほどで王国からやって来た彼らを乗せた馬車が帝都に到着した。
連絡通り護衛は三人。馬車の中には7人。報告通りだ。彼らを乗せた馬車は帝都に入った後まっすぐ城へとやって来た。
そして今まさに城の門が開き、彼らがこの城に入ってきた。彼らを出迎えるのはミカルド将軍始めとする近衛騎士団。そして第二王女シルフィア。
「ようこそエリュザクトへ。ラグズライド王国の皆様」
シルフィアの挨拶と共に騎士団一同が膝をつき彼らを出迎えた。馬車の戸を開くと、最初に降りてきたのは、連絡で聞いていたいかにも偉そうな男。『の、である』とか言いそうな風貌のちょっと太り気味の男。
「これはこれはシルフィア様。それに皇帝陛下の近衛騎士の方々まで」
「ジキイド様。お久しぶりです。王国の大使がジキイド様だったとは驚きました」
「陛下からの王命です。私が断るわけ無いでしょう。例えどのような命であるとも」
シルフィアがジキイドと呼んだ男。ここまでは割と普通の人物だと思わせる印象がある。それと発言から王国に忠誠を誓っている印象もある。
「長旅でお疲れでしょう。部屋をご用意しております。定刻までしばしお休みくださいませ」
「ではお言葉に甘えさせていただきましょう」
「はい。ではミカルド将軍。頼みましたよ」
「はっ!」
ミカルド将軍に案内されて馬車は用意された宿舎へと向かう。今のところ怪しい反応も、気配も感じない。
「アール様。どうでしょうか? 僕としては今の所は安全かと」
「俺も同意見だ」
城壁より彼らを見ていた俺とエルフの騎士。彼とは顔面フリフリの仲である。そんな彼と共にやって来た大使の様子を見ていたのだ。何かあれば即座に対応できるように、出来るだけ気配を消して。
「少々気になるといえば大使の方がシルフィア様にかけた声質が気になったくらいです。まるで獲物を狙う狼のようでした」
「シルフィアは美人だからな。良からぬ事を考えでもしなんたろうさ」
「もしシルフィア様に手を出したら肉達磨にしてやる・・・」
気配なく殺気を込めるあたり、自分のやるべきことは見失っていないのはさすが騎士だ。
「ミカルド将軍もいるし、ミリアスもマクリスもいるんだ。万が一が起こったらその首を撥ねて終わりだ。流石に外交問題になるからしないとは思うけど」
「そう・・・ですよね。すみません」
「気にするな。それだけシルフィアが城の皆に愛されてるって証だ。さて、まずは安全確保は出来た。俺は陛下達のところに行く。あとは任せるぞ」
「はい。皇帝陛下のことお願いします」
この場をエルフ騎士に任せ、俺は陛下たちが待つ会合の場へと足を向ける。ついに始まるんだ。これから先の運命を決める三国会合が。
――――◇――――
「定刻となりました。これより三国会合を始めさせていただきます。陛下よろしくお願いいたします」
「うむ。ラグズライド王国のジキイド公爵、魔国ゼアリード女王カイラ殿。この場に来てくれたこと、心より感謝する」
「アルベルト皇帝閣下。こちらこそこのような場への招待。ラグズライド王国を代表して、嬉しく思います」
「ゼアリードからも、心よりの感謝を陛下へさせていただきます」
「その言葉を余は嬉しく思う。早速会合を始めよう」
アルベルト陛下の言葉と共に会合が始まった。国の代表である彼らの後ろに控えている兵士と戦士たち。アルベルト皇帝とシルフィアの後ろにはミカルド将軍とグルドール騎士団長。
カイラにはドドドラ、そして早朝やって来た二足歩行のモンスター『キメラ』の騎士。ドドドラの部下らしいのだが、ぶっ飛んできたカイラにおいて行かれたため早朝の合流となってしまったのだ。
ちなみにこのキメラ騎士。超紳士。
最後に王国なのだが、彼らだけは少々異様だ。兵士と思われるのは二人確かにいるのだが、そのさらに後ろに六人の少年少女。いや一人デカいけど多分少年。いや青年か。
そしてこの場で俺が最も警戒している女剣士。壁際に背を預け目を閉じて声だけを聞いている。しかしだらけている訳だはなく、しっかりと周囲の視線を感じ取るように首を動かしている。
「陛下。よろしいですかな?」
「うむ。答えよう」
「彼らが話に聞いた時代人ですかな?」
ジキイド公爵が視線を向けた先。そこにいるのは時代人の代表だ。邪魔にならないように若干離れた場所に立ち、この会合に同席している見届け人のような感じだ。
ルシオンとチーザー紫。そしてニコニーコ。プレイヤーを大勢まとめており、尚且つこの場に相応しい装備に着替えた状態でここにいる。
「そう言えば彼らの紹介がまだであった。彼らが時代人の代表だ。此度の会合にはこれより先の未来に大きな意味を与えるものだ。新しき時代に生まれた彼らにも見届けて欲しいと思ったのだ。ルシオン。代表して話をせよ」
「分かりました」
アルベルトに指名されたルシオンが一歩前に出て片膝を付き挨拶をする。その後ろではニコニーコが堂々とした姿勢で立ち、いつもの様子とは考えられないほど麗しい姿で立つチーザー紫の姿がある。
「あの小娘。前と雰囲気がまるで違うな」
「女は演技派ってよく言うだろ?」
そして、俺とマリアーデは気配を消すように『桜奏呼吸』をより深く、より大きくすることで会場の一角で待機している。代表としてではなく、万が一に備える防衛力として。
「ご紹介に預かりました時代人代表のルシオンと申します。ラグズライド王国の皆様。魔国ゼアリードの皆様。この度は若輩者である我らをこの場に招待いただきましたこと、誠に感謝しております」
「なるほど、新参者でも自らの分は弁えているようですな」
随分と偉そうに鼻を鳴らして答えるジキイド公爵。その後ろに控える騎士の視線も格下を見るような、そんな視線だった。話には聞いていたけど人間種至高の考えはかなり根深いようだ。
「そう言ってやるなジキイド公爵。彼らも我が帝国に生まれた新たなる民なのだ。余としては今回を機会に王国にも時代人と交流をしてほしいと考えておる」
「申し訳ありません皇帝閣下。私の一存ではそこまでのことを決めることはできません。しかし前向きにラグズライド陛下にはお話しておきます」
「感謝する。この星で共に生きるもの同士。互いに手を取り合いたいと余は思っている」
「アルベルト皇帝。我らゼアリードも同じ思いです。ジキイド公爵。ゼアリードの民は王国ともエリュザクト帝国と同様に友好関係を築きたいと思います」
それはカイラが目指すただ一つの願いだ。俺と旅をしていた時とは違い、今彼女が背負うのは大勢の命。そんな命を守るためにカイラはこの場に望んでいるのだから。
「お言葉ですがゼアリード女王陛下。そのお言葉は大変素晴らしいです。王国も貴国同様、誰もが皆平和に過ごしたいと考えております。しかし先のゴブリンによる帝国侵略を目の当たりにした今、我が王国は貴国への不信感を抱いております。この不信感が拭えない限り、友好関係を築くのは難しいでしょう」
「おっしゃる通りです。そしてこの場で、この場にいる皆様に国を預かる者として心からの謝罪を申し上げます。我が国の民が帝国の民を手に掛け、そして王国の民へ恐怖を植え付けてしまったこと。申し訳ありませんでした」
カイラは立ち上がり、アルベルト皇帝とジキイド公爵に対し、頭を下げて謝罪した。それは国の王が見せる誠心誠意の謝罪だった。
「頭を上げてくれカイラ女王。我が帝国の民は確かにゴブリン族により少なくない被害を受けた。だがそれを理由にゼアリードを恨むことはしない。それに貴国からはその件に関する多大なる賠償と贖罪を受けている。そして我が民草もそれを受け止め、今は前を向いている。それに、その件があったからこそ、我が帝国は新しき友となる時代人との関係性を理解できたのだ」
打ち合わせとかをしていたわけじゃない。アルベルト皇帝も、その後ろに控える将軍たちも皆そう思っている。だからこそカイラの謝罪を受け止め、力強く頷いたのだ。
「どうだろうかジキイド公爵。すぐには難しいと思う。しかしこれからのゼアリードを見て、未来を信じてみるというのは?」
「そうですな。少なくとも未来ならば王国の民の考えも変わるやもしれませぬ。その時が訪れた時は、カイラ女王。先程の言葉を信じ共に歩んで行きたいと思います」
「ありがとうございます。アルベルト皇帝陛下。ジキイド公爵閣下」
ひとまずの代表同士の和解は住んだ。しかし同時にひとつだけ、たった一つではあるけど、最も重要なことへの道が閉ざされたことを示していた。
少なくとも現状、ゼアリードとラグズライドの関係性は修復できない。それは帝国が割って入ったとしても叶わぬ願いとなってしまうのだった。
「失礼。口をはさみますよ」
だが、会議は思いもしない方向へと進んでいく。
不穏な影が会合に漂う。
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