11:面倒事と合流と
こちらの体感時間で僅か6時間程度しか経っていないが表に出しにくい、出したくない案件がいくつも手元に転がってきたわけだ。
ここまで抱え込んでしまうと『月光流』もそうだが『桜華戦流』と『天匠流』はあまり外では使わないほうがいいかもしれない。変に悪目立ちするのは避けたい。
前に発売した世界中のプレイヤーの中から最強の剣士を決めるオンラインゲーム『ワールドブレイド』で別ゲームの技を使っていたプレイヤーがいた。なんでも合気道に似た技らしいのだがそれを見た他のプレイヤーに『インチキ』だの『チート』だの言われてしまった事例があるらしい。
なんでもそのプレイヤーは公式の調査まで入った事もあったからたまった物じゃなかったそうだ。
俺もそうなってしまうと流石にやる気が失せるので気を付けよう。でも正直言うと使えることが分かってテンション爆上がりで、剣聖時代のロールプレイまで決めた後で考えるのは既に遅いとは思うがそれはそれとしよう。
ミールとの話は二人との待ち合わせが近かったので切り上げさせてもらった。もっと色々話したかったようだがこちらにも都合があると話すと納得してくれた。
という訳で現在待ち合わせ場所だと言っていた街の中央にある噴水公園にやってきたわけだ。夜の街だが魔法による街灯が街を照らしておりレンガづくりの建物とマッチして中々の光景となっている。
エクストラでも開けるシステム画面の表示では現実時間午後10時となっていたので時間ちょうどである。それでも噴水公園にはなかなかの数のプレイヤーがいた。
俺のように今日始めたと思われる初心者装備のプレイヤーが四割、露店を開いている生産職系のプレイヤーが二割、残りはなぜ居ると聞きたくなるほどの重装備や高レアリティ装備と思われる装備を身に纏う上位プレイヤーと思われるのが残り四割というところだろう。
この街は始まりの街のはずだからこんなにも上位プレイヤーがいるのも変な話だ。公式では既に惑星のおよそ五割は既に開放されているとの話だからここにいるのはなにか理由があるのだろうか・・・・・・いや、そういえばあの二人も確か上位プレイヤーに名を連ねるとか話していた気がする。
もしかしてあの二人目当てにここまで集まってきたのだろうか?
ちょっとメール送って確認だけしておくか・・・・あ、フレンド登録してないからメール送れない。
仕方ない。街にいるプレイヤー一覧から二人が言っていたプレイヤーネーム探してDM送るか・・・・・・・・エクストラモードプレイヤーは一覧開けないんだった。
詰んだじゃねーか。仕方ないので待ってよう。諦めも時には大切だ。
「お願いします!!無理を承知でお願いします!!」
「いやな?気持ちは解からんでもないんだけどよ?」
「約束してるの。ごめんね」
「ですよね・・・・・ほら、お前も諦めよう?次頑張ろうぜ?な?」
「ううう・・・・でもよぉ・・・」
そんな時に聞こえたのはそんな会話だった。見れば戦国武将の鎧を現代風にアレンジしたような姿をしている大男と暗殺者がよく来ていそうな軽装でありながら黒いローブを魔術師のように来ている女性の二人がよくあるRPGの鎧を来ている男ふたりに申し訳なさそうに断りを入れていた。
「でもゴーレさんだって諦めたくないでしょう・・・・!俺は諦めつかないんです・・・・!!でもリークさんとマー坊さんの事情もわかってるつもりなんです・・!!!」
「まぁ・・・約束がなかったら即決していくレベルの案件ではあるんだけどな?」
「この約束だけは守りたいんだ。本当にごめん」
「あぁもう!白!仕方ないだろ!今回は二人抜きでやるしかないんだって!先約いるんだもんしゃーないだろ!」
「・・・・・だってぇ・・・・」
多分だけどあの断り入れてる二人が何かの攻略に必須レベルの人物でそのふたりが約束があるからそれに参加できずに悔しがってるってところだろう。
それもその約束の主って間違いなく俺のことだろうな。『リーク』と『マー坊』言ってたし朝聞いた二人のプレイヤーネームもそうだったはず。
『白』と呼ばれていた彼は理解はしても諦められないという顔で今にも子供のように駄々を捏ねそうな表情だ。必死に何度も説得を繰り返していた。
「なんか・・・・すごいな」
「すごいでしょ?あの人たちトッププレイヤーだからね。目立つよね?」
「・・・・・・だれ?」
右真横から突然現れた声、ビックリはしたものの俺のすぐ後ろを歩いていた気配はしていたのでそこまで驚きはしなかった。声をかけられるとは微塵にも思ってなかったけど。
「ただの通りすがりだよ。『レイレイ』っていうの。よろしくね新人・・・・君?」
見た目を見られて疑問符を浮かべられた。まぁ確かにこの格好で初心者だとは思わないよな。全身をダークブルーで纏めた明らかに初心者装備ではない格好だし。でもどうして俺が新人だとわかったのだろうか?
たしかこのゲーム名前とかそういうのは基本的に頭の上とかには表示されないはずだけど。
「あ、驚いてるね。きっと『どうして新人だとわかるんですか?』的なやつでしょ?」
「頭の上に名前か何か表示されてます?」
「いいや?このゲームにそういう機能はないよ?これ私のスキルなの。ちょっと特殊なんだけどね?名前とレベル、あとHPがわかるんだよ。それでレベル的に初心者かなって」
やっぱりスキルか。便利だなスキル。こういう所でもあれば便利なスキルは重宝する。俺は未だ戦闘系のスキルしか習得してないし。
「納得しました。わかるとは思いますけど『アール』です。よろしく。それで彼らに限った事じゃないですけどなんでこの街にこんなに凄そうな人たち集まってるんですか?」
「実は街の南に新しいダンジョンがこっちの時間で一週間前に出たの。そのダンジョン攻略のために上の人がこの街に集まってるの」
「なるほど、それでこの街を拠点として使ってる訳か・・・じゃなかった。ですか?」
「そんなに改まんなくていいよ。軽くいこう?」
「・・・・・ならそうさせてもらうけど、でもそれであそこの二人をあんなに必死に援軍頼むことになるのか?」
アイツ等じゃなくてもトップ連中はいるはずだしあそこまで固執しなくてもいいとは思う。別にそのせいで声かけにくいとは思ってないわけじゃないが。
「あの声かけている鎧二人組がいるクランがね、ダンジョン攻略で新情報掴んだみたいなの。それが広まる前に制覇したいみたい。それでそこに出たモンスター相手に有利な『マー坊』とあの腐れ女狐程度に頼んでるんだって」
腐れ女狐て・・・そこだけすげぇ恨み感情の篭った声色だった。仲悪いんだなきっと。PKでもされたのか?
「けど二人のリアルの友人がなんでも『プラクロ』始めるみたいでその案内とかで今日は空いてないんだってさ。それを承知でお願いしてるのがあの光景ってわけ・・・・あの女狐とゴリラのリアル友人なんて一人しかいないじゃない・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・なんか聞こえた気がするけどスルーしよう。
「・・・・・・私だって励久と友人だもん。むしろ私のほうが先に知り合ってるし仲良かったのにあの女狐・・・・私が告白しようとしてたのに・・・・あの女狐・・・・!!」
あ、俺この『レイレイ』の正体分かった。でも今はスルーしよう。触れちゃいけないやつだ。とか思っていたら急になにか閃いたようだ。
「でもきっと二人共行きたいと思うよ。女狐!・・・は気に入らないけどそこだけは同情するよ」
なんかさっきより気持ち声大きくない?特に女狐のところ気合入れてない?
「あのダンジョン奥地でだけ出てくる『クリスタルゴーレム』倒したら手に入る『星屑の光結晶』っていうアイテムがあってね!!それが武器性能上げられるみたいなんだ!!」
「・・・・・・・・」
なんか露骨に声大きくなってない?なってるよね?そのへんの人もこっち見てるもん。
「けどそのゴーレムまだ誰も倒せてなくて苦戦してるんだって。アイテムの情報は密偵とかが使えるスキルでたまたま手に入っただけだから全然無い訳でトップ走る身としては是が非でも欲しいアイテムだよ」
すげぇ聞き慣れた名前と衝撃の事実が聞こえたんだけど聞こえなかったことにしたい。
俺の所持品にそれがゴロゴロしてるのは隠し通そうと今決めた。ついでにあのゴーレム共の強さも把握できたのでこれも隠し通そう。
そしてやっぱり露骨に声大きい。俺は見てないけどあの二人がこっち見てる気がする。
「あ、でもその『星屑の光結晶』レアドロップみたいでそれ以外だと『光結晶』ってアイテムなんだって。これがまたすごくて高い回復能力を一定時間得られるみたいなの。強敵相手にはぜひ持っておきたいアイテムだよね!!どう思う!?」
「うるせぇぞメス猫」
うわぉ・・・気が付けば俺を間に挟んでレイレイの反対側、俺の右側にリークがいた。しかも露骨に切れてらっしゃるようだ。この表情アバターは現実のそれではないが間違いなく唯だわ。
ならこの唯の反応的にレイレイの正体は間違いなく唯の幼馴染『綾坂湊』だと思う。この二人幼馴染だけど仲悪いし。
このやりとりもいつも見てたし関わってきたから知ってる。ついでにこの状況もよくある光景だから嫌だけど慣れ親しんだものだ。ただし周囲は全く知らない環境なので視線が凄い。
「女狐黙って。私は今この初心者のアール君に何があったのか教えてるんだから」
「はっ!あの新種相手にダメージ一つ与えられなかったメス猫風情が教えられることあるとは思わないけど?」
「『星屑の光結晶』と『光結晶』の情報流してやったの誰だか忘れたの?もしかしてあんたバカなの?」
「「・・・・・・・・」」
ちょっと?俺を挟んで火花散らすのやめてくれない?そう言いたいのに口が動かん。あれこの状況傍から見たら修羅場じゃね?なんか俺にも変な注目集まってるの勘弁してくれない?
「どこにいても相変わらずだなおい」
「あ、もしかしてその新人さん俺らの待ち人じゃねーのか?」
「「っ!?」」
「バカお前!!この状況でその話振るんじゃねーゴリラ!!・・・・・・あ」
おバカ。俺の馬鹿・・・・・自分で墓穴掘ってるじゃないのよ。面倒事になるの間違いなしの地雷見事踏み抜きましたよバカ野郎。
「「もしかしてりk」」
「お前らも俺のリアルネーム出そうとするな」
危なかった。この流れ絶対リアルネーム口にする所だっただろ。身バレは勘弁願いたい。ええいこうなればヤケだ。ロールプレイも糞もない。普段通りにすればいいんだろ
「今の俺は『アール』だそれ以外の名前出したら二度とこのゲームやらん。ついでにお前ら二人との付き合い方も考えるからそこは理解しろ。返事」
「うん。分かった!アールだね」
「それ以外で呼ばないってアールに誓うよ」
「ついでに喧嘩は止めないがリアルでのいざこざは持ち込むな。返事」
「「うん。分かった。アールがそう言うなら・・・・真似するな/しないで」」
「返事は?」
「はい」
「わかった」
「やっぱりご主人様ポジじゃねーか」
うるさいゴリラ。穏便に済ませたかったのにお前の一言がなければもう少しうまくやれる・・・・訳ないか。こいつら二人相手にそれは無理だな。うん。
「あのー・・・・」
「あ、すみません。なんか変な空気にして」
駄々を捏ねそうな顔をしていた白と呼ばれていた彼も困惑した顔をしていたが俺の方まできていた。
「あ、なんとなく要件は分かりました。も「アール来たからごめんなさい。次の機会は必ず参加するから」・でもも「代わりにそこのメス猫連れてっていいですから」・・」
二の句くらい言わせてくれやせめて。しかもサラッと邪魔者消そうとしてるし
「あn「ごめんね。私もアールとマー坊くんとこの女狐と行くことにしたからいけないの。代わりに『星屑の光結晶』あげるから頑張ってね」・・・」
サラッと重要アイテム渡すなよ。いつの間にか白さん?の手元には『星屑の光結晶』が三つほど現れていた。三つも持ってたのかよ。
「はぁっ!?ふざけるなメス猫!!お前前に売ってくれって頼んだ時もう無いとかいったたじゃない!!なんで三つも持ってるのよ!!ひとつくらい売りなさいよ!!」
「黙れ女狐!!あれからずっと潜ってたから手に入ったのよ!!アンタに売りつける分は別で用意してあるわよ!!今回だけパーティー入れてくれるなら無料でやるわこの程度!!」
「上等よメス猫!!!今回だけ特別に許可してやるわ!!光栄に思いなさい!早くよこせ!!」
喧嘩するほど仲がいいとはこの事だろう。口は悪いが二人でパーティー申請とアイテム取引が同時に行われたみたいだ。
『『俺はマー坊』『リーク』『レイレイ』のパーティーから『アール』のパーティーへの参加要請が届きました。承認しますか?』
俺にも届いた。もちろん承認するつもりだが・・・だけど俺のパーティーに参加っておい。これ俺が頭やるやつかよ。お前らの方がレベル上だろ?
とか思うがこのメンバーだとマー坊は基本そういうの嫌いだからやらないし、リークとレイレイもやらない。俺以外やるやつがいないのはいつも通りではある。
「あー・・・白さん・・あとゴーレさん・・・でいいんですよね?」
「・・・あ・・・・はい・・・」
問題は放心状態になっているこの状況を打破する必要があるわけだ。
「そういう訳で申し訳ないんですけど・・・・・」
「あ、いえ、むしろこちらこそすみません」
「またの機会にさせてもらいます・・・・行くか?」
「お・・・おう・・・・それじゃまた・・・」
白さんはプルプル震えながら街の出口の方へ歩いて行った。ゴーレさんは白さんが持つアイテムに目を奪われていて完全に正気には戻れていなかった。
けどチャンス。アイテムへここにいるプレイヤーの目線は集まっている。逃げるなら今しかない。とりあえず承認を済ませてパーティーを組み、両隣の二人を担ぎ、マー坊の腕を引っ張って噴水公園から逃げるように離れよう。
リアルバレは避けたいですよね。




