10:ギルドにて
走ります
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「あ、そうです。ギルドに顔を出していってください。私の名前を出せばギルドマスターに会えるはずですから」
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館にてプレシアにそう言われて俺は数時間前にミールと約束していたギルドへ向かっていた。
館から出ると日が少し沈み始めていた。古風な街中に映る夕焼けというのも中々乙なものだ。住宅街は外食であろう家族連れや仕事終わりに1杯やろうと意気揚々と歩いてる若者だったりが増えていた。
そこから街の中央へ向かって歩いていけばプレイヤーと思われる格好の奴が一気に増えてくる。初心者装備も結構見えたので最近始めたプレイヤーが多いのは話を聞いていた通りのようだ。
でもそれと同じくらいの数ごっつい装備に綺麗な装備をしている上位プレイヤーらしき姿も結構いた。何かあるんだろうか?あとで合流したら唯と裕二に聞いてみよう。
街にいるプレイヤーを色々と見ながらギルドまで歩いていて思ったが、やっぱりこの装備は初心者が着ける装備ではないな。
ダークブルーと散りばめられた水晶細工の装備が鉄や牛革などの装備とは別次元の光を放っている。けどプレイヤーメイドならそう珍しくもないのか誰かに声をかけられるとかそういう事はなかった。
後で知ったが掲示板ではこの装備のスクショが撮られており、盛り上がっていたらしい。それを俺が知ったのは次の街に行った時だったが。
それからほどなくして無事にギルドと思われる建物にたどり着いた。見ればわかると言われてはいたがこれは確かにわかりやすい。
白いレンガ作りの街中に赤レンガで作られた一際大きな建物に看板に描かれている交差している剣のシンボルマーク。そしてその近くにいるのは様々な武器を持っているプレイヤーやNPCと思われるキャラクターたちの姿だ。
中に入ると外で見るよりも天井が高く感じ、テーブルと椅子、ステージも用意されておりよくあるギルドって感じだ。
見渡せば依頼と思われる張り紙やBARカウンター、受付テーブルもあり、なかなかに繁盛しているようである。
ミールは確か自分の名前を出してくれと言われていた。ノルマか何かあるのだろうか。そうだとしたら知らない仲でもないし協力してもいいだろう。ちょうど受付も空いたようだしさくっと済ませてしまおう。
「こんにちは。初めての方・・・ですよね?」
俺の装備を見て首をかしげる受付さん。確かにこんな装備で初心者だとは思わないだろうな。
「はい、数時間前にここに来たアールといいます。えっとミール・・・さん?いますか?」
「えっと・・・・マスターにか御用でしょうか?」
びっくりニュース。あいつギルドマスターだったのかよ。どう見ても小学生のちびっ子にしか見えないだろうアレ。もしかしてそういう種族的なやつか?けどちょうどいいか。
「プレシアさんに言われましてここに顔を出しておいて欲しいと」
「っ!?・・・・しょ・・少々お待ちください」
プレシアの名前を出すと一瞬動揺したがすぐに表情を戻してカウンターの奥へと言ってしまった。あの動揺っぷりはもしかしてプレシアはすごく高貴な人物だったりするのか?
「やっと来たね! 遅いよ君!!」
「あぁ、その声ミールか、お前ギルドマスターだ・・・どちら様?」
奥から現れたのはさっき見た子供ではなく抜群のプロポーションで真紅のローブとポニーテールが特徴の魔女のような姿をした女性だった。
「驚いた?私君が見た時みたいに姿を変えて街で遊んでるんだ!それでこっちが本当の姿だよ!」
姿を変えれるのか、やっぱり魔法すごいな。こんなこともできるのか。
「さてさて、本当ならジョブの説明とおすすめを調べるとかしようと考えてたけどまさかプレシアの名前が出てくるとは思わなかったよ。しかもそのジョブとプラレア手製の装備一式とはね」
「わかるのか?」
「うん。私はちょっと特別な力を持っていてね?少し集中すればその人の全てがわかるんだ。そうでもなくちゃ極悪人とかもギルドに入れちゃうかも知れないからね」
鑑定的なスキルだろうか?でも確かプレイヤーのステータス全てを覗き見るスキルは無かったはずだからNPCにだけ与えられる特別なスキルだろう。
「私のことはいいよ。君のことだ。多分だけどその力はまだ公にしたくないんだろう?」
「まぁな。受け継いできた物をホイホイ表に出すつもりはないからよ」
「そう言ってくれると思った。じゃなきゃプレシアが認めるはずもないし」
つまりそういう所も込で認められてたってことか。でもやっぱりプレシアって凄い人なんだろうか?ミールは親しげだし。もしかして
「君が考えてるとおりだよ。彼女は私の前のギルドマスターなんだ。そして歴代最年少で歴代最強のマスターでもある」
やっぱり。でも最強だとは思わなかった。これもしかしなくてもサブシナリオか何かでイベントあるやつだろうな。
「さてそうなると話すことは一気に減ったけど別のことも話さないといけないね。少し時間をもらえるかい?」
まだ合流するまでの時間はあるのでそう返事をするとギルドの奥へと案内された。そこの一角にあったマスターの部屋と書かれた扉を開けて中へ入っていく。中にあったソファーに腰を下ろすとミールはティーセットを持って反対側へ腰掛けた。
「自家栽培のお茶だよ。美味しいから飲んでみてよ」
「いただきます」
レモンティーに似ている味がする。ほんのり甘く飲みやすい。美味しいと言おうとしたら指を振られた。
「言わずともわかるとも!美味しいでしょ?」
「すごく美味しい。おかわりとかしていい?」
気づけば無くなっていたのでおかわりをお願いしたら嬉しそうに二杯目を注いでくれた。
本当に美味しいなこの紅茶。味覚がしっかりしてるのも凄い。最初に食べた肉もそうだが、細かいところまで力入れてるなこのゲーム。
「先に渡しておくよ。はいこれ君のギルドカード。これがあれば他の街のギルドでも依頼を受けることができる他に傭兵登録とか傭兵依頼とかも出せるよ。後はモンスターの素材の交換とか買取もギルドでできるようになるから無くさないようにしてね?無くしたら再発行には結構なお金がかかるからね?」
渡されたギルドカードを受け取りアイテムポーチにしまった。結構色々と便利なものみたいだから大切にしよう。
「それからこっちが君のランクを示すタグね。最初は皆ブロンズからスタート。ある程度依頼をこなして君が信頼に足る人物だと分かればシルバー、ゴールド、プラチナ、オリハルコンの順番に上がって行く仕様だよ。上がれば上がるほどレベルの高い依頼とギルドでのサービスを受けられるから頑張って上げて欲しいな」
チェーンのついたタグを受け取り首にぶら下げることにした。依頼をこなしてランクアップの仕様はどこでも同じらしい。
「それで、話ってなんなんだ?」
俺としては場所を変えるほどの話なのでそちらのほうが気になった。間違いなく星読み人関係の話だろうし。
「単刀直入に言うよ。君は自分が受け継いだ使命、つまり星読み人の使命を知っているかい?」
「使命?」
そんな話はされていないが、何かあるのだろうか?首をかしげる俺を見てミールは苦笑いをしていた。
「アハハ・・・やっぱりプレシアはその話はしてなかったか。ならうん。私が教えようかな」
「いいのか?プレシアが教えてくれなかったってことは大事な話なんじゃないか?」
「いいんだよ。私も何とは言えないけど君やプレシアと同じ『星の継承者』だからね」
とんでもないカミングアウトに思わずソファーから落ちそうになった。マジかよ。まだプレイして一日経ってないのに新情報バリバリ知っちまってるぞ。これどう収拾付けるんだよ。
「まぁ使命といっても難しいことじゃないよ?星読み人アール君、君の使命は各地を巡り全ての『星の継承者』にあってその全てを継承することさ」
「はぁ!?全て!?」
おいちょっと待て!?一旦落ち着かせてくれ流石に俺もびっくりするぞ!? 深呼吸深呼吸・・・・ってことは何か、この世界には少なくとも『星読み人』『星術師』『星拓者』『星聖者』『星の錬金術師』の五つのエクストラジョブがあるのは確定として他にもある可能性があるってこと!?
それを全部継承するとかマジか・・・これ絶対進めていけばワールドシナリオ発生させる案件だろ・・・・・マジかよ。
「うーん・・・君の反応を見ればだけどもしかしていくつか知ってる?」
素直に俺が今知っている五つのジョブの話をする。ついでに俺の前世云々の設定の話もしておいた。最初はやれやれといった感じで聞いていたミールだが俺の前世の話、つまり『剣聖』の話になると目を見開いて食い入るように話を聞いていた。
「ってな訳で『星読み人』『星術師』『星拓者』『星の錬金術師』『星聖者』があることは知ってるんだ」
「ふぇえ・・・まさか『剣聖』の生まれ変わりだとは思わなかったよアール君・・・あ、態度改めたほうがいい?」
「別に」
「そ?なら変えないでいいね!いやーちょっと焦ったんだよね実は。もし『寄らば斬る』的な人だったら首飛びそうだし」
「切らねーよ」
逆に俺が返り討ちにあいそうだ。そうでなくてもこのステータスでは相手にすらならんだろう。見た目魔術師だし。
「うん、ならぶっちゃけようか。はい!私が『星術師』の継承者であり『星術師』の伝導師でもあるミールさんだ!讃えたまえ!」
「おーすげー・・・・ってマジでか!?」
伝道師というのがエクストラジョブ取得に関わる重要人物なんだろうな。ってことはプレシアが『星読み人』の伝導者ってことか。
「そして君が知ってる通りプレシアが『星読み人』で妹のプラレアが『星の錬金術師』の伝導者だよ」
もう驚かんぞ。姉妹揃って伝導者かよ。あの姉妹すごいな。
「つまり君は三人の伝道者を知ってることになったね。あとは君がその資格を得てから会いに来てくれた時に試練を受けてもらうよ」
「なぁ?資格について何かヒント的なものもらえないか?」
何もなしは流石に辛いぞ?真っ暗な迷路を手探りだけで攻略しろって言われてるようなものだ。
「うーん・・・教えてあげてもいいんだけどね?まだ君の実力じゃ早いかな?」
つまりレベルを上げて出直してこいってことか。流石に今聞いても教えてはくれないか。
「けど一つだけ教えてあげる。他の全ての力と同じことだからね」
「本当か。助かる。ありがとうミール」
「いいって事さ。15年ぶりの新しい継承者だからね。これくらいは当然だよ?でも簡単な話なんだよ。何があっても『星の加護』を捨てないこと、そして『闇』に染まらないことだよ。あ、これだと二つだね」
星の加護、つまりはエクストラモードから変更するなってことか、それは問題ない。変えるつもりは元からない。もう一つの『闇』に染まらないってどういうことだろうか?『悪』ではなく『闇』という点が気になる。
聞こうとすればまたミールは指を振っていた。好きなのだろうか指を振るの。
「おぉっと言わずともいいよわかってる。答えるとも! 『闇』に染まらないっていうのは一つ、悪事を働かないことね。悪人には継承者はふさわしくない。一つ、これはそのままの意味だよ。わかりやすく言えば”私たちの敵”にならないこと。この二つを総称して『闇』に染まらないで欲しいんだ。条件というよりはお願いに近いかな?」
「・・・・わかった。約束するよ。俺は星の加護を捨てずに闇に染まらない。星読み人アールとして、剣聖と呼ばれた男として約束するよ」
正直”私たちの敵”というのがどんな存在か分からないが今ある情報的に”あっちの裏ボス”もしくは”真ボス”の可能性もある。どんでん返しで”幼馴染の怨念”とかもありえないわけじゃない。出てきたらまたぶった切ってやる。
「よかった。そう言ってくれると私も嬉しいよ。ならはいこれあげる」
素晴らしい谷間から何かの紙を取り出してくれた。受け取るとほのかに暖かい・・・・ハッ!ミールのやつニヤニヤしてやがるっ!深呼吸・・・・深呼吸・・・ふぅ。
落ち着いて紙に書かれていることを読むと・・・・・・・またとんでもないなおい。
ジト目で見るとニコニコしてどうぞとジェスチャーをしてこちらを見ていた。取れってことね分かりました。
「スキル習得の書『UtS:星の魔術回路Lv1』発動」
『スキル習得の書『UtS:星の魔術回路Lv1』を発動しました。』
『UtS:星の魔術回路Lv1を習得しました。』
星の魔術回路Lv1:魔術・魔法・呪術の効果が(スキルレベル×1.2)倍になる。またスキルに経験値が蓄積していく。レベルが最大になると何かが起こる。
これ絶対に資格条件の一つだろう?しかも効果またやばい奴だし。
「さぁアール君。『星術師』資格ゲットのために頑張ってね!」
とんでもない情報がたくさん入ってきています。けどリアル『剣聖』だから仕方ない




