5:初戦闘
プラレアに見送られ、扉の先へと足を進めた俺。一瞬視界が光に包まれるが、徐々に落ち着いてきた。そうして見えてきた光景は、先ほど教えてもらった青く輝く小さな泉がある小さな広場だった。
ここが復活ポイントのようだ、その他には特に目立つものは見当たらない。
どうやら復活ポイント以外には特に何もないようだ。シンプルイズベストって感じの空間だな。そんな視線を変え先に続く階段がある方を見れば圧巻の一言である。
まず第一に壁がないのだ。正確に言えば空間を区切る壁がない。巨大な空間に蛇のように曲がりくねった道が一本だけある。道を踏み外せば奈落の底とも思える暗闇へと落ちていくだろう。
そんな危険な道の先にあるのは最終地点とみられる巨大な広場。ゴールが見えているのは分かりやすくていいが、この場所から見えて、しかも巨大な空間と来れば、明らかにボスエリアなんだろう。
広場の壁際には上に続く階段が見える。多分階段を上った先にさっき言っていた『星の祭壇』があるんだろうか?
暫定ボスエリアにたどり着くための道は一本道だ。途中いくつかの広場があり、その広場の前後には明らかに『敵です』アピールしている光る結晶で出来た人型ゴーレムが徘徊していた。分かるだけで通路には12体。
小さな広場は確認できるだけで4つある。おそらくあそこでも何かしらの戦闘はあると予想できるから更に4回。分かるだけで16戦くらいはすることになるだろう。
まさか最初に戦うモンスターがゴーレムになるとは思わなかった。最初は狼とかスライムとかゴブリンとかそういう奴らと戦うと思っていたからな。
しかも戦場となるであろう足場もかなり悪い。一歩間違えれば死ぬだろう。ぶっちゃけそれは別にいいんだけど、問題は攻撃に関してだ。
「剣が効けばいいんだけどな」
ゴーレム=物理に強いイメージがある。しかも現状俺のレベルは1。若干不安だが、何とかしようと意気込んでいざ行こう。
といっても道の先にいるのが見えているので奇襲は特に警戒しなくても多分平気だ。余所見したり、相手を見落としていたりしなければ問題ない。
問題があるとすればそれは、ゴーレムの索敵範囲がどれだけあるのかだ。広ければ広いほどゴーレムが集まりやすくあっという間に集団戦になる。そうなれば間違いなくこっちが不利だ。
どうなるか少しワクワクとハラハラが混じる感情を抱きながら、階段を下りて道なりに進んでいく。すると一番近くに配置されていたゴーレムが俺を捉えて走ってきた・・・・まだ数歩しか進んでないんだけど?
かなり索敵範囲が広いな、このゴーレム。そうなれば戦闘距離も考えながら戦わないと混戦になってキツそうだ。
「って意外と足速いなオイ!?」
普通に走ってるのはわかるが思ってた以上に速くないか!? 曲がりくねっているといっても100m近くあるのにもう50mないぞ!?
これ絶対に強い奴だろう!? くっそこれ絶対に集団で相手したらアカンやつだ。
間違いなく俺のステータスなら囲まれたらボコられて負ける。
まぁステータス補正ないがなっ! 幸いなのはその奥にいるゴーレムとの距離は結構離れているので同時に戦うことは少なそうだってことか。
「初戦闘なんでなよろしく頼むォオオおおお!?!?!?!?」
まだ数十メートル距離があったのにゴーレムの腕だけ飛んできたぞ!? ロケットパンチ装備かよおい!! ギリギリのところで回避が間に合ったが初心者じゃ回避できんぞ今のっ!?
けどチャンスだ。腕一本なくなったんだこれで優位にたて・・・・
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・!!!
『・・・・・!!!』
「ちょっと待てや!?」
立ち止まったかと思うと飛んでいったはずの腕が上から『ゴーっ!』と音を立てながら戻ってきていた・・・・いや戻るのかよ!?
これロボットのよくあるロケットパンチじゃねーか!!!著作権的にいいのかよ!?
『・・・・・・』
なんか気持ちあいつが焦る俺を見て『ニヤっ』とした気がした。上等じゃねーか!
「叩き切ってやる!!」
剣を構えて一気に距離を詰める為に駆け出した。走る感覚は現実そのまま、息も上がるし無理はできないが、この感覚いい!
先制攻撃はくれてやったが最初に一撃決めるのは俺だ!
ゴーレムが迎え撃つように大きく腕を広げその場で上半身だけをいい速度で回転し始めた。けどこの程度なら視える。対処は余裕。
全力で走り奴との距離を詰める。このまま突っ込めば間違いなくミンチだが腕の動きは追えない速度じゃないから問題ない。
腕間近まで詰め、そこからスライディングで滑り込む。慣性に倣って上手いことスライディングが決まってくれた。
地面も凹凸が少なく摩擦も多くないようでかなりいい感じに滑ってくれる。さて、こういう強敵感あるゴーレムには必ず弱点となるコア的な奴がどこかにあるって相場で決まっている。
あるよな? あると信じてるからな? まずはそれを探すために相手の全身を見てみよう。回転する上半身にはそれらしき物は見当たらない。なら下半身か顔のどちらかだろう。とりあえす適当な一撃叩き込んで様子見と行こうか。
しかし、こいつは思っていたほどバカじゃないらしい。スライディングを見るやいなや回転する腕を斜めにして俺を迎え撃たんとしてくる。
だからそう来るのは"視えてる"って言ってんだろ。”腕の回転に合わせて体を捻り紛れ込ませれば”攻撃は当たらない。
体を捻り、回転する腕に合わせて速度と侵入角度を身体を捩り、力を入れながら調整する。残念だったな。この程度なら経験済みなんだ。悔しかったら俺が対応できない速度で回してみろや。完璧に攻撃をすり抜け、背後へ抜けつつ身体を切り裂くように一閃。
『・・・!!?』
「ちっ!」
思ったよりも俊敏なやつだなおい。剣が当たる前にその場でジャンプしやがった。振るった剣は足に弾かれた。やっぱり剣での攻撃はあんまり効かないか。予想はしてたけど、となれば俺がこいつの表面からダメージを与えるのはほぼ不可能に近いわけだ。
さらに追い打ちを掛けるようだが、ゴーレムには弱点と思われるものが背中にもどこにも見当たらなかった。となれば体の中か存在しないかのどちらかだ。つまり普通に考えればダメージを与えられない俺は詰んでる。
けど今動いてみて一つの目処というか可能性は見つけた。動く感覚、感じる衝撃、空気感、どれも『剣聖物語』と同じだった事だ。
さすがは『エクスゼウス』の新作。体が世界に馴染む感覚が半端じゃない。改めてこのエクストラモードの感覚は限りなく『リアルハードモード』と同等だと感じ取れた。
そして注意書きにあった一文。『特殊条件下ではあるが、基本として現実世界での動き、身体能力に準ずる。』この一文がとても重要だ。
『剣聖物語』で剣聖と呼ばれた所以をゴーレム。お前に味あわせてやる。再び剣を構える。今度は逆の左手に持ち換え前面へ突き出す形で構え、右手は腰辺りでカウンター準備のために拳を構える。
「月光真流一の型『白月』」
素直に攻撃して倒せないなら、普通じゃない攻撃を叩き込むだけだ。『剣聖物語』で出来たことが新作の『プラネットクロニクル』で出来なくなるなんてことは無いだろう。ないよね?
そんな僅かな不安もあったが、ゴーレムはお構いなしに腕を回しながら突っ込んできた。パターンは変わらず、動き、空気を切る衝撃の流れも含めて全部"視る"。
神経を研ぎ澄ませばゴーレムのあらゆるものが”視えて”くる。確かトップアスリートとかは超感覚的なやつで動きがゆっくり見えるとか聞いたことがある。今の感覚はそれに近いんだろうか?
目の前まで迫り来る腕は二つでも俺を襲う腕は片方しかない。ならその腕に対して俺がするのは単純だ。真正面から受け止めるだけだ。
腕の回転方向に合わせろ。
振りかぶった剣柄が腕を受け止めるためのポイントを捉え、迎え撃て。
肉迫したゴーレムの腕と俺の剣柄が真正面から当たる瞬間に合わせて剣を振るう。
『・・・・・・・!?!??!』
剣柄と巨大な力を得ていた腕が衝突した瞬間、洞窟内に鈍重な音が大きく鳴り響いた。正確には無音が鳴り響いたという感じだろうか?
俺とゴーレムが交差し打ち合った箇所。ゴーレムの手の甲と剣柄が衝突した際に、聞こえるはずの粉砕音や生物を砕く生々しい音は聞こえなかった。代わりに鳴り響いたのは風の音のみ。風の発生源には俺とゴーレム。
今まさに互いの一撃がぶつかり合ったはずなのに、お互い何事もなかったかのように平然と、ただ立っていた。
ゴーレムも何が起こったかわからないのだろう。表情は分からないが間違いなく混乱しているだろうな。だって”振り回していた上半身が何事もなかったようにピタッと止まった”んだから。
ゴーレムは未だ思考が停止してるようで動けない、いや、動かない。意外といいAI積んでるじゃないか? そんな中、そっと添えるようにとまったゴーレムの胸板へ手の平を当てる。しっかりぶち抜いてやるよ。
「月光真流奥義『水無月写鏡』!」
再び風が吹く。今度は岩が砕け散る音が一緒に聞こえる。先ほど響くはずだった粉砕音が今度こそ鳴り響く、ただその音源は砕けていくゴーレムの硬い胸。
『・・・・・・・・!!?!!?!?』
ポッカリ空いた穴から亀裂が全身へと走る。ようやく思考が戻ってきたのかゴーレムは俺から距離を取ろうとして後ろへ脚を進めたがもう遅い。
脚が地面から地面へと動いた瞬間、叩き込んだ衝撃が一気に爆裂する。打ち込んだ衝撃は全身へと走りぬけ、ゴーレムを跡形もなくバラバラに砕く。
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クリスタルゴーレム』を撃破しました。
武器:篭手『光結晶の篭手』を入手しました。
『AS:カウンター』を習得しました。
『AS:見切り』を習得しました。
『AS:ジャイアントキリング』を習得しました。
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「よし成功! 問題なく使えそうだな」
月光真流は無事に使えた。それにしても一撃で倒せるとは思わなかった。ゲーム世界は共有してるからHPを0にしないと駄目だと思っていたんだが、関係なく一撃で倒せてしまった。
そう言う奥義だから不思議ではないのだが、他の一般プレイヤーでもこの程度は出来てしまうと言う暗示なのだろうか? まぁ今考えても仕方ないか。
そう言えば、倒したときに出たリザルト画面には経験値とか入手金とか出なかった。もしかしてレベル上げって特殊な方法じゃないとだめなのか? ちょっと確認してみよう。ヘルプヘルプっと、あったあった。
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『ジョブを入手していない状態での戦闘では経験値・SPはジョブ取得後まで蓄積されジョブ習得後にレベルアップした際に蓄積された分を入手することができます』
『レベルアップは1度の戦闘に1しか上がりません』
『エクストラダンジョン『星の祭壇へ続く洞窟』ではDを入手できません』
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なるほど金はこのダンジョンでは入手できなくて、俺がまだ無職だからレベルは上がらず経験値は蓄積されるわけか。けどスキル習得や武器なんかの装備品はゲット出来るのか。なら今はそっちの方に期待しながら進んでいこうか。
とりあえず新しいスキルも手に入れたし武器まで手に入った。これでさっきより戦えるだろ。取り敢えずスキルと武器の確認しとくとしよう。
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武器:篭手『光結晶の篭手』
効果:攻撃力+100 防御力-20 素早さ+10
・クリスタルゴーレムが身に着けていた篭手。リーチは短いが強い攻撃力をもつ
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カウンター:攻撃回避直後の攻撃力が上昇する
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見切り:攻撃を回避すると一定時間素早さが上昇する。
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ジャイアントキリング:自分よりレベルの高い相手と戦闘を行う際すべてのステータスが上昇する。
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大当たり。特に武器としての籠手装備は俺にとってはありがたい。特に月光真流が使えるとわかった今、二本目の剣以上に俺が欲しかったのは何よりも篭手装備。
すぐに装備を切り替える。といってもエクストラモードではそういった画面は使えないので入手した武器を腰にあるポーチから取りだす。
アイテムポーチは腰に着けていて、持てる数には限りはあるんだろうが、質量的な問題は無いようだ。早速取り出して身に着けていく。
篭手のつけ方は問題ない。剣聖物語でも嫌ってほど着けたり外したりしてたからな。それともう多分使わない、というか使っても壊されるのがオチの木製の盾も外す。
装備した篭手の感覚を掴むために軽く腕を振ってみる。見た目に反し重さは大したことないので動きを阻害することもなさそうだ。
というか下手をすると剣よりも軽い。そういえば剣はこの状態でも持つことが出来るのだろうか?物は試しと剣を取り出して手に持ってみる。
問題なさそうだ。特にエラー表示や光結晶の篭手が消えることもなかったのでこれで武器二つ持ちは可能なことがわかったし。この調子でいこ・・・・
『・・・・・・!!』
・・・・・・・・・・・・・・・・・いや気配なく上から強襲とかずるくない? 油断してた俺も悪いけどさ? 突如襲われ体に伝わるとんでもない威力の激痛が俺の意識を奪っていい・・・・・・???
いや生きてるぞこれ!! 頭すごく痛いし悶絶したけど所詮その程度だ。見た目はヤバイが、一応初心者仕様になっているなら問題ない。すぐに思考を切り替えて転がりながら距離を取る。
周囲の確認と敵の数をすぐに把握する。上にはもういない。ゴーレムらしき気配も感じない。なら倒すべきは俺を殴った一体だけだ。
おそらく目の前のゴーレムの索敵範囲に気づかないうちに入っており奇襲を受けた形になったんだろう。範囲広すぎだろ。
「ち・・・・気を抜いてた。オラゴーレムテメェ正面からかかってこいや!!」
状況がわかればこっちのもんだ、二度目はない。拳骨の礼だ、さっきよりも手早く片付けてやる。
『・・・・・!!』
挑発が効いたのかゴーレムはこちらに向かって走ってくる。さっきのやつよりも少し速い。腕を振り回さず、構えながら突っ込んで来た。
「五代目剣聖アール。推して参る。なんてな?」




