91:超越天匠流剣術
抜刀術と剣術すっ飛ばしていきなり超越天匠流です。
でも基礎の動きはだいぶモノに出来ていたと判断したアールです。同時に別の考えも・・・
読者の皆さんにルークが人気出過ぎててびっくりしました・・・・・
「この奥義は鏡雀の基本でもある抜刀と、剣を振るう道がしっかりと出来ていないと出来ない技だ。見た目だけは真似できるが、本質は簡単じゃない」
「どうすればいいの?」
「この奥義は”後の先”を取る奥義でもあるんだ。つまりカウンターも出来る奥義だな」
「か・・・カウンター!?」
「相手にワザと先手を譲る。そして接近してきた相手がこちらを捉えるか、もしくは捉えた後に切り裂く奥義だ。言うなら肉を切らせて骨を断つ剣だ」
「ちょ・・・ちょっと待って!?師匠の剣って先手必殺じゃなかったの!?」
基本はそうだ。相手に何かをさせる前に決めるのが俺の”抜刀術”だ。そして普通の天匠流でもある。だが、俺の”剣術”だけは違う。
「俺の、ひいては”天匠流抜刀術”は確かに先手必殺だ。でも”天匠流剣術”は違う。戦いでは必ず先手を取れるわけじゃない。だから後手の技も必要だ。そして後手の場合は既に抜刀した状態になる。その為の剣術だ」
「えっと・・・・つまり先に決めるのが抜刀術で、あとで決めるのが剣術?」
「そういうこと」
流石弟子。理解が早い。
「そしてこの『神斬雲雀』はその剣術の中でも一番カウンターに向いた技だ。応用も利くし、切り返しも早い。ちゃんと使えればどんな態勢からだろうとも放つことができる。超越天匠流で最初に覚えてもらうには最適な剣術だ。他に質問は?」
「ううん。その技覚えて僕が忍者を倒せばいいんだね。バカ師匠早速教えて!」
やる気があって結構。なくてもやる気が起きるまでやらせるつもりでいた。自分からやる気を出してもらえて俺は嬉しい。
「リークはどうする?一緒にやるなら教えるぞ?」
「そうだね・・・・アールは何をしたらいいと思う?」
「基礎修行だな。体力つけるのと、剣筋の磨き上げ、あとなれない動きに慣れること。最近から始めた俺の抜刀を含めて一つにつき500回ワンセット。これを10セットを超えるのを目標にやるのが一番だな」
「わかった。ならそうする。技に入るタイミングはアールの判断でお願い」
リークも自分でわかっているみたいだ。このままではルークには及ばないと。故に自分を鍛えることに意見はないようだ。
「わかった。なら始めてくれ。ルーク、今から動きを教えるから一つずつ確認していけ。始めるぞ」
こうして始まった三日間ぶっ続けのリーク強化とルークへの技の伝授。どこまでルークは成長するか、リークはどうなるか。楽しみだ。
一日目。
リークはひたすら基礎練習。ルークは技の動きを覚えること。
未だ慣れない動きに戸惑い、疲労しながらも必死に修行をこなしていくリーク。額には汗がにじみ、息も上がり始めるが、決して止めずに、我武者羅に剣を振るい続けた。
ルークも同様に、普段とは違う動きに戸惑いながらも、少しずつ自分のものにしようと何度も剣を振り続けた。
この日リークは11セット。ルークは合計回数279回『神斬雲雀』の練習を行った。就寝したのはこちらの時間で午前1時だった。
二日目。
一日の疲れは完全には取れていないものの、動ける分には問題ないようだ。軽い朝食を済ませ、修行を再開する。
リークの動きは昨日に比べかなり上達し、動き一つ一つが見違えていた。更に速度も少しずつ上がってきていて、このペースで行けば夕方からは技の練習に入っても通用するだろう。
飲み込みの速度がやはり速い。
対するルーク。体はバッチリ昨日の動きを覚え込んでおり、早くも形ができてきた。なので次の段階としてギルファー協力のもと、より実戦に近い形での修行に移った。
ギルファーは自身の能力で分身を生み出せる。その分身を高速で行動させてルークへと迫らせる。
ルークはこの分身を10回以上神斬雲雀で切り裂けなければ今日の夕飯後のデザートはなしである。
目的は速さに慣れることと、”視える”ようになること。ギルファーには殺さない程度ならたまに小突いてもいいと話をしてある。
ルーク自身もデザートがかかっている事と、ギルファーに攻撃できることが重なり、かなりやる気である。
昼食をはさんで、午後の練習。ある程度動けるようになってきたリークへ神斬雲雀の伝授に入った。元々盗賊職にも手を出していたこともあり、見た目だけなら、なかなかいい動きである。でも剣筋はぶれているし、動きもまだまだ発展途上だ。この程度で満足してもらっては困る。
少し厳しめに見ていたが、『アールの真剣な顔見るの久しぶりかも』なんて茶化してきたので、容赦なくしばく勢いで技を叩き込んだ。ちょっと泣きそうになっていた顔はなかなかレアだった。スクショはもちろん撮った。
ルークだが、簡単にはいかない。まぐれ当たりで一撃当たったけど、それがギルファーのやる気に火をつけたようで、動きがそれから目に見えて変わった。その為ルークはその後一撃も入れることができず、夕食後のデザートはギルファーが見せつけるように腹に入れていた。
見ていたルークは親の敵でも見るようにギルファーを睨みつけており眼には若干の涙が見えた。夕食後の訓練では一段と気合が入っていた。そして少しずつギルファーの動きにあわせて動き、”視える”ようになりはじめてきた。
三日目。最初に決めた修行期間の最終日。
俺が起きると既にルークは目を覚ましており、四人分の朝食を用意していた。現在時刻は7時頃である。
「おはようルーク」
「おはようバカ師匠。ご飯ってこれでいいんだよね?」
高校時代のキャンプ旅行で培った技術と『剣聖物語』での野宿経験を活かして作った浜辺の料理台では三枚おろしにした魚をルークが焦げないように焼いていた。
朝はいつも釣りをして魚をとっていたからこの魚はルークが獲ってきた獲物だろう。
そして大きめの飯盒は火にかけたばかりのようでまだ動きはない。
「三日で随分慣れたな」
「毎食作ってくれたから、見てたもん。魚はこうでいいのかわかんなかったけど・・・」
確かに少し骨に身が多めについているが、初めてにしては上出来だ。それに身は付いているが身崩れはしていない。上手に切れた証拠である。
現実だとこういうことは危ないから子供にはやらせないが、ゲームだからこそ、こんな貴重な経験もさせられる。味覚と自然環境の再現度が高いからこそなせる技である。
「随分上手に捌けたな。見よう見まねにしては」
「いや、実はさばいてる時によくわかんない人たちが来て教えてくれたの。サバイバル中なんだってさ、その中に鼻息荒げてて少し気持ち悪い人もいたけど」
それ・・・大丈夫だったのか?いや、今こうして無事でいるのが平気だった証拠だけど。そいつショタコンなのか?
「ルーク、変なことされなかったか?」
「・・・・手を触られるくらいは別に気にしない。でも『弟にならないか?』とか言われたのはちょっと怖かった。他の人がそれ聞いてしばいてたけど・・・」
ギルティ。今度見つけたら三枚に捌いてやる。
「悪いけど骨も焼いてくれるか?」
「バカ師匠骨も食べるの?」
「しっかり焼けば煎餅みたいでうまいぞ?」
『ふーん』と言いながら骨も炙り始めるルーク。身から落ちる脂がパチパチと火花を飛ばし、優しい音が鳴る焚き火と、いい感じに脂が落ちて、いい匂いがしてきた釣りたての魚。今朝の飯もうまそうだ。
熱そうにしながらもしっかりと調理をこなしていくルーク。とても楽しそうだ。
「楽しそうで良かったよ」
「まぁ・・・・普通こんなことしないし・・・アホ犬のせいでケーキ食べ損ねたけど・・・」
「それはお前の実力不足だな。いつか仕返ししてやれるようにちゃんと鍛えろよ?」
「・・・・・・鍛えてくれるんだよね?」
少し考えながらも口に出したルーク。そんなこと改めて聞くことじゃない
「弟子だからな。お前が俺から離れない限りは一人前になるまでちゃんと鍛えてやるよ」
「・・・・うん」
口元を緩ませて笑みを浮かべるルーク。でもハッとすると顔をブンブンと振るわせて何の気なしみたいな表情を作った。でもまたにやけてるぞ?
丁度飯盒からいい匂いがしてきて、その匂いにつられて目が覚めたのか、隣で寝ていたリークがもぞもぞしながら起き上がる。
「ふわぁ・・・おはよう二人共」
「おはようリーク」
「リーク姉ちゃんおはよう・・・・あ、バカ師匠僕味噌汁作ってみたい」
「いいな味噌汁。味噌は買い込んであるから問題ないとして・・・・具はカニでも狩ってくるか」
確かに日本人として味噌汁は欠かせない。カニの甲羅さえあれば鍋の代わりにはなるし身からも良い出汁が出そうだ。ヤドカリの旨いのは実食済みだしいいかもしれない。
なんだかんだ言いつつ今日までは買い込んだ食材と釣った魚で食事を作っていたし、モンスターを狩って食べるのもいいかもしれない。狩りで修行にもなるし
「なら朝一の狩りだな。リークはルークと一緒に待っててくれ」
「むふふ・・!!!」
いざカニ狩りとシャレこもうとしたとき、ルークが意味ありげにニヤニヤし始めた。まさか既にヤドカリを狩ってきたのか?
『アール。小僧にどうしたのか聞いてやれ』
「お前起きてたの?」
ずっと寝てると思っていたギルファーが声を上げた。何やら知っているようだ。言いたくてウズウズし始めたので機嫌が悪くならないうちに聞いてやろう。
「どうしたルーク?ヤドカリは既に倒してきたのか?」
「実はね・・・・じゃーん!!!」
「「おぉっ!?」」
アイテムポーチから取り出したのは”巨大な蟹の腕”だった。それも”紫”それが意味することは・・・・・・
「お前・・・まさか倒したのかっ!?」
ガンドロックキャンサーの突然変異種。より攻撃的になり戦いにくくなっている新レイドモンスター『ブレイドキャンサー』。奴の体は紫色である。そして腕を皮切りにルークが出したのは甲羅と爪、どちらも紫色だ。
『お前が起きる一時間前くらいだな。起こされてそのままついていったが、小僧が一人で相手をしていた。途中で見知らぬ奴らが参戦してきたが、我の見立てではあのまま続ければ一人でも何とかなったのではないか?』
「ニシシ!!どうだ!」
お前・・・それは・・・・・・・っ!!!
「アール・・・・」
いかん。気持ちが抑えられない。どうして・・・・・どうして・・・!!!
「どうして起こしてくれないんだよルーク!!」
「っ!?!」
俺の声にびくつくルーク。バカ野郎・・・・・!!!
「ちきしょうっ!!お前の活躍生で見たかった・・・!!!!」
「え?そっち?」
「当然だろリーク!?ルークの初めてのソロ戦だぞ!?見たかったに決まってるっ!!!」
しかも相手はブレイドキャンサー。この辺で出る中では間違いなく最強だ。そんな奴相手にソロで挑んで戦ったんだぞ・・!!!見たいに決まっている!!
「えっと・・・一人で勝手するなとか怒るんじゃないの普通?」
確かにリークの言うことは尤もだ。負ければ町に戻されるし、ソロだと助けることもできない。悪質なプレイヤーがいたら守ることもできない。実際捌き方を教えてくれたやつの中にも危険人物はいたようだし、参戦した奴らもいい人とは言い切れないかもしれない。
でも・・・
「俺の弟子だぞ?慢心しなければそう簡単には負けんだろ。それに俺らが起きる前に起きて朝飯調達の為に出かけたんだ。寧ろ褒めてやるところだよ」
それにギルファーは起こして連れて行ったんだ。ギルファーがいるなら万が一はないはずだ。それに可愛い子には旅をさせろとはよく言ったものだ。ただやっぱり戦う姿を見たかった。
「し・・・バカ師匠・・・・」
「こういう時はバカって言うなよルーク。よくやった。もうかなりの実力者だな」
「っ!!!うん!!」
こうして、ルーク初めての狩り兼朝食作りにて作られた豪勢な朝食を済ませ、最終日の修行を開始した。
結果は、言うまでもない。
わずか三日、されど三日。見違えるようにルークは強くなった。レベルじゃない、ルークとしての実力が。
裏であった出来事。ルークまさかのブレイドキャンサー単騎撃破達成。尚時間は相当かかった模様。
要望多ければ番外編的な形で投稿も考えます。
感想お待ちしています。




