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王都での初任務③

 ゴブリン達の討伐が終わり、アディル達アマテラスはゴブリン達の討伐の証である左耳を切り取る。切り取った後、ゴブリン達の死体を一つの所にまとめると式神達に穴を掘らせるとそこにゴブリン達を埋めることにする。

 これは弔いというよりもそのまま放置しておくと伝染病を予防するという意味合いが強い。


「さて、これで任務は達成だな」

「うん」


 アディルの言葉にヴェルが即答すると他の三人も頷く。周囲にゴブリンなどの魔物の気配もないためアディル達は武器を納める。


「それじゃあ、王都に帰ろう。ジルドさんに妙な奴等がちょっかい出さないとも限らないしな」

「そうね。流石にこの距離だと式神の思念は届かないからな」

「あ、やっぱりそうなんだ。アディルが駄目なら私のも駄目ね」

「まぁ流石にこの距離はな……」


 エリスの言葉にアディルは答える。父アドスであればもしかしたら可能かも知れないが自分では不可能な距離なのだ。


「それじゃあ、転移魔術で帰る?」


 アリスの提案であったがアディル達全員が首を横に振る。それを見てアリスは別段気を悪くした様子もなくにっこりと笑って頷いた。

 アディル達が転移魔術で戻らなかった理由は転移魔術は高等魔術であり、おいそれと使う事で色々厄介事を引き起こす可能性があったからだ。また、知られることで転移魔術を使う事を逆手にとられて待ち伏せなどに逆手に取られる危険性があるためである。


「よし、それじゃあエスティルよろしく♪」

「まかせて」


 ヴェルがエスティルに馬車の作成を頼むとアディルも馬を用意する。わずか一~二分で馬車が出来上がった。いつものように御者台にアディルが座るとその隣にはヴェルが座った。最近はアディルの隣の御者台に座るのはローテーションとなっており今回はヴェルというわけだったのだ。


 ガタゴト……。


 全員が乗ったことを確認するとアディルは馬車を出発させる。アディルの式神である馬は特段手綱を操る必要もなく思念を飛ばすだけで動き出すのだ。


「ねぇ、エリス。ウサギ出してよ」

「任せて♪」


 アリスがエリスに頼むとエリスは快諾し、すぐさま式神でウサギを四羽生み出した。


「きゃぁぁぁ♪」

「これよ私の求めてたのは♪」

「はい、ヴェル♪」

「わぁ、ありがとう♪」


 御者席の後ろから女性陣の嬉しそうな声が聞こえてくる。しかも隣に座るヴェルにもウサギが手渡されヴェルもウサギを抱きしめると本当に幸せそうな表情を浮かべている。その表情の可愛らしさにアディルの胸は高鳴ったのだがアディルは平静を装う。


「きゃ~幸せ♪」


 次いでエスティルの幸せそうな声に振り返るとエスティルもウサギを抱きしめ幸せそうに笑っている。


「えへへ♪」

「は~幸せ♪」


 そしてアリスとエリスの幸せそうな表情が目に入る。幸せそうな仲間達の表情にアディルは胸の高鳴りは収まることなく頬に少しずつ赤みが差していくのを感じた。


(俺……どうしたんだ? みんなを見て顔が熱くなるぞ。動悸も高まってるし……)


 最近、アディルは四人の姿を見て胸が高鳴るという事が多々あるようになっていた。戦闘モードや仕事モードの時などはそのような事はないのだが、現在のように戦闘モードなどが切れたときにはそのような状況になってしまうのだ。


 ガタゴト……。


 馬車は女性陣の幸せそうな声が響き渡りながら進んでいった。程なく森の出口が見えるとそのままガルアング森林地帯をアディル達は後にする。そこからしばらく進んで森が小さくなり始めた頃にエスティルが声を上げる。


「みんな、あの馬車おかしいわよ」


 エスティルの言葉に全員の視線が後ろの馬車に向かう。その馬車は商人が商品を運ぶために使うような一般的な幌馬車で何かから逃げるように猛スピードで走っていた。


「魔物に襲われてる!!」


 次いでアリスが叫ぶとアディル達の間に引き締まった空気が流れる。猛スピードで走る馬車の後ろから魔物が追って来ているのが目に入った。


「みんな助けるぞ」

「「「「うん」」」」


 アディルの言葉に全員が即答するとアディルは馬車を道の横にずらす。猛スピードで走る馬車である以上ぶつかってしまっては元も子もないのだ。もちろんアディル達に損害は皆無であると言って良い。だが追突する馬車はそうはいかないだろう。

 アディル達が横に避けた事で追われていた馬車は猛スピードで追い越していく。追い越す際に御者台に座っていた男がアディル達に向けて叫ぶ。


「逃げろ!! ゴブリン達の大群だ!!」


 男の声にアディル達は頷くが当然ながら逃げ出すような事はしない。ゴブリンの数は約六十体程で十体程のゴブリンは馬の半分ほどの大きさである狼に似た魔獣に乗り追ってきている。


 新たに現れたアディル達を獲物と見定めたゴブリン達は獰猛な雄叫びを上げて突っ込んできた。だが、当然ながらアディル達は獲物でも何でもなく逆にゴブリン達を殲滅するつもりなのだ。

 ヴェルがまず魔矢(マジックアロー)で魔獣を狙う。この攻撃に魔獣達は驚くと乗っていたゴブリン達が振り落とされた。反撃を想定していなかったのか振り落とされたゴブリン達はろくに受け身もとることは出来ず苦痛に呻いている。


「てぃ!!」


 次にアリスが一声上げると剣を抜いて襲いかかるゴブリンに斬りかかった。アリスの剣の一閃によりゴブリンの首がゴトリと落ちる。続いてエスティルもゴブリンに斬りかかるとゴブリンの首が宙を舞った。


「ヴェル、エリスいくぞ!!」

「「うん!!」」


 アディルが一声掛けるとヴェルとエリスは即座に返答する。すでにアディル達の馬車は停まっており、アディル、ヴェル、エリスの順に馬車から飛び降りた。


 すでにアリスとエスティルにより騎乗したゴブリン達は全員斃されている。魔獣達は騎手であるゴブリンが討たれた事ですでに逃走を開始している。そこにヴェルは容赦なく魔矢(マジックアロー)を放ち逃げた魔獣のうち四頭を斃す事に成功する。


「ヴェル、次はあいつらだ」

「うん」


 アディルがそういうと前に進み出て、ヴェル、エリスと続く。


「アリス、エスティル、やるぞ!!」

「「了解♪」」


 アディルの言葉にエスティルとアリスは頷くとアディルの両隣に立った。そこにゴブリン達が武器を構えながら向かってきている。


 アディルは手にした天尽(あまつき)の鋒をゴブリン達に向けた。 


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