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竜姫②

 村に入ったアマテラスはそのまま馬車に乗ったまま村の道を行く。村には家が約三十ほどあった。どの家もそれなりに年季が入った家であるがそれほど痛んだ様子もない。

 村の人々はアディル達をチラチラと見てはヒソヒソと話をしている。


「何だろうな。何か居心地が悪い」

「そうね。まぁ置かれた状況を考えれば当然の反応かもね」


 ヴェル達も居心地の悪さを感じているのだろう。その声には不愉快な感情が含まれている。吸血鬼ヴァンパイアに村を滅ぼされるという予告を受ければ不安そうにするのも当然の事である。


 アディル達はそのまま宿屋を見つけると一泊する事にした。その宿屋は初老の夫婦がやっているという小さな宿屋であり、案内された部屋にはベッドが二つある。エイサンでの宿屋でのようにベッドをくっつけ四人で休むことになった。

 とりあえず寝床を確保できたので四人は今後の方針を話し合う事になった。まずはやはりというかアディルが吸血鬼との戦闘を望むような発言を行った。

 

吸血鬼ヴァンパイアか……やっぱり強いのかな?」

「アディルの気持ちは分かるけど、正式(・・)に依頼されない限りは吸血鬼と戦うのはなしね」

「わかった」


 アディルの言葉にエリスは即座に否定の立場をとる。ところがアディルは自分の希望があっさりと却下されたというのに即座に了承する。


「本当に分かってる?」

「うん、もちろんだ」


 エリスはアディルがあっさりと了承したために念押しする意味でもう一度尋ねるが、アディルはやはり即座に了承の意を示した。

 エリスは吸血鬼と戦うのを禁止したのではなく、依頼がない状況で戦うことを否定したのだ。言い換えれば正式な依頼があれば吸血鬼と戦う事も辞さないということなのだ。そのことをアディルは察したからこそ即座に了承したのである。


「何だかんだ言ってもエリスもアディルには甘いわね」

「ちょ、何よそれ!?」


 当然アディルだけでなくヴェルとエスティルもエリスの言いたいことを察しているのだ。ヴェルの声にはニヤニヤという感情がふんだんに盛り込まれている。それを察したエリスは明らかに狼狽える。エスティルもエリスにニヤニヤとした視線を送っている。


「何よエスティル、その生暖かい目は!!」

「べっつに~~♪」

「気のせいじゃないの~~♪」

「もう!! ヴェルもエスティルも知らない!!」


 エリスが頬を膨らませてプイと横を向いたのでヴェルとエスティルは笑いながらエリスに抱きついた。突然抱きつかれた事によりエリスは驚いた顔を浮かべた。


「ちょ、二人とも止めてよ!!私は怒ってるんだからね!!」

「えへへ~エリスはカワイイな~~♪」

「そうそう♪」


 エリスの抗議をサラリと受け流したヴェルとエスティルはエリスに抱きつくとエリスに頬ずりを始めている。


「ちょっと~!!」

「良いではないか~良いではないか~♪」

「うへへへへへ♪ カワイイ♪」


 アディルの眼前で三人のじゃれ合いが始まりアディルは苦笑しながら見ている。アディルも健全な男である以上、美少女達のじゃれ合いというものが眼福ものであるのは間違いないのだ。

 

「「うりゃ~♪」」

「ちょっと!! きゃあ~」


 ヴェルとエスティルがエリスをベッドに押し倒すとそのまま三人はベッドに倒れ込んだ。すると三人のスカートがめくれてしまい三人の下着がアディルの視界に飛び込んできた。


「白、白、黒……」


 アディルはついポツリと色を呟いてしまう。すると三人はアディルの呟いた色が何を示しているかを即座に察してじゃれ合いをストップさせガバッと起き上がると顔を真っ赤にしてスカートを押さえた。


「もう!! アディルのエッチ!!」

「見たのは仕方ないけどなんで言うのよ!!」

「そうよ!! 普通言わないわよ!!」


 三人の猛然とした抗議にアディルは自分の迂闊さに自分を自分で殴りつけたくなってしまう。


(ま、まずい……声に出てた)


 アディルが何とか三人を宥めようと口を開きかけた時にドアをノックする音が聞こえ、四人は顔を見合わせる。


「みんな、その話は後でな」


 妙に安堵したアディルの声である。三人にしてみれば納得いかないのだが、自分達に用があるモノが来たのは間違いない以上、抗議は後にするべきであった。


「は~い」


 ヴェルが立ち上がりドアに向かって歩き始めようとするのをアディルが手で制するとアディルが立ち上がりドアに向かう。その際にチラリと全員に目を移すと全員が頷くとそれぞれ武器を手に取る。流石に抜剣をするわけではないがいつでも対処できるようにしていたのだ。

 アディルがドアを開けるとそこには宿の主人が申し訳なさそうに立っている。


「お休みのとこ済みませんな。村長が話があるという事らしいんで下まで降りてきてくだされんか?」

「わかりました。すぐ行きます」


 アディルがそう返答すると主人は安心したような表情を浮かべた。吸血鬼ヴァンパイアに脅迫されている村の村長がハンターにわざわざ会いに来るとなれば内容は十分に察する事が出来るというものだ。となればアディル達に村長との話を聞かないという選択肢は存在しないのだ。


「はい、アディル」


 ヴェルがアディルを呼ぶとそのままカタナを手渡す。手渡されたカタナをアディルは腰に刺すと歩き出し、その後ろにヴェル、エリス、エスティルの順番でアディルに続いた。

 そのまま階下に降りるとそこには五十手前の白髪の男性と二十代前半の男性が椅子に座っている。年齢的に白髪の男性が村長であろう。


「お呼びだてしてすみませんな。私はこのジルグ村の村長である。ベン=ダッドです。こっちは儂の息子のジルです」

「ジルです。よろしく」


 村長のベンと息子のジルは丁寧な挨拶を行う。このような礼儀作法に則った丁寧な挨拶をされればアディル達もきちんと対応するというものである。


「ハンターチーム“アマテラス”のアディルと言います」

「私はヴェルです」

「エリスといいます」

「私はエスティルといいます」


 アディル達はニッコリと笑って名乗ると頭を下げる。アディルはともかくヴェル達のような美少女達にニッコリと微笑まれれば男ならば誰でも目尻が下がるというものだ。


「とりあえず座ってくれ」

「はい」


 ベンにテーブルに着くことを求められたのでアディル達は素直にベン達の前に座った。四人が座った段階でんは頭を下げる。しばらくして頭を上げるとアディル達四人に向けて言う。


「単刀直入に言う。吸血鬼ヴァンパイアの討伐をお願いしたい!!」

「良いですよ」

「もちろん、二の足を……今何と?」

「ですから良いですよと」


 アディルのあっさりとした返答にベンとジルは呆けた表情を浮かべていた。



 誰がどの色かはご想像にお任せいたします。

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