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三つ巴戦⑦

 アディル達の手により黒衣の剣士、闇の竜人(イベルドラグール)は次々と討ち取られていた。


 黒衣の剣士は残り三体、闇の竜人(イベルドラグール)の残りは十三体といった所である。


(まずはこいつらからだな)


 アディルは黒衣の剣士達を殲滅させる事を決定する。闇の竜人(イベルドラグール)の方が数は多いのだが、エスティル、アリス、ベアトリスの傀儡である黒の貴婦人(エルメト)が前衛、ヴェルが薙刀で支援、そしてエリスがもしもの時のために治癒で控えるというやや戦力過多な状況のために心配はいらないと判断したのだ。


(俺はあいつをやるか……)


 アディルが敵と見定めた相手は無傷の黒衣の剣士である。アンジェリナの火炎奔流(フレイムトォーレント)の直撃を避けた黒衣の剣士だ。

 闇の竜人(イベルドラグール)の死体が足元に転がっている事から他の黒衣の剣士よりも戦闘力としては上と言えるのかも知れない。


「シュレイ、アンジェリナはそっちの二体を頼む」

「アディルはそいつか?」

「ああ、こいつはおれがもらう」

「いいのか? そいつは一番強そうだぞ」

「ああ、こいつぐらいないと張り合いがないだろ」


 アディルとシュレイの言葉に黒衣の剣士達から怒気が発せられた。アディルとシュレイの会話を聞いて不快にならないはずはない。もちろん、アディルとシュレイの会話が挑発であるのは黒衣の剣士達も理解しているのだが、不快になるかならないかは別問題である。


「舐めるなよ。小僧共……」


 アディルが狙いを定めた黒衣の剣士が低い声でアディル達に凄んできた。


「いや、そんなに凄まれてもな」

「まぁ、最初からここまで良いとこ無しだもんな」

「掌の上で転がされてたんだから舐められてもしょうが無いでしょ」

「本来共闘することも可能だった闇の竜人(イベルドラグール)の連中と殺し合って、実は俺達の仲間なんじゃないかと思ったぐらいだ」


 アディルが肩をすくめながら言うとシュレイとアンジェリナがすかさず乗っかってきた。この辺りの連携はアディル達“アマテラス”の得意技と言えるかも知れない。


 黒衣の剣士が剣を構えた瞬間にアンジェリナが魔矢(マジックアロー)をいきなり放った。アンジェリナは会話で黒衣の剣士を挑発しながら術式を展開しており、黒衣の剣士の意識が攻撃に移った瞬間に放ったのだ。


 放った魔矢(マジックアロー)は約二十本、アディルが狙いを定めた者に対しては、五本ほど、残りの十五本はシュレイとアンジェリナの相手の黒衣の剣士二体に放たれたのだ。


 二体の黒衣の剣士は自らに放たれた魔矢(マジックアロー)を容易に弾き落とした。もちろん、アンジェリナが魔矢(マジックアロー)を放ったのは攻撃ではなく牽制のためであり、もっと言えばシュレイが黒衣の剣士との戦いで有利に事を進めるために放ったのだ。

 ちなみにアディルの方に放ったのはオマケである。


 シュレイはアンジェリナの支援を得て、黒衣の剣士の間合いに踏み込むとそのまま上段から剣を黒衣の剣士に一気に振り下ろした。当然先程の黒衣の剣士に放った斬撃同様に剣に魔力を込め強化し、全身の力を使って振り下ろす。


 キィィィィィン!!


 上段から振り下ろしたシュレイの豪剣を黒衣の剣士は受け止める事に成功した。だが、全身の力を使っての斬撃であり黒衣の剣士はシュレイの剣をはじき返すことが出来ないでいた。

 シュレイと黒衣の剣士の剣がギリギリとせめぎ合い、両者の間に力場が発生したかのような印象を周囲の門のは持ったように見える。


 もう一体の黒衣の剣士が助けに入ろうとしたが、そこにアンジェリナの魔矢(マジックアロー)火矢(ファイヤーアロー)が間断なく放たれ、近付くことが出来ないでいる。


 キン……


 そして、ついにシュレイの剣が黒衣の剣士の剣を断ちきるとそのままシュレイの剣は黒衣の剣士の左肩から入り一太刀で心臓をまで達したのである。


「ば、ばか……な」


 心臓を両断された黒衣の剣士はそのまま倒れ込んだ。


 残り一体の黒衣の剣士にシュレイが視線を向けると黒衣の剣士の顔が凍った。シュレイとアンジェリナの二人の連携を制して勝利を収めるのは至難の業であるのは確実であったからだ。


「くそがぁぁぁぁぁ!!」


 黒衣の剣士は破れかぶれに突っ込んでくる。それは完全な特攻であり、もはや闘技者のものではない。そこまで追い詰められればもはやシュレイとアンジェリナの敵ではなかった。


 アンジェリナの魔矢(マジックアロー)がただ一本放たれ、その矢が黒衣の剣士の内膝に直撃したのだ。


「が!!」


 いつもの黒衣の剣士の実力であれば容易に躱すことが出来たであろうが、現在の彼は冷静さを失っていたのが完全に裏目に出てしまったのだ。

 内膝に衝撃を受けた黒衣の剣士はぐらりと体を揺らした。転倒しなかったのは黒衣の剣士の実力の高さ故と言えるかも知れないが、内膝に受けた一撃に意識を持っていかれてしまいシュレイから意識を外したのは詰みの案件でしかない。

 シュレイはアンジェリナが生じさせた隙を見逃すことなく上段から一気に振り下ろす、シュレイの剣が黒衣の剣士の頭部を両断すると黒衣の剣士は力を失いそのまま倒れ込んだ。


「おのれぇぇぇぇ!!」


 仲間が全滅したところで最後に残った黒衣の剣士がアディルに斬りかかってきた。


(こんどはこっちを試してみるか……)


 アディルは天尽(あまつき)を逆手に持つとそのまま振るう。鋒が地面に触れそのまま斬り上げたのだ。


(バカが!! 間合い外だ!!)


 黒衣の剣士はアディルの逆手斬りが間合いの外で行われた事に対して勝利を確信する。黒衣の剣士はがら空きになったアディルの右脇腹を一閃しアディルを斬り伏せるつもりであった。


 だが……。


 ガクンと黒衣の剣士の視界が下に落ちるとそのまま地面に突っ伏した。


(な、なんだ? )


 黒衣の剣士が混乱していると耳元でドシャと何かが倒れ込む音を耳が拾った。黒衣の剣士がそちらの方を見ると自分(・・)の体が倒れているのが目に入る。しかも自分の体は左脇腹から右肩まで両断されており傷口から大量の血と贓物がこぼれ出ている。


(ま……まさか?)


 黒衣の剣士はこの時自分がどのような状況であるか察した。アディルの斬撃によって上半身が斬り離され、下半身が少し遅れて倒れ込んだのだ。


(間合いの外だったはず……どうして?)


 黒衣の剣士の疑問はアディルの刀を見た時に氷解する。アディルの刀を魔力で覆い、覆われた魔力が新たな刀を形成していたのだ。


(……地面に鋒をつけて降るったのは……魔力で形成した刃を読ませないため……か)


 黒衣の剣士の意識はそこで途切れる。アディルは天尽(あまつき)を一振りすると鞘に納め、もう一方の戦いに視線を走らせた。


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