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ヘックス  作者: 直線T
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3

町のショッピングモールは仮想空間のものと全く同じ形をしていた。中学時代には文化部だったので教室にこもりっぱなしでこういう場所には縁が無かった。裁縫部であったがためなのかは分からないがここ最近目の悪さが深刻化し、眼鏡が必要となった。

 (父さん眼鏡してるから遺伝かなぁ・・)

 ベンチに座ってそんなことを考えていると一人また一人と集合した。水野はあくびをしながら十分遅れでやってきた。

 「ごめん寝てたわ・・」十一時集合であった。

 女子力皆無の発言に三人は笑った。佐野は時間遅れなどそういったことに寛容で、ガミガミとまではいかないが良い心境にはならないだろうと思っていた衛紅は意外に思った。

 「うわっ、度強いなぁ・・雪乃君よく今まで黒板見れていたね・・」

 「めちゃくちゃ目凝らしてた。父さんに目を凝らしてると余計悪くなるから早く買った方がいいっていわれて・・・」

 佐野の視力はどちらも1.0である。がり勉は眼鏡という古風な偏見には全く則していない。

 次の用は佐野のエプロン選びだった。というか家庭科のエプロンはみんな買っていないので実質みんなの用だった。

 「あ、俺は母さんが作るって言ってたからいいや」

 衛紅の発言に三人はなんだかちょっと引いた。水野は衛紅の服を見た。背中には『My son is My sun』と書かれている。

 (マザコンというか親バカの方か・・)

 高木の、妹の誕生日プレゼントを買いたいという用事に「良い奴アピールがうざい」とさらっと毒を吐いたり、スルメイカを買っていく水野の意外な面が見れた。

 ゲームセンターで遊び、気づけば時刻は一時半だった。昼時を少し過ぎていたためか、フードコートは思っていたよりもすいていた。

 「お腹すいたよー」

 「メックにしようぜ」

 メカニックダナルドはハンバーガーのチェーン店である。メックの愛称で知られ、全国に知らぬ人はいない。メックかメカダのどちらが愛称としてふさわしいかで戦争になったとかならないとか。衛紅は照り焼き、高木はポーク、佐野はハンバーガー、水野はフィッシュバーガーにした。

 「実習みたいに魔族が出たりして」高木は笑いながら言った。

 「すごく細かく作られた仮想空間だったね」

 「殴り足りなかったからそれは嬉しいかも」

 「魔族の習性について知りたいかい?」

 なんでこいつらちょっとズレてるんだと高木は苦笑いをした。

 「そうだ、授業で聞き逃してたんだった。魔族ってどうやって現れるんだっけ?」

 水野はどうやらいつも寝ているらしい。

 佐野は嬉しそうに咳払いをした。「そもそも魔族とは未だに存在を確かなものとされていないんだ。なぜか?それはどこから現れるかが分かっていないからなんだ。どこからとも無く現われ、普段の生態が全く分かっていない。故に空想上のもの『魔族』と呼ばれている。確認されているのは全部で六体、アルザード、ベクスター、カオス、ドラグレス、イービル、フット」

 「D'sってなんだっけ」衛紅が聞いた。

 「D's、Dimension Seedsのことだね。先生が口だけでしか話してなかったし、教科書にも載っていないからテストには出ないと思うけど。日本の魔法学者の一人が提唱した説の一つで、次元種という言葉があるんだ。彼らは次元の壁を越えて種としてこの世界に現れる、そして芽を咲かせる。突然現れる原因はそういう理由なんじゃないかって、殻を破る姿からそう見えたのかもしれない。ない話じゃないけど確たる証拠が無かったからね、学会ではまともに相手してもらえなかった」

 その時悲鳴が聞こえた。すでに食べ終えていた四人はごみを捨て、声の方に走った。ショッピングモールの北にある出入り口の前で女性がフラフラとしていた。遠くからでは分からなかったがいたるところがボコボコと膨らんでいる。

 「僕達は魔法学校日本校の生徒です!救援が来るまで私達が対処をしますので指示に従ってください!」佐野は手帳を見せながら声を上げた。

 入り口の前を抑えられているのでここからは逃げられない。佐野は女性の様子を伺いながら下がるように促した。三人は気づいていない店員や警備員などにも伝えて周った。

 「店員さん!」衛紅は逃げようとする店員を呼び止めた。「安全を確保してからでいいんです!魔法学校に電話をしてもらえませんか!」

 佐野は厳しい面持ちで女性を見た。

 (Eランク以下であってくれ・・・)

 願っていても結果は分かっていた。魔族の中で女性から現れるのは一種しか考えられない。

 三人が戻ってくる頃には女性の頭がパックリと割れ、中から全長三メートルはあろうと思われるドラゴンの顔が見えた。

 (次元・・種・・)

 次元種という説が唱えられるのも頷けた。明らかに人から現れるサイズではなかった。肘から指先までで一メートルはある。丸太のように大きい日本の腕、小さい足。

 「ドラグレス・・」

 咆哮に四人は耳を塞いだ。

 「皆の魔法は把握している!奴の恐れなければならない点は二つ、口から吐かれる炎と尻尾だ。俺が奴の炎から高木君と水野君を守る!その隙に雪乃君は尻尾を落としてくれ!実習で君の魔法を見ていた!あの太い尾を断ち切れるのは君の炎だけだ!」

 「了解!」

 ドラグレスは大きく息を吸った。その瞬間、高木の蹴りで衛紅はドラグレスの背後に回った。ドラグレスは巨大な尻尾で衛紅を狙ったが炎を地面へと飛ばし、わずかに浮き上がったことでそれを回避した。尻尾の根元に捕まった。

 (さっき最大火力で方向転換したからチャージまで時間が・・)

 ドラグレスは口をあけて炎を吐いた。その瞬間、佐野は胸から前に向けて魔力の塊を出した。縦二メートル横一メートルの長方形の魔力の壁は密度が一定且つ濃く、強固な壁となった。高木も衛紅同様、佐野の戦いを見ておらず、そのコントロール力に圧倒された。

 (体外に排出した魔力を完璧に維持し続けるって・・・どうなってんだ!)

 「このまま前に打ち出す!一瞬だ、一瞬の隙を生む!二人は脇から飛び出して目を狙ってくれ!」

 一見強力そうに見える腕は自重を支えることに割いており、攻撃手段とは使えない。炎で自身の視界さえ遮られていたドラグレスは脇から現れた二人に対して尻尾を振り回して対処しようとした。しかし大きく振り回した尻尾はその力によって自身の尾を千切る手助けとなった。皮とわずかな肉のみでつながっていた尾は勢いよく千切れてモール内の店に飛んでいった。

 「うおあああああ」尻尾同様飛ばされた衛紅を佐野が受け止めた。「ふぅ・・・ありがとっ」

 高木は蹴りで右目を潰し、水野は両手に赤い魔力を宿して殴って左目を潰した。

 「やったぜ!ドラグレスを捕獲してみせた!」

 「やった!」

 高木と衛紅はハイタッチした。その背後でドラグレスの体はボコボコと隆起していた。

 「待て、様子がおかしい」

 中から一本の手が背中を突き破った。

 「何・・あれ・・・」

 二メートルくらいある何者かが姿を現した。二本の角に独特の西洋鎧のような防具をまとった何者か、ヘルムで顔は見れない。尻尾がついている。背中から降りて周りを見る動作をした時に気がついた。正面からでは分からなかったがドラゴンのように顔は長かった。

 「龍人・・」

 龍人はこちらを見た。

 (なんだあれは!?あんなものは俺でも知らない・・・どの文献にも載っていない!)

 呆気にとられていると、龍人は急激に距離をつめてきた。まがまがしい爪が佐野の顔を掴もうとしたとき、もう一つの腕がそれを掴んだ。見ると黒いマントをまとった男、衛紅の父だった。

 「学校から魔法協会に連絡があった。救援要請を受けて私が来た。もう安心だ」

 左腕をつかまれたまま右足で尚も佐野を攻撃しようとするも父は右足で龍人の膝を蹴った。そのまま全体重で膝を地面へと踏み、膝が反対方向に出るまでねじ伏せた。

 「あなたは魔法協会の『雪乃敬導-ゆきの けいどう-』さん!」

 佐野は怯える三人と自分を後ろに下がらせた。

 膝を壊されてもだえる龍人を地面に抑えたまま両腕を魔力で作り上げた手錠で抑えた。

 「こちら雪乃、新種を拘束しました。ええ、人型です。・・ちょっとまってください」

 立ち上がって籠手を持ち上げた。中身がすっかり消えていた。頭がコロコロと地面を転がる。

 「・・・中身が消えました。はい、鎧は持ち帰りますので」

 その後警察と魔法協会関係者が現場調査を始めた。安全のために四人は敬導に送られた。

 (鎧の中で何かの痕跡があった。一瞬で消えたけど父さんも見ていた。何かの・・次元の・・痕?)


 暗い部屋の中、薬品や本が綺麗に置かれている。一人の影が拳を握り、怒りを殺して震えていた。

 (あれは龍人兵・・誰の仕業だ・・)

 手を振り、机に並べられた薬品に怒りをぶつけようとした。直前で手を止め、本を開いて白紙のページに何かを書き始めた。

 (私は私の調査をするまでだ・・)

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