夏の雨
小学生の頃から書きたい書きたいと思っていた小説が、やっとかけました。高校2年生になって初めての恋愛。青春というべき青春に出会い、そんな気持ちをみんなと共有できたら幸せです。
雨はかなり降っていた。私は傘を持っていなかったが、特に気にしなかった。ローファーに水が侵食する。中では靴下がビシャビシャと音を立てている。きっと鞄の中の教科書も、家に着く頃にはびしょ濡れだろう。でもそんなことはどうでもよかった。もうこの教科書も私に何も教えてくれなと思った。学校から駅までの道のりの中で、私の中の光と影のような心は、ますます紙一重になっていった。雨で顔が濡れて、涙が流れているのかじぶんでもわからなかった。かすかに目が痛いような気もした。つい10分前のことのようにおもえる。私の心が花火のように散ったのは。散った花火は雨にかき消されてすぐ見えなくなってしまった。だからさっきのことはよく覚えていない。でも少しだけわかったことがある。私の、楓くんへの恋心は、歩いて渡れる浅瀬のようなものだったこと。そして、私がついさっき、振られたこと。ごめん。と一言だけ。短い言葉のせいでなおさら頭のすみっこで跳ね返っては心臓に追突する。私はよくわからなかった。あんなに思わせぶりの態度をとった楓くんも、それにあっさりのってしまった私も。
雷雲に踊らされた私はまっすぐ家に帰った。何度となく通った道で、楽しさを探してしまう。そういえは神社はもうすぐ夏の祭りらしい。中学生の時、同じクラスの男子と高速道路の橋の下でやった手持ち花火が脳裏をよぎる。この花火、桃の香りがするらしいよ。鼻詰まっててわからないや。なんてどうでもいい話をしていた。そのあとそいつがなにかボソッと言ったが、車の音が大きくて何も聞こえなかった。あの時なんて言ったんだろう。なんてことを時々思い出してみる。その時からそいつとはなんだか気まずい。
今思えば私はそいつが好きだったのかもしれない。
何もかもどうでもよくなった。雨に濡れた髪の毛をはやくふきたかった。近くの遊園地の今日の花火は中止らしい。
夏休みがきた。エアコンガンガンの部屋は少し肌寒い。いつもより2時間遅く起きた。ぐぅっと背伸びをしてから、携帯を見た。9時4分。たまたま楓の誕生日と同じだった。自分では傷ついてないとおもっていたけれど、実際立ち直れてはいないのかもしれない。そんな時、いきなりメールが届いた。今日、八坂の祭りがあるんだ。行かない?
友達のあみからだった。八坂を少し想像して、唾を飲み込んでから、いく。とかえした。