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らん豚女神と縛りプレイ  作者: ジェームズ・リッチマン
第三章 討つは奴への猜疑心
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少しでもパソコンを扱える者は年賀状をプリントする義務を背負わなければならない


「ほう、宣教師殿が我々マウント隊商に同行したいと」

「はい。とりあえず、カルカロンの聖地までを予定しているのですが」

「宣教師殿であれば問題ない。参加を歓迎するよ」

「ありがとうございます」


 ホルツザムの外れには既に沢山の馬車が連なり、何百メートルもの行列を成している。

 俺達が今いるのはその先頭で、話している相手はこの行列のまとめ役、マウント隊長だ。

 筋骨隆々、鉄製の鎧で身を固めた立派な戦士である。両端でぼよーんとハネたゼンマイ状のヒゲがとても偉そうだ。言っちゃ悪いが、偉そうな戦士を絵に描いたような人である。


「後ろの二人は?」


 なんて失礼なことを考えていたためか、ぎらついた目で射抜かれた。

 ヒゲの形は愛嬌があるが、全身から醸しだされる雰囲気は歴戦の猛者そのものである。


「俺は八代(やつしろ)。クローネ……ああ、こっちの宣教師さんの護衛です。で、隣のこいつはペトルっていいます。護衛には出せませんが、おまけみたいなもんなんで、気にしないでください」


 俺は簡潔に自己紹介すると、日本人風にぺこりと頭を下げた。

 それに倣うように横のペトルも頭を下げるが、おそらく意味はわかっていないだろう。


「ふむ、礼儀正しい若者だ。頼り無さそうだが……まぁ、その意気込みは買ってあげよう」


 どうやら隊商さんには認められたようだ。

 ペトルがお荷物なんで渋い顔をされるかと思ったが、案外好感触である。これは良い流れ。参加費が安く済んでくれればいいのだが。


「ところで、君たちの荷物はその背嚢だけのようだな。馬車や、積み荷などはないのかね」

「あー……ない、ですねはい。……もしかして、馬車がないと参加できないとか……?」

「いや、そのようなことはない。むしろ馬車が無いのであれば、護衛の居ない馬車に入って仕事をしてもらうつもりだからな。護衛不足のこちらとしてはそっちの方が都合がいい」


 なるほど。俺たちは単純に護衛として数えられるってわけか。

 他人の馬車に乗せてもらうのはむしろ忍びない気持ちもあるのだが、向こうがありがたがっているのであれば、笑顔でサムズアップでもしておくとしよう。


「ヤツシロと宣教師殿には護衛として入ってもらうとして……その場合は、そちらの子供も合わせて特別に参加費は無料としておこう」

「え、無料?」

「途中の炊き出しもな」


 美味しい話に、俺とクローネは顔を見合わせた。

 “お、これは”と思ったのは彼女も同じだったようで、口元がちょっぴりにやけている。


 移動がタダで飯も出るとは。

 地球にいた頃だったら100%疑ってかかっているような契約内容だが、隣で飯の話題に目を輝かせている女神さんの存在を思うに、きっと悪い話ではないのだろう。


「是非、よろしくお願いします」

「私からも。皆様の旅が良きものでありますように」

「おほーっ!」

「うむうむ。ま、男の方には多少の荷降ろしも手伝ってもらうがな?」

「……うっす」

「とりあえず、もうすぐ出発だ。こっちが指定した馬車まで急いでもらえるか」

「了解っす」


 なるほど、まぁ力仕事を割り振られるのは当然だわな。

 飯と馬さんの働きの分だけ、せいぜい頑張りますよっと。





「私たちに割り振られた馬車は、かなり後ろみたいですね。前の方は、既に護衛の人で埋まっているのでしょうか」

「まぁ、前でも後ろでもあまり変わらないだろう。俺は後ろのほうが気楽だな」

「そうなんですか?」

「追突事故にあってもわりと平気だし」

「?」


 さて、俺たちは護衛役として馬車の中に配属されることとなった。

 俺達の乗る馬車こそが大切な足となってくれるわけだが、これまでの旅のようにそこで寄生するばかりではいけない。

 俺たちは自らの乗る馬車を守り、荷物の運び出しを行うなど、全面的に協力しなければならないのだ。肉体労働はさほど得意ではないが、無賃乗車の代わりである。クローネやペトルの分も働いて、どうにか白い目で見られないようにしなくては。


 しかし、俺達の乗り込む馬車は随分と後ろの方にあるらしい。

 先程から何台もの馬車とすれ違っているが、幌に書かれた番号と合致するまではまだまだ時間がかかりそうである。


 果物をたくさん載せた馬車。

 大きな木箱を満載した馬車。

 生きた鳥や豚を何匹も載せた馬車。


「おほ……」


 ロープで縛った布地を山盛りに搭載した馬車……本当に色々な馬車があるものだ。

 馬二頭や四頭だけで本当に牽引できるのか心配になる馬車もあるが、そこはおそらく、この世界特有のたくましい馬がどうにかしてしまうのだろうか。


 さて、俺達が乗り込む馬車は一体どんなものになるのやら……。

 できれば臭い家畜と一緒に長旅はしたくないものだが……。


「しゅっぱぁあーっつ!」

「えっ?」

「あら……」


 なんてのんきに歩いていると、どこか遠く……後ろの方から、威勢のいい声がこっちまで轟いてきた。

 出発……? 今、誰か出発って言った?


「おい、お二人さん。目当ての馬車に乗り込むなら急いだほうが良いぜ。もう先頭は走り始めている頃だろうよ」


 クローネと一緒に固まっていると、すぐ近くの馬車を牽いていたお馬さんの一頭がそんな事を教えてくれた。

 かくいう彼の動きも、既にゆっくりとした徐行運転を開始しつつあって……。


「く、クローネ! 急ごう!」

「はい!」


 なんてこった。隊長さんちょっと出発するの早すぎじゃないですかね……!

 どうしてこんな異世界に来てまで飛び込み乗車なんてしなくちゃならないんだ! いや、のんびり馬車見ながら歩いてた俺たちが悪いんだけどさ!


 俺とクローネはドタバタと走りながら、結局は隊商の最後尾に乗り込むこととなったのであった……。




「ぶひぶひっ」

「ぶっひぃぃいい」

「おほー、出荷よー……」

「ぶひひ~」

「ぶひぶひ」

「ぶひー」

「……? なんだこの子供。まぁ、大した荷物でもないし別にいいか」


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