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らん豚女神と縛りプレイ  作者: ジェームズ・リッチマン
第三章 討つは奴への猜疑心
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耳掃除しすぎるのもあまり良くない

 教会でやる事といえば、お祈りだ。

 ゲーム風に考えるのであれば、呪いを解いてもらったりだとか、祝福してもらったりだとか、復活させてもらったりとかであろう。

 死人を棺桶からザオるなんて、冷静に考えてみれば神の御業以外の何物でもない大偉業であるが、今回俺が授かった数々の神器もまた、大変なものであることには違いない。


 ほとんどあらゆる品を鑑定できるという『プレイジオの欠片』。

 使えば身を守ることができるという『銀河の指環』。

 注ぎ口こそ小さいが、無限に水が出てくる『万霊の水差し』。

 あと……よくわからないネックレス『道理の歯車』。


 静止した時間が動き出し、混雑した聖堂の騒がしさが戻ってくると、俺は数々のすごいアイテムを手にしていた。

 経緯はちゃんと話を聞いていたのでわかってはいたが、時間的にはまるで青天の霹靂である。

 お偉いさんとの話を終えたクローネが慌ただしく戻ってくると、俺が手にしていた道具を見て、やはり怪訝そうな表情を浮かべていた。


「ヤツシロさん。それ、どうしたんですか?」

「もらった」

「どなた様にですか」

「ヤォ様」


 クローネが手にした荷物を真顔で落としたのは言うまでもない。




 今すぐにでも五体投地を始めかねないほど興奮したクローネをペトルが宥めながら、俺はヤォから頂いた神器の整理を行った。


 指環はとりあえず右手につけておくとして……歯車のネックレスは常に身につけたほうが良いと言われているから首に下げておこう。

 万霊の水差しやプレイジオの欠片も貴重品ではあるが、手に持つ余裕はないので、かばんの中にしまっておくしかない。水差しがかばんの中で溢れたりしないか心配だ。


「ヤォ、また行っちゃった……」

「なあに、また会えるだろ。落ち込むなよ」

「うん……」


 原神。信じがたいことではあるが、かつてはペトルもその一人だったのだという。

 この落ち込みっぷりから察するに、ペトルがちゃんとした神様だった頃は、随分と仲良く……というか、懐いていたのだろう。

 いつか必ず、ちゃんと神様のいる場所にまで送り届けてやらないとな。


「ヤツシロさん、私にも! 私にも触らせてください!」

「……じゃあ水差しをどうぞ」

「おお、これが万神ヤォの神器……! こ、この水を飲めばもしや私の霊格が上がってしまうのでは……!」


 しかし、なんだ。

 クローネって神様が絡むと途端に面倒くさい性格になるな。

 まぁ、聖職者だから無理もないんだけど。




「お見苦しい所を見せてしまいましたね。申し訳ございません」

「いや、別に良いって」

「おほんっ」

「おほ?」


 ひとしきり神器を撫でたり頬ずりして何らかの養分を摂り終えたクローネは、いつも通りの毅然とした態度で咳払いする。


「ホルツザムの教会の方々から、これまでの旅費の一部を支援していただけることになりました」

「おー、出たのか」

「おほー」


 教会のお偉いさんと話した末に、どうやらクローネはちょっとしたお金を手に入れたようである。


「1000カロンも戴いたので、これから再び遠くへ行くにせよ、ホルツザムに駐留するにせよ、問題はないはずです」

「えっ、1000も貰ったのか!?」

「ええ。まぁ、宣教師は役職上、遠征することも多いですからね。そういうものなんですよ」


 驚いた。ていうか、宣教師ってそんな簡単に旅費を出してもらえるもんなんだ。領収書も無いのに。

 ……道中でクローネがほいほいペトルにおやつを買い与えていた理由が、ちょっとだけわかったかもしれない。


「なので、当面は貨幣袋の中身を気にかける必要はありません。せっかくなのでこの後は、ホルツザムで美味しい夕食でもいただくことにしましょうか」

「おほー! ごはん!」

「おお、飯か。そうだな、それが良い」


 つーかペトルよ、お前さっき俺の霊力食ったよな。

 それでもやっぱ胃袋は別なのか。別なんだろうな、その嬉しそうな様子だと。


「……ですが、その前にひとつだけ」

「ん? どうした」

「先に、私の礼拝の方を済ませても宜しいでしょうか? 日が没する前に、各神々に祈りを捧げておきたいのです」

「ああ、もちろん大丈夫だ。祈りは大事だもんな、ペトル」

「うんうん。ちゃんとご飯あげてね」

「ふふ……ありがとうございます。では、少々お待ち下さいね」


 神様に祈るのを“ご飯をあげる”って、ちょっと冒涜的な感じがしなくもないが……他ならぬ神様自身がそう表現しているなら問題はないだろう。

 霊界にいる神様も、霊力を貰うと腹が膨れるのだろうか。ちょっと気になるところである。




 クローネは、かなり多くの神々を信仰している。

 主信仰の教布神エトラトジエをはじめ、慈聖神フルクシエル、商神カルカロン、祭器神ロウドエメス、光輝神ライカール、技神ミス・キルン、符神ミス・リヴン……。

 これらひとつひとつの祭壇の前で霊力を捧げなくてはならないので、自然とその時間も長くなるし、霊力を消費する分、身体に疲労もやってくる。

 なので、疲れて眠くなってしまう礼拝は、一日の終りにやるのがベストなのだそうな。もちろん、夜は闇の神々が活発になる時間なので、一部の聖なる神々に

祈りを捧げる場合は、日が没する前に済ませておくのが礼儀である。


「フルクシエルより授かりし加護に感謝を……」


 今クローネが跪いているのは、慈聖神フルクシエルの祭壇だ。

 この前には7つの祭壇に霊力を捧げていたので、ここが最後のお祈り場所ということになるだろう。ここが最後になった理由は特に無い。ただ単純に、聖堂をぐるりと回って最後がここだったというだけだ。


 クローネの身体からうっすらと輝く霊力が浮かび、少しだけ千切れては、祭壇の中への吸い込まれる。

 彼女の祈りを待つ間、俺とペトルはその様子をぼーっと眺めていた。

 ただ待っているだけといえばそれまでであるが、祈りの際に霊力が祭壇に向かう光景は、やはり神秘的で物珍しいものである。

 あと百回くらい見ても飽きないだけの厳かな雰囲気がそこにはあった。


 と、そんなとりとめもないことを考えている内にクローネのお祈りは終わるはずだったのだが……。


『クローネ・ガーネントが慈聖神スキル、『陽だまりの加護』を取得しました』

「……ん?」

「おほ?」


 彼女が霊力を祭壇に捧げた次の瞬間、聞き慣れない女の声が聖堂に響いた。その独特な反響はまるで、迷子の呼び出しアナウンスのようである。

 クローネがスキルを……なんだって? スキルを取得?

 ゲームのメッセージのような言葉だったが、今のは一体誰の声だったのだろう。


「こ、これは!?」


 俺が声の主を探して辺りを見回していると、先程まで祭壇の前で跪いていたクローネが勢い良く立ち上がった。

 びっくりした。


「ど、どうしたクローネ」

「すす、スキルです! 今の祈りで慈聖神のスキルを獲得したと、ミス・キルンからのお告げがあったのです!」

「え、お告げ? ミス・キルンのって、今の声が?」

「はい! ああ、私の長年の信仰がついに実を結び……って、なんで私のスキル取得がヤツシロさんに聞こえるんですか!?」

「え、わからない」


 ていうか色々と初めてのことしか遭遇しないので、本当によくわからんです。はい。



『我が信徒クローネ。貴女の慈しむ心を鑑みて、新たな力を授けましょう……』

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