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らん豚女神と縛りプレイ  作者: ジェームズ・リッチマン
第二章 無知と未知への恐怖心
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女剣士は背後を取れば勝てる


 メイルザム、チェスザムときて、次はもう一つの宿場町である。その次がホルツザム、俺達の目指す場所だ。

 路銀はあるので、旅自体には問題ない。所持金は1000カロン。また雨によって缶詰にされたとしても、多少の余裕は残っている。

 それでも必要以上に高い宿に泊まる必要性も感じないので、俺達はいつも通り程度の宿屋に泊まる事にした。


 一泊18カロン。まぁ、ベッドの数を考えなければこのくらいでも充分だろう。




「むにゃむにゃ……」

「やれやれ、ペトルはようやく寝付いたか」


 フルートをぴーぴー吹き鳴らしたり、お祈りしてくれとねだってきたり、俺と一緒のベッドじゃないと絶対に嫌だとか色々と駄々をこねられたが、それら全てを許容してやると、どうにか彼女も静かになってくれた。

 全く変な意味ではないが、ペトルなら今俺の隣で寝てるというわけである。


「クローネも悪かったな。わざわざ俺のために祭壇を出してもらっちゃって」

「いえいえ、祈りの霊力は神々の糧ですから。宣教師として当然のことをしたまでですよ」


 どうやらペトルへの祈りは、祭壇の上にペトルを乗せた上でやらなくてはならないようである。

 が、神様の祭壇がそう都合のいい時にすぐ傍にあるものではないので、今回は宿の部屋でクローネに『光の祭壇』を使ってもらった。といっても『光の祭壇』はスキル発動の際に祭壇の神様を決めなければならないので、クローネの一存で教布神エトラトジエのものをお借りしたわけだが。


 色々と胃とか良心とかが痛む一日だったが、それも終わり。

 今日はもう、ぐっすりと眠るばかりである。


 明日が快晴なら、ようやくホルツザムに到着する予定だ。

 大きな都市らしいので、やらなきゃいけないことが色々とあることはわかっていても、結構楽しみである。まるで遠足前の小学生だなーとか思ったけど、思い返してみればあまり小学生のイベントに良い思い出が無かった。憂鬱なだけだったわ。


「そういえば、ヤツシロさん。刀装神ガシュカダルが仰っていたという、ユナという剣士のことを考えていたのですが……」

「ああ」


 実はもう、宿に泊まる前の馬車の中で、既にクローネとペトルに“ユナ”について多少だけだが話している。

 ガシュカダルが言っていたという、真幸神ペクタルロトルに改宗した虫族の女剣士。その存在は、なんとクローネも知っているようだったのだ。


「先ほどの『光の祭壇』で教布神からの啓示を求め、尋ねてみたのですが……聖者というだけあって、ユナのことについては簡単に調べがつきました」

「え、神様に聞いたのか」

「教布神エトラトジエはそういった神ですからね。それに、細々とした信徒ならばともかく、聖者であれば多少は神に纏わる者ですから。その履歴を探るのは、あまり難しいことではないのですよ」


 おお……なんか、街についてから色々と調べ回るつもりでいたのに、まさかこんな宿屋の一室で判明してしまうとは。


「風雅の剣聖ユナ。数えきれないほどの闇の眷属を斬り払い、各地を旅して回ったという、まさに剣聖の名に相応しい人物です。二つの剣を巧みに操り、踊るような美しい動きで闘うことから、“風雅”の名がついたそうですね」

「うわあ、すごいな」

「ふふ、聖人ですからね」


 俺のベッドの傍にあるキャンドルに火を灯しながら、クローネは薄く笑った。


 しかし、話を聞くと本当にファンタジーの世界の英雄って感じがする。

 かたや次の街を必死の思いで目指す俺。勇者どころか戦士にすら慣れてない気がする。さしずめ何も極めていないすっぴんの旅人といったところだろうか。


「ですが、やはり今は刀装神への信仰をやめているそうです。聖者としての偉業は記録として残っているのですが、それ以降は」

「手がかりなしか」

「すみません。私が聞き取れる啓示では、それ以上のことは」

「いや、わざわざ調べてくれてありがとう。どんな人がを知れただけでも充分ありがたいよ」


 話を聞く限りでは、悪い人物ではなさそうだ。

 闇の神を信仰するという眷属……ようは悪い連中をバッサバッサと切り裂いているのだ。普通に旅をしていれば、ユナという人物が俺たちの敵として現れるということは、多分ないだろう。

 ちなみにペトルが寝付く前に“ユナって人知ってるか?”と聞いてみたところ、返ってきた答えは“むずかしい事はわからないよ”というものであった。

 ……多分、覚えてないんだろうな。脳天気な奴め。


「……ユナは俺たち以外では、唯一ペトルについて知ってる人間だ。いつかユナに会えたら、彼女は力になってくれるか……もしかしたら、宝玉の手がかりを教えてくれるかもしれない」

「ええ……そうですね」


 ペトルを信仰したいと考えている人であれば、きっと協力してくれるはず。

 それが熟練した剣士とあれば、心強い味方となってくれるだろう。


 ……出会った剣士が味方になる前提で考えるなんて、ちょっと考え方がゲーム的過ぎるだろうか?

 うーん、そうは言っても、やっぱりどうしてもこの世界の生活って、ゲームっぽい考えが頭をよぎるんだよなぁ……ねむねむ。


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[良い点] 双剣士、なるほど。 鞍替えも納得ですね。
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