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らん豚女神と縛りプレイ  作者: ジェームズ・リッチマン
第二章 無知と未知への恐怖心
64/119

ソフトでも当たると普通に痛い

「ボォオオン」

「うわなんか出た」


 地下四階。宝箱を開けてしばらく通路を歩いていると、向こう側から明らかにモンスターっぽいシルエットを持った人影がやってくるのが見えた。


 人型で、身長は俺と同じくらい。

 どうやら右手に曲剣を、左手にラウンドシールドを持っているようだ。影だけでもわかる。

 そして野太く気持ち悪い声からして、多分またアンデッド系の奴に違いない。


「あれはボーンウォリアーですね……マントと盾で隠れられると、私の『ホーリーライト』も効力が弱くなってしまいます」


 クローネは少しだけ参ったように、しかし冷静に敵を分析する。

 やはり地下四階、一歩手前で新たなモンスターが出てきたか。


 そして俺の見立て通り、のしのしとこちらに近づいてくる影は、スケルトロールのような骨々しい姿であった。

 なるほど、クローネの言うとおり確かにマントもつけているし、あの盾を構えられると影になって、光を受ける範囲が狭まってしまうかもしれない。

 一休みしたおかげでクローネの霊力も万全ではあるけれど、彼女の強力な光魔法が決定打として使えないというのは少々痛いか。


「じゃあそろそろ……『サーチ・オート・コンプ』発動!」


 だったら、俺がやるしかない。

 俺は斧を持ったままの手でバインダーからカードを引き抜き、そのまま発動を宣言する。

 光となって弾けて消えたカードは俺の体の中へと入り込み、おそらくそれによって効果がオンになったはずだ。


 『オート・コンプ』は、俺が魔物を倒したことによってドロップするカードを、二十四時間だけ自分の手元へと自動的に引き寄せるスキルカードだ。

 拾う手間が省けるし、カードの取り忘れを未然に防いでくれるなかなか良い効果なのだが、二十四時間という制限付き。なので使うときは、ここぞという時に限られる。


 とはいえ、俺はカードを使わないとお話にならない戦闘スタイルだ。

 カードの枚数に自分の命がかかっていると言っても過言ではないので、闘いながらカードを供給してくれるこのスキルは実のところ、ただの便利だけに留まらない効力を持っている。

 盾と剣を持った物騒な敵を目の当たりにして、俺もようやく本気を出し始めたというわけだ。


 しかし、俺が本気で戦うには少々重荷になるものがある。

 なので……。


「うおらぁっ!」

「アッ」


 まずは全力で、右手に持った手斧をボーンウォリアーに全力投擲!

 両手が空いてないとカードが使えないんだ! すまんなギン!


 そこそこの重量を持った手斧は勢い良く回りながら宙を駆け、ボーンウォリアーの構えるラウンドシールドに衝突し……なんとそのまま盾を叩き割ってしまった。


「わ、すごいです」

「おほーっ!」

「自分で投げといてなんだけど、まさか盾が壊れるとは……よし、じゃああとは簡単にトドメを」

「わ、ワタシにマカせてください!」


 俺が次のカードを取り出そうとした時、なんとギンが前に躍り出た。

 右手に剣。左手に盾。その姿は紛うことなき戦士のそれである。


「大丈夫か、ギン!」

「は、はは、ハイ! ワタシも剣士になる身です! 魔族くらいナンとも……!」

「ボォオオオン!」

「キャァアア!?」


 と、かっこ良く前衛に飛び出してきたは良いものの、迫り来るボーンウォリアーの叫び声に圧倒され、ギンはすぐさま後衛に引っ込んでしまった。

 うん、まぁ怖いのはわかる。


 けど心の中だけで言わせて欲しい。お前何しに出てきたんだ。


「まあ、どうせ俺が倒さなきゃカードも落ちにくいからな……『サーチ・トリプル・ダーツ』発動!」


 フル装備の状態で縮こまるギンの前に立ち、俺はバインダーから一枚のスキルカードを取り出して、それを発動させる。



■「トリプル・ダーツ」スキルカード

・レアリティ☆

・三回攻撃、一投ずつ。手元にダーツを出現させ、相手に投げて攻撃できる。命中すれば強い衝撃を与え、当たりどころが良いほどダーツが強く爆発する。カードオリジナルスキル。



 スキルカード『トリプル・ダーツ』。

 俺の手の中に出現した三本のダートは、暗がりの中で仄かに輝いて見えた。


 標的は、のしのしとこちらに歩み寄ってくる一体のスケルトン。

 手には曲剣を構えているが、近付かれさえしなければなんということはないし、もっと言えば奴が肉薄したとしても、俺はどうにかするだけの自信がある。


 だから落ち着いて、冷静に投げるのだ。

 慌てることはない。当然のようにやってみせるだけ。


「フッ」


 短く息を吐くのと同時に、一本のダートをボーンウォリアーに投げ放つ。

 ダートは特に迷いもなく真っ直ぐ飛んで、ボーンウォリアーの胸骨部分に見事命中し……。


「ウボァッ」


 骨は木っ端微塵に爆発して、砕け散ってしまった。


「お見事です」

「あたりー」


 ……結構弱いスキルカードかなーって思ってたけど、案外この『トリプル・ダーツ』も威力高めなのな。

 当たりどころが良いほど威力が高いというけれど、さっきの胸骨って当たりが良いっていうのだろうか。それとも眉間に当てれば一番なのだろうか。そこのところちょっと詳しく知りたいな。


「あ、シロ、カードが!」

「おっとっと」


 なんて考え事をしている間に、バラバラになった遺骨の煙の中から一枚のカードが飛んできたキャッチをするまでもなく手元に引き寄せられるんだけど、突然くるとさすがにびっくりする。

 そういえば前も同じような感じで驚いてばかりだった気がするな……この引き寄せ方は、ちょっと慣れそうにない。



■「骨歩兵ボーンウォリアー」モンスターカード

・レアリティ☆☆

・魔族指定の悪霊族。闇より生まれた、骨の兵士。

 主に地下やダンジョンに生息し、闇の眷属以外なら何でも襲う。

 右手に錆びた曲剣を、左手に錆びた盾を装備している。



 入手したのはさっき倒したボーンウォリアーのモンスターカード。

 レアリティは2。やはり今のところこのダンジョンでは一番の強敵、ってことになるのだろう。


「ウウ……こ、コワがってちゃダメなのに……」

「……ギン、あまり気にするなよ」

「は、ハイ……」


 まぁ、土壇場のところで“やる”と言っておきながら“やっぱやめる”っていうのは正直どうかとは思うけど、怖いものは怖いからな。

 さすがに盾と剣持ってるから気持ちも完全に勇者、ってわけにはいかないか……。

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