君はフォースを感じた事があるか
ほとんど予想通りではあったが、地下二階ではほんの少しではあるが、出現するモンスターの強さが上がっているようだった。
具体的に言うと、ほとんどスライム同然であった骨虫のスカルベの出現率が減り、スケルトロールの出現率が上がったということであろうか。
出てくるモンスターの比率が変わっただけなら何も問題ないのではないか、と思われるかもしれないが、そんなことはない。
スカルベならば俺が全力で壁面にシュゥーッっとすれば良いだけなのだが、自分よりも大きなスケルトロールが相手になると、そう簡単には事が運ばない。となると、最も安全に対処できるのがクローネの『ホーリー・ライト』になってしまう。
当然、スキルの使用には霊力の消費が伴う。そうそう連発できないため、俺達のダンジョン探索は、にわかに緊張感が高まりつつあった。
「ペクタルロトルさんのフルートでは、闇の眷属を退けるまでが限界のようですね」
「倒せるまでできたら楽だったんだけどな。あまり吹きすぎても、奴らは音に慣れるようだし……」
「ぷぴー……」
ペトルの持つグラシア・フルートは闇を祓う力があるのだが、その効果は結構微弱であるらしく、モンスターを倒すまではいかないようだった。
せいぜい、松明を振って脅かす程度であろうか。さほど効果が出ず、スケルトロールと対峙した時には少々苦戦している。
なので、今はダンジョンの一室で休憩を兼ねた作戦会議中だ。
幸い、ダンジョンと言ってもただ通路だけがウネウネと連続しているわけでもなく、通路をしばらく進んでゆけば、そこそこ広めの部屋に出ることがある。
そこには小川のような天然の水場が通っていたり、ちょっとした草が生い茂っていたりと、ダンジョン内で暮らすモンスターのための環境が整っていることが多い。
クローネが言うにはたまに宝箱もあるらしいのだが、そういったものには未だ出会っていない。
ともかく、不思議なダンジョンである。
「ここからは俺がカードでなんとかするから、その間クローネは体を休めててくれ」
「……そうですね。それが最善なのでしょうか……しかし、カードの残り枚数にはくれぐれも気をつけてください。少なくなったら、すぐに……ギンさんには申し訳なく思いますが、退散する気持ちで行きましょう」
「ああ、そうだな」
「ハイ」
「おほ」
一階はまさに快進撃だったが、MP切れという至極当然かつ初歩的な難敵を前にして、俺達の探索には陰りが生まれている。
さて、休憩の後の俺のカード戦法は、果たしてダンジョンの相手に通用するのであろうか。
結果は、クローネが用意した黒パンを全て平らげてからのお楽しみである。
食後、ダンジョンの水を飲んで休憩所から出立した俺達は、地下三階を目指すべくダンジョン探索を再開した。
俺はダガーを左手のカードバインダーに挟み、右手を常にフリーの状態のまま保持している。ダガー自体が弱いとか不良品だとか言うわけではないのだが、いかんせん肉が無く血の流れない骨を相手にするには相性が悪すぎる。
なので一旦ダガーの使用は置いといて、別のカードを使って闘うことにした。
「出たなガイコツオバケ」
「ウボァー」
さて、当然歩いていればモンスターとカチ合う。
出てきたのはこの地下二階におけるそこそこ出会うと面倒くさい難敵、スケルトロールだ。あいつの攻撃はまだ当たったことがないからわからないけど、多分見た目そのまま、結構痛いに違いない。
「シロ、どうするの?」
「闘うさ。『サーチ・レイ・ストライク』!」
先頭に立つ俺からしてみても、通路の向こう側にいる巨大な人骨モンスターとの距離は遠い。向こうのこっちに気付いたようだが、動きの鈍いスケルトロールがドタドタと近づいてきたところで、それは俺からすると、都合のいい距離調整にしかならなかった。
「『レイ・ストライク』発動」
差し向けたカードのイラストから魔弾が射出され、スケルトロールの胸部に当たった炸裂する。
一瞬閃いた輝きの間に、スケルトロールの骨々しい肉体は木っ端微塵に砕け散り、悲鳴を上げる間もなくバラバラになった。南無。
……一度に複数体とか、忙しくなければカードでもどうにかなりそうだな。
「カードでたー」
「またか」
「オオくないですか」
「神のご加護があるのでしょう」
「ナルホド」
例によって、またカードがドロップ。
ここまでのダンジョン探索、俺が倒した連中が確実にカードをドロップしてるんだけど大丈夫なのか。
「ほい、シロ、これー」
「おう、ありがとな」
俺はペトルからカードを受け取り、それを見た。
どうやらこれは、俺の初めて目にするカードのようだ。
■「レイ・スラッシュ」スキルカード
・レアリティ☆
・標的を切り裂く霊力の剣。術者が使用を宣言すると、カードが伸びて一定時間だけ霊力の剣となる。
レアリティは1。名前からして、どうやら先程使用した『レイ・ストライク』の親戚にあたるようなカードらしい。
イラストには、マネキンっぽい人が光り輝くビームサーベルみたいなものを手に、簀巻きをカッコ良いポーズで両断している様子が描かれていた。
「……よし、先に進むぞ。このカードを使ってみたい」
「? はあ、そうですか」
女にはわかるまい。光り輝く剣で敵を切り裂く男のロマンが。
「あ、シロー、あそこに階段あるー」
「……そうだな」
「もう地下への階段が見つかったのですか。順調というか……運が良いですね」
新カードのお披露目は、次の階に行ってからのようである。




