使い捨ての武器は結構強い
ダンジョンの進行は、主にクローネ一人の力によって円滑に進んでいる。
通路に現れるのは主に最初に出てきたような骨の巨人スケルトロールと、そしてそれよりも数の多い、頭蓋骨の下に虫の足を生やしたような不気味な魔物、スカルベの二種類であろうか。
どちらも骨で作られた魔物であり、純粋な闇の眷属であるのだという。
しかもこいつらが聖なる力には弱いというのだから、それ専用の対抗手段が用意されていれば弱いの何の。
安全に関してはしっかりとした危機管理意識を持ったクローネが、ダンジョンの探索に対しては妙に乗り気だった理由がなんとなくわかった。
なるほど、クローネの『ホーリー・ライト』があるだけでこうも違うのか……。
「光輝神の清き閃きよ、穢れし闇の眷属を追い払え。『ホーリー・ライト』!」
「ピッキャァアア」
通路の向こう側から向かってくる髑髏の虫に光を浴びせ、クローネはまた一匹の魔物を塵に葬った。
これで、計十体ほどを倒したのだろうか。もちろん、その全てがクローネのスキルによるものである。
俺達は何もせず。もとい、できず。
まさにクローネ無双という言葉が相応しい道中であった。
「あ、珍しい。カードが出たみたいですよ」
「本当か?」
俺としては“なんかずっとカード出てないなー”という違和感しかなかったのだが、そうだった。俺は運が良くなっているからアレだけど、カードって普通はわりと珍しいものなんだっけか。
「……うーん、モンスターカードですね。できればスキルカードが良かったのですが……」
「みしてみして!」
「あ、はい。どうぞ」
「おほー!」
クローネが拾ったカードにペトルが飛びついていったので、ついでに俺もちらりと覗き込む。
俺の後ろからは、同じく気になったのであろう、ギンも一緒になって見ているようだった。
やっぱりみんな気になるんだな。
■「骨虫スカルベ」モンスターカード
・レアリティ☆
・知性のない魔族指定の悪霊族。人の頭蓋骨のような形の甲虫。
主に地下やダンジョンに生息し、闇の眷属以外なら何でも襲う。
数が多く、近づくと硬い顎で噛み付いてくるが、蹴っ飛ばしてやれば難なく倒せる。
イラストに描かれている魔物は、頭蓋骨に甲虫の長い足が生えているかのような見た目である。はっきり言って気持ち悪い。
しかもこいつは、動き出すと顎をカタカタと鳴らしながら迫ってくるので、本当に気持ち悪い。ホラーでしかない。
まぁ、音を鳴らしてくれる分、どこにいてもわかりやすいので、対処はしやすいのだが……。
というかこいつ、蹴っても倒せるのか。
「じゃあちょっと、あいつを蹴ってもいいかな?」
「気をつけてくださいね。噛まれると痛いらしいですよ」
「シロ、気をつけて!」
そんなわけで、少し歩いているとまたスカルベを発見したので、実際に蹴ってみることにした。
クローネの『ホーリー・ライト』を使えば安全に、すみやかに倒せはするが、その分だけ霊力を消耗してしまう。
ここにくるまでにクローネも連発していたので、少し疲れているかもしれない。それに、そろそろ働いておかないと、俺の心が辛かった。
「ピキィー」
「うわきた」
地をカチカチと這い歩くドクロムシ。
動きは遅いが、頭蓋骨がひとりでに動いているというだけで嫌悪感は十分である。
「うおらっ!」
「ピキャ」
こっちに来んな! という全力の想いを、右の蹴りとしてぶっ放す。
動きののろいスカルベは俺のケリによって砕けながら飛んでいき、側面の壁にぶち当たって大破した。
頭蓋骨複雑骨折。残念だがあの様子では即死だろう。
「お見事です」
「スゴイ」
「おほーっ」
実際、今の蹴りだけで倒せたようだ。
けどみんな、そんなに褒めないで。俺ただ蹴っ飛ばしただけだからね。あと少しだけ、蹴った右足が痛いから。スニーカーの限界を感じてるんだ俺。
「あっ! シロが倒したのからもカード出てる!」
「おお、本当か」
「……やっぱり一発で出すんですね」
「またデたんだ……」
ペトルが無防備にもパタパタと歩き、スカルベの残骸から一枚のカードを拾い上げると、それを俺のもとまで持ってきてくれた。
ありがたいけど、まるで犬だなぁと思ってしまった。いや、神様なんだけどさ。
さて、出たのはなんてカードだろうか……。
□「スケイル・シールド」アイテムカード
・レアリティ☆
・非常に硬い鱗の盾。防御力は高いものの、攻撃を受けるたびに鱗が剥がれて消える。
鱗の数は十二枚。使い捨て用。
「おお、アイテムカードか」
絵柄に描かれているのは、十二枚の大きな鱗によって作られた盾のようにみえる。なんだか竜の鱗っぽくて、なんとなく格好良い。
「いいですね。それがあれば、このダンジョンの攻略もより安全に進められるかもしれません」
「おほー」
「……すでに、ちっとも危なげはないんだけどな」
「……これから段々と、深い階層に降りていく度に強い魔獣が出てくるはずです。一応、気を引き締めていきましょう」
とはいえ、クローネもさほど深刻に考えてはいないようだ。
とりあえず念の為に注意喚起を、といった程度で、彼女自身もこのダンジョンが楽なものであることを、薄々認め始めているらしい。
まぁ、あれだけ手応えのない奴らしか現れないのだ。その気持ちはわかる。
「一応出しておくか……『スケイル・シールド』発動!」
手にしたカードの発動を宣言すると、カードは光とともに、一枚の手頃なサイズの盾へと変化した。
格好良くダガーと一緒に構えたいところであるが、バインダーとダガーと一緒だと、ちょっと持つのは難しそうである。
「すまんギン、この盾はお前が持っててくれるか?」
「えっ、イイんですカ……?」
「ああ、ちょっと手が塞がってるからさ。それにそうした方が、お前の持ってる斧も、少しは心強くなるだろ?」
俺がスケイル・シールドを渡してやると、ギンはおそるおそるといった感じで、左手で盾を構えてくれた。
右手に手斧。左手に龍鱗っぽい盾。そして姿は甲冑のようなアリのフォルム……。
甲冑のような頭部の後ろ側から伸びている黒髪もあって、ダークな女戦士といった雰囲気だ。背は低いけど。
「なんか格好いいな」
「あ、アリガトウございマス……」
アリがありが……いや、なんでもない。
さあ、次に進もう。




