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らん豚女神と縛りプレイ  作者: ジェームズ・リッチマン
第二章 無知と未知への恐怖心
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まずは見積もりを出すべし

 バッタ退治は、移動も含めて地味に疲れた。できれば今日は、他の仕事をしたくはない。俺ならまだ動けるのだが、ペトルやクローネが一緒だと、ある程度の制限がかかるのだ。

 しかし既に充分な稼ぎも集まったこともあり、俺達は宿に入って、計画を立てることに決めた。

 ペトルが勝手に実体化させたグラシア・フルートのように、これからカードに纏わる問題も多々生じてくるだろうしな。


「今のヤツシロさんが持っているカードは、11枚……空いているポケットは7枚」

「ああ、そうなるな」

「そして、私のバインダーには2枚のカードがあるので、私の空きポケットも7枚。つまり私達は、残り14個の空きポケットを保有している計算になるのですが……」


 クローネの言葉が曇り、表情も陰る。

 膝の上に広げられたカードバインダーのポケットのほとんどは空欄になっているが、今の俺達にはその空きが、多いようには見えなかった。


 バッタを軽く退治しただけで、大量のカードがこぼれてきたのだ。これからも何かしらの討伐の仕事をする度に、カードがザクザクと出てくるだろう。

 その仕事が多少危なければ、俺もスキルカードを使うかもしれない。手持ちには、使えそうなカードがいくつかある。

 しかし、アイテムカードやモンスターカードなどは、そうもいかない。剣や銃や手榴弾がポンポン出てきてくれるのならともかく、大きな氷や紙の束が大量にあっても、実体化させても運びようがない。


 大量のカード。俺達は、早急にこれらをどうにかする必要があった。

 バインダーに収まりきらないほどの量を抱えてからでは、何もかもが遅いのだ。


「一番は、不要なカードを売ることですね。スキルカードは護身用としての需要がありますし、アイテムカードは嵩張らない良質な資源として重宝されています」

「売る、か」


 まぁ、そうなるだろう。いらないなら手放せばいい。そしてそれが金になるなら、どんどん売り払うべきだ。


「カードを専門に取り扱った雑貨屋というものもあるのですが……基本的に大きな街にしかありません」

「メイルザムには……その口調だと」

「はい、ありません」


 ここよりも大きな街でしかカードショップはないのか。

 ……となると。


「じゃあ、ひとまず旅の目的地として、大きな街に行かなきゃ駄目か」

「はい。ペクタルロトルさんの落とした宝玉に関する情報を集めるためにも、それは必要になってくるでしょうから」

「ぷぴー」

「おいペトル、宿の中でも吹くのはやめなさい」

「ぴぃ」

「ま、まぁ、少しくらいは良いじゃないですか……」


 まず、大きな街を目指す。

 今いる場所は、メイルザムだ。属している国はホルツザムというらしく、首都の名前も同じホルツザムであった。

 そこにいけば、とりあえず色々なカードを売れるだろうし、金は貯まるはずだ。実体化したグラシア・フルートも、ひょっとしたら買ってくれる店もあるかもしれない。旅の次の指針も、見つかるだろう。


「ホルツザムまでは、結構かかりそうかな」

「そうですね……お金も時間も、結構かかるかと。ただ、この街でヤツシロさんが持っているいくつかのカードをやりくりすれば、どうにかなるはずですよ」

「俺の持ってるカードで? それって売るってことだよな」

「ええ。持っているだけなら、このメイルザムで売り払ってしまったほうが良いでしょう?」


 まぁ、クローネの言う通りか。

 売れるカードがあるなら、それに越したことはない。


「例えばヤツシロさんの持っているアイテムカード『アイシング・キューブ』がそうですね。一辺50cmの氷の立方体を出現させるアイテムカードです。高く売れますよ」

「……それだけで?」

「何を言ってるんですか。氷ですよ?」

「あっ、そうか」


 そうだ。この世界冷蔵庫とか無かったんだ。

 あぶねえ、びっくりした。自分の認識の甘さにびっくりした。


「肉や魚を生のまま保存できますし、隣町まで運べます。溶けた水は非常に澄んでいますし、非常に便利なアイテムなんですよ」

「言われてみれば、確かに……」


 一辺50cmの立方体の氷ということは、およそ125リットル分の氷ということになる。水として換算するだけでも、なかなか大した量である。飲水として扱うだけでも、かなり有用だ。

 しかも実体化させるまでは一枚のカードに収まっているというのだから、利便性の広さは計り知れない。


「こちらの『ホワイトペーパー』も、仕入れが安定しないことがあるので、貴重です。買ってもらえないということはないはずですよ」


 次にクローネが指さしたのは、もうそのまんま、A4紙を重ねた紙束の絵柄が描かれているカードであった。

 ただの紙と言ってしまえばそれまでだが、この世界の文明力からしてみれば、A4紙なんてものすごい技術の結晶なのだろう。

 モンスターを倒す必要があるとはいえ、一から紙を作る手間を考えるなら、このカードの存在はかなり大きい。


 なるほど。一見地味なものでも、この世界で大活躍できる道具っていうのは、なかなか多いのか。


「じゃあ、この『ワイルド・スナック』なんてのもメイルザムで売れるのかな?」



□「ワイルドスナック」アイテムカード

・レアリティ☆

・あらゆる生物が食べることのできる固形食料。

 食料は3個出現し、一個あたり一食分に相当する。



 絵柄の見た目は、まんまバランス栄養棒状食品である。それが3つ。

 一個につき一食分だと書いてあるので、メイルザムでなら、40カロンにはなるのだろうか。


「ああ、ヤツシロさん。そのカードは大事に持っておいてください」

「え、ここで売るものじゃないのか」

「はい。大型の肉食獣を使役している人に、とてもいい値段で売れますからね」

「……ああ、なるほど」


 誰が食べても一食分になるワイルド・フード。

 どうやら使い道は、その一食が重い家畜などへの飼料扱いであるらしい。


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