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らん豚女神と縛りプレイ  作者: ジェームズ・リッチマン
第二章 無知と未知への恐怖心
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割れ物注意って貼ってあるのになんてことを

 さすがの俺も、バッタを殴り殺してるだけで大量のカードが集まるとは思わなかった。

 向かい来る透明なガラスに棍棒を振り下ろすだけの簡単なお仕事でこれとは。

 真幸神様のご利益や、恐るべし。


「お疲れさん。まぁ、一杯お茶でも飲んでってくださいな」

「おおー、ありがとうございます」

「ありがたく頂戴します」

「やたー」


 いくつかの水田からバッタを駆逐し終えた俺らは、任務の達成をギルドに報告する前に、水田の持ち主らしき農家の家主に歓迎され、屋外用のガーデンテーブルで一服することになった。

 肉体労働とはいえ、労力以上の見返りがやってる最中にも降り注いできたもんだから、疲れなんてどこかに吹き飛ぶ勢いで駆除作業に没頭していたのだが、それでも厚意は厚意だ。ありがたく受け取っておこう。


「あまーい!」


 農家の人から頂いたお茶は、玄米茶に砂糖を足したような味がする。ペトルには好評のようだ。

 この世界における紅茶のようなものなのだろうか?

 先入観で相容れない2つが喧嘩しているような、日本人の味覚には違和感のある味だけども、慣れれば美味しい。……ような気がする。


「それにしても、大変なことになりましたね」

「だな……」


 さて、一休みとくれば尚更、カードに目を向けないわけにはいかない。

 駆除中にも手に取ったりバインダーに収めたりでじっくりと見てはいたが、これだけ数があると各々を把握するのも一仕事である。


「攻撃用スキルカードが1枚に加えて、『オルタナティブ』も出ましたか……」

「俺このカード好きだわ。増えるし。また『オルタナティブ』出るし」

「ヤツシロさん、普通はそんなに強いカードは出ないんですからね?」


 いやいや、けど実際俺が使うと『オルタナティブ』で『オルタナティブ』が出てきそうな気がするんだよね。実際、一回出てきたし。


「確かに『オルタナティブ』は戦闘中に使うべきスキルカードではありますけど、これによって出てくる二枚のカードの中には、この『エクスチェンジ』のようなスキルだって含まれているんですよ」

「どれどれ……」


 クローネが指さしたバインダーのポケットには、天秤で金貨と羽根の重さを比べている絵柄のスキルカードが入っていた。



■「エクスチェンジ」スキルカード

・レアリティ☆

・一度だけ、手で触れたカロン硬貨を両替できる。細かくすることも、纏めることも可能。



 見てみれば、それはただの両替をするだけのスキルカードであった。

 わざわざカードを使って両替って。しかも一回だけって。


「なあクローネ。両替って、そんなに凄いスキルなのか?」

「んー……『エクスチェンジ』というスキル自体、商神を深く信仰する商人にしか持てないものですからね。凄いといえば、凄いですよ。スキルの腕前によって、まとめ上げる力も変わってきますから、金貨以上にまとめられる人ともなると、かなり珍しいですね」

「……両替も、そう簡単にできることじゃないんだな」

「そういうことです。無条件で高額硬貨に纏められるこのスキルカードは、そういった点では貴重ではありますよ。まあ、もちろんそれに大きな価値があるかといえば、微妙なんですけど」

「うーん……」


 こういう微妙なスキルカードも、『オルタナティブ』で出てくるわけか。

 じゃあなんだ。前みたいなゴブルトが目の前にいるときに発動してみたら、手元に『エクスチェンジ』が二枚とかも起こりえるのか。嫌だなぁそれ。


「……それより私は、こっちのフルートのアイテムカードが気になるんですよ」

「ああ、それな……見ないようにしてたんだけど、向き合わなきゃだめか……」


 バインダーの中に、一際輝くレアカードが入っている。

 その名も、『グラシア・フルート』。

 レアリティ4の、何かすごそうなアイテムカードである。


「私はカードの専門家ではありませんが……こんなカードは、話に聞いたこともありません。そもそも、ガラスホッパーからこんなにレアリティの高いカードが出ることに驚きました」

「でも俺は、このカードが壊れたバッタからポロッと落ちるのを見たぞ。間違いないと思う」

「うーん……」

「見してー」


 町の外のスライム以上に弱い、町の中のバッタから伝説のアイテムが出るなんて、確かに信じがたいことである。

 だがこのフルートの材質は、絵柄を見る限りガラスのようなものである。同じ材質のモンスターであるガラスホッパーからドロップするのは、あながち不自然というわけでもないのだ。


「このアイテム、売ったらいくらになるんだろうなこれ……」

「う、売るんですか? レアリティ4のカードの売却額なんて、それこそ未知数すぎますよ……!」

「あれ? そもそもカードって大体どのくらいの値段で買ってもらえるのかな」

「そこからなんですか!? 言っておきますがヤツシロさん、現時点でもこのカードを合計すると、少なくとも……!」

「えーっと、発動?」


 俺とクローネがぎゃあぎゃあと濁ったお金の話で盛り上がっていると、その傍らで小さな煙がポムンと浮かび上がった。


 直前に聞こえた、“発動”という言葉が、やけに頭の中で反響する。

 俺もクローネも押し黙り、ゆっくりと横に顔を向ける。


「おほーっ! 出てきた!」

「……」


 そこには、今しがたアイテムカードを現物に変換して大はしゃぎするペトルの姿があった。

 手には、水晶のように透明な美しいフルートが握られている。


「……どうしよう」

「……どうしましょう」

「わー、綺麗ー……」


 目を離した隙に、ものすごく扱いの難しそうなアイテムが現物化されたでござる。


『ん? 今の誰の発動? 何が発動したのかしら……あれ? わからない? なんで?』

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