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らん豚女神と縛りプレイ  作者: ジェームズ・リッチマン
第二章 無知と未知への恐怖心
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ネットイナゴは佃煮にならない

 俺は、再びギルドへやってきた。

 ギルド『銀の軍靴』。どうやらこの世界には仕事を斡旋する組織が多くあるようで、メイルザムの範囲内だけでも、他にもいくつかのギルドがあるのだとか。

 しかし、一度訪れ、お金を貰った安心感というものもある。

 俺は下調べもなく、とりあえず昨日と同じギルドを使うことに決めた。

 せっかく会員になる権利を貰ったのだ。たとえ他のギルドと比べて条件が悪いとしても、もう一度くらいは利用しても良いだろう。


「いらっしゃいませ、ヤツシロ様」


 前のように受付の前に立つと、シジさんは俺を覚えていたらしく、名前を呼んで挨拶してくれた。

 特に何も見ないで名前を言えるとか、なかなかの記憶力である。客が少ないというわけでもないだろうに。


 俺は“はぁどうも”といった弱々しい日本人的な受け答えをして、カードを差し出した。


 ギルド『銀の軍靴』の一般会員カード。

 昨日の報酬を受け取る際、一緒に受け取ったものである。


 現代でも通用しそうな硬質なプラスチックのカードは、ギルド名から俺の名前まで、機械で造られたかのようにくっきりと印字されている。

 なんでも、こういったいくつかのカードは、符神ミス・リヴンによって創られているのだとか。

 リヴンさんは、カードだったら何でも管轄内なのかもしれない。


「今日はどのような御用で?」

「また、モンスターを討伐するような仕事があれば、それを斡旋してもらえればと思いまして……」

「もちろんありますとも。難度は、どのようなものを?」

「できれば、前のよりも少し楽な奴で……」


 昨日は時間的にも制限があったので、とりあえず可能であればという感じで仕事を選んでいたが、俺は結構チキンな男である。

 少々ひ弱な狼男でも、そのボスは結構な巨体であった。再びあんな物騒なやつと戦うのは、御免だし、日常のサイクルにそんなものを入れたくはない。

 できれば故郷の村の周囲で延々とスライムだけを狩っていたいものである。


 旅に出ると言ったそばからこれかと思われるかもしれないが、何事にも準備というものはあるのだ。

 旅するにせよ何するにせよ、先立つ物は必須であろう。


 つーかバインダー内に『トリプル・ダーツ』と『アイシング・キューブ』しか入ってないから、下手なことできないんです。

 ダーツ三投したらあとは素手になるとか、ちょっとどうしようもなさすぎる。

 複数の敵がいる状況だと手も足も出ないのは、大きな不安要素だ。


 なので、俺はシジさんから見せてもらった仕事の中から、ひとまず簡単なものを選ぶことにした。

 仕事は農作業の手伝いだとか倉庫整理だとか色々とあったけれど、モンスターを倒さないことにはカードが集まらないので、討伐一択である。


「また討伐のお仕事を?」


 俺が一枚の依頼用紙を見て“これだ”と内心で決めていると、横からクローネが覗きこんできた。


「ああ。……って、クローネ。もしかして今日も?」

「当然です。昨晩のお話を聞いてしまった以上、私は今日だけに限らず、ずっとついていきますよ」

「……うーん、まぁそれは朝も聞いたけど、危ないからなぁ……」

「大丈夫です。私達の旅路には、神がついています」


 いやまぁ確かについてるっちゃついてるけどさ。

 カウンターに顎を乗せてんふんふ言ってる奴が。


「こればかりはヤツシロさんが断ろうとも、無理矢理にでもついていきますからね」


 ……クローネは、ずっとこんな感じである。

 昨日の話を聞くまではずっと親切心だけで俺の無茶や世間知らずに付き合ってくれた彼女だったが、今日からはそこに義務感まで背負い込んでしまったらしい。


 今日あたりに宿代を稼いで“今までお世話になりました”とお別れになるかもしれないなと思っていたのだが、彼女のこの様子を見る限り、そんな別れもかなり先になるだろう。


「……クローネ、俺は本当に、色々な場所をめぐる旅に出ることになると思うんだけど……」

「ご一緒します」

「メイルザムの教会から、ずっと離れることになるけど……」

「宣教と聖地巡拝の修行だと思えば」


 なにこの子逞しい。

 下手したら俺以上に強い意志で宝玉を見つけようとしてるかもしれない。


「お決まりですか?」

「あ、はい」


 そんなやりとりをしている間に、書類から目を離していた。よそ見はいけない。


「これで」

「はい。……“ガラスホッパーの駆除”ですね?」

「そうです、それでお願いします」


 俺が選んだ仕事は、“ガラスホッパー”と呼ばれる魔獣の駆除である。

 ガラスホッパーというのは、名前そのまま、ガラスのようなものでできたバッタである。

 特定の農作物の葉をむしゃむしゃと食べて増えるため、害虫のような扱いなのだろう。

 大きく、割りと重いので、跳ねた時に誤って正面にいると、怪我をすることもあるのだとか。

 後ろ足はトゲトゲで、更に危ないとも、前に読んだ図鑑に載っていた。


「シロー、クロー、これから行くの?」

「ええ、ペクタルロトルさん。……あの、呼び方は、その、本当にこのままでよろしいのでしょうか……」

「おほ……? うん、なんでもいいわよ?」


 ガラス製とはいえ、スキルカードを使うまでもなく、適当な棍棒でぶん殴れば駆除できるだろうか。

 安全を確保するために、三人とも厚着になっておくべきかもしれない。


 俺は二人と会話を聞き流しつつ、これから行う害虫駆除に思いを馳せるのであった。



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