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らん豚女神と縛りプレイ  作者: ジェームズ・リッチマン
第一章 彼の地に堕ちた信仰心
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銅貨百枚で金貨一枚はさすがに無い

「ふむ……なるほど、確かに、依頼された内容は達成されているようですね。まさか、その日の内に終わらせてくるとは思いませんでしたが」


 夕方、俺達はメイルザムに帰ってきて、そのままギルドに立ち寄った。

 理由は当然、報酬を貰うためである。


「あの……」

「ん?」


 受付で“終わりました”と報告したのだが、どうもそれだけでクエストクリアな流れになりそうだったので、いらんことかなと思いつつも、俺は訊くことにした。


「こういうのって、何か証明できるものを用意したり、調査が入ったりするんじゃないんですか?」

「うん? 何をおっしゃいますやら。コロニーが壊されたかどうかは、こちらの書面に出るのですよ」

「え」


 ギルドの受付、どこか老獪な雰囲気のシジさんは、一枚の上質な紙をひらひらと振ってみせた。

 それは俺が受けた任務の依頼書のようなもので、クエストの内容や報酬、例の適当な地図も載っている。


「お?」

「おほ?」


 何が出るのかと思ってじっと見ていると、地図が書き換わっていた。

 ゴブルトのコロニーがあると記されていた地点の印が消え、等高線もない、ほぼ道を記しただけのような、適当な地図になっている。

 ……なんだそれ。ものすごく便利なGPS機能でもついてんのか。


「ともかく、報酬をお受け取りください。報酬の引き渡しはあちらで、この引き換え書を出せば良いですから」

「あ、はい。ありがとうございます」


 金を渡すところはどうやら別口らしい。掌に収まるサイズの簡素な紙を渡された。


「それと、もしも次から当ギルド……『銀の軍靴』を利用されるのであれば、一般会員として登録されるといいでしょう。受注できる依頼が増え、報酬を正規額受け取れます。これは、一般会員登録の許可証です」

「おおっ」


 金券の他に、会員になる権利まで貰えた。

 ありがてえ。もし次に何か受ける際には、3割引されずに済むということか。

 今現在かつかつだから、この許可はとても嬉しいところだ。


「本来、仕事を5つほどこなさなければ許可は出せないのですがね。そこは、そちらの宣教師様に感謝するところです」


 またクローネ様の威光か。足向けて寝れねえな。


「シジさん、あまり適当な事を言わないでください。ヤツシロさんがギルドの役に立ちそうだからと、渡したのでしょう」

「ほっほっほ」


 と思ったら別にそういうわけでもなかったらしい。

 案外、剽軽なおじいさんである。




 受け取った金券は、ちょっと離れた場所の受付で現金に換えてもらった。

 金券を渡すと受付のガタイのいいおっさんが無言で木製のトレイを差し出し、無言で“受け取れ”というような顎の動きを見せたので、俺はそれを恐る恐る受け取った。


 今回のゴブルトのコロニー壊滅作戦で得られた報酬は、金色の貨幣が1枚と、銀色の貨幣が4枚。

 まるで金貨と銀貨でウハウハな気分であるが、もちろん金銀であるはずもないだろう。


「おほー、ぴかぴかー」

「クローネ、これってなんて名前の硬貨なんだ?」

「それは、カロン黄銅貨とカロン白銅貨ですね。黄銅貨が100カロンで、白銅貨が10カロンです」

「なるほど、黄銅と白銅……これで140カロンってわけだ」


 貨幣の種類は、10倍刻みで変わるのだろうか。そして、紙幣はないのだろうか。

 だとしたら小銭がジャラジャラと溜まって、荷物がかさばりそうな気がする……が……そうか、この世界の人は貨幣袋を持ってるから、かさばることは気にしなくてもいいのか。


「ヤツシロさんの場合は、貨幣袋が無いので大変そうですね……」

「……まぁ、多ければ多いで、それはそれで良いさ」


 なに、元々財布を使ってた人間だ。

 便利な貨幣袋なんてあってもなくても、気持ち的には同じである。

 わざわざお願いしてまで手に入れるものではないだろう。


「シロ、私、ご飯食べたいわ!」

「うん? ……そうだな、飯……ああ、でも先に風呂……じゃなくて身体を拭きたいところだけど……」


 符神ミス・リヴンへの願いは叶った。

 金も、まあ雀の涙ではあるが、とりあえず手に入った。

 ならばお次は、金を使って腹を満たし、身体を癒やす番である。

 宿に行けば多分飯は食えるだろうし、水桶くらいなら貰えるだろうか。


「あの、ヤツシロさん、ペトルさん」

「うん?」


 俺が持ち金140カロンの辛さと宿の値段について想像を巡らせていると、クローネが小さく挙手していた。


「お二人がよろしければ、今日もまた教会で泊まられてはいかがでしょうか」

「えっ……そんな、こんな何日も悪くないかな」

「悪くなどありません。対外的なこともあって、何日も、というわけにはいきませんが……」


 クローネの視線が向いた先は、首をかしげるペトル。

 ああ、なるほどな。そりゃまぁ、神様が泊まるなら全く問題ないわな。


「それに、お金が入ったからといって、無理に外で泊まる必要はありませんよ。そんなことを続けていれば、毎日今日のような遠征に赴かねばならなくなってしまいます」

「……それも、そうだな。ちょっと無理してたかも」

「ええ。今日も、こちらの方で泊まられてください」

「えー、あのパンぱさぱさで……もがもが」


 言わせねーよ。ちっとはありがたく思え。


「それに……ヤツシロさんと、話しておかなければならないことも、ありますからね」


 クローネは、ペトルの口を塞ぐ俺を見つめながら、真面目な顔で言う。


「話か、わかった」


 俺はそれに、これといって変な期待をすることもなく、ちょっとした覚悟や決意を抱いて、頷いたのだった。



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