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らん豚女神と縛りプレイ  作者: ジェームズ・リッチマン
第一章 彼の地に堕ちた信仰心
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お手てのシワとシワを略して幸せ

■「破天蛮獣ゴブルトガイダル」モンスターカード

・レアリティ☆☆☆

・知性の低い魔獣指定の獣族。巨大な人狼。

 ゴブルトよりも1m近く大きく、生命力も強い。

 砦を築き、ゴブルトを集めてコロニーを形成する。



 ゴブルトガイダルが倒れ、しばらく経ってから手元に滑りこんできたカードが、これだ。

 今や炎に焼かれて動かなくなったゴブルトガイダルも、俺の手元で鮮やかな色彩のカードとして、棍棒を二刀流しながら雄々しいポーズを取っている。


 これで、モンスターカード三種類、レアリティが1、2、3のカードが1枚ずつ揃ったわけだ。

 あとはこれらを、俺のカードバインダーに収めてしまえば完成である。




「宣教師さんのお困りとあらば、乗せないわけにはいかねえな」


 目的を達成した俺達は森を抜け、街道に出た。

 そこを町に向かって歩いていると、ラッキーなことに早々に馬車が通りかかり、俺達を無償で町まで乗せてくれるのだという。宣教師の力というのは本当に凄い。

 おかげで、馬車の中でゆっくりとバインダーを眺める時間ができたわけだ。

 また、クローネに色々な事を話す時間も、たっぷりと。




「……ふむ」


 揺れる馬車の中で、クローネは壊れた携帯電話と五百円玉を真剣に見比べ、唸った。


「確かに……見たことのない硬貨です。それに、こちらの道具も。どちらも……人の職人によって作られたものではありませんし……『聖別鑑定』」


 クローネが携帯と五百円玉に手を翳すと、手がぼうっと仄かに輝いた。

 聖別鑑定。今のもスキルか。


「……今、これらをスキルで調べてみましたが……どちらにも、神の力は感じられませんでした。神の力で作られたわけではない品物……これほど高い技術の物が、人の手で作られているなんて……信じられません」

「これで、わかってもらえたかな」

「ええ……異世界から来た。何かの冗談かと思っていましたが、ヤツシロさんの装いやこれを見れば、納得できます。信じましょう」


 クローネは力強く頷いてくれた。

 馬も人も霊力も無しに走る車や、空を飛ぶ乗り物、巨大な船など、彼女はそれらほとんどに懐疑的であったが、現物を見て呑み込んでくれたらしい。


「……では、ペトルさん」

「おほ?」

「貴女は異世界に行き、ヤツシロさんの上に落ちて、この世界の地上へとやってきた……それで、間違いないですね?」

「うん、多分!」


 随分と自信に満ちた“多分”だなおい。

 クローネが困ってるぞ。


「転んじゃったら落ちて、こうなっちゃったのよー」

「うーん……要領を得ないというか……」

「ペトルから聞くのはやめた方がいいぞ」

「そう……しましょうかね」

「そんなー」


 俺がこの異世界に来たきっかけは、空から落ちてきたペトルとぶつかったことだ。

 しかし、何故ペトルが落ちてきたのか。何故この世界に俺がきたのか。そこの重要なところは、ペトルにもよくわかっていないらしい。

 突っ込んだ聞き方をしてみても、彼女は何かに躓いただの、ヒューだのピューだの、擬音混じりのよくわからない答えしか返してくれない。

 こういう事は、あまり深く考えない方が良いものである。もうちょっと余裕がある時に聞いておきたいものだ。


「……まぁとにかく、ヤツシロさんが何も知らなかったのは、そんな事情があったからだと。そういうわけだったんですね」

「ああ。なんかごめんな、隠そうとしてたわけじゃなかったんだけど……」

「いえ、良いのです。信じる側にも、一定の度量や理解が必要になる事ですからね。下手に言い広めないヤツシロさんの考え方は、正しいと思います」

「そう言ってくれると嬉しいよ」


 なんだか、ひと通り自分の身の上を話したら楽になった気分である。

 それにクローネがシスターっぽい格好をしているので、どことなく気分は懺悔な感じだ。


「異世界からやってきた……ヤツシロさんは、元の世界に戻りたい、と」

「ああ。最終的には、そう考えてるよ。ただ、今はそれどころじゃなさそうだから、とにかく食う寝るに困らない状態を作ろうと思ってな」

「堅実な判断です。近頃は何かと物騒ですからね、心休まる場所がなければ、計画の立てようもありません」


 本当は、ビクビクオドオドしながら少しずつ安全な人脈を開拓して、騙されないようにやっていこうかと思っていたのだが、こうしてクローネに打ち明けられて良かったと思う。

 考えてみれば、変に不幸を恐れなくても、今の俺には幸運の女神ペトルがいるんだ。普通ならありえないような理不尽イベントなんか起こるはずもない。ビクビクする必要などなかったのである。

 この前道に迷った時、人に尋ねたら3連続で間違った道を教えられた事があったから、ちょっと人間不信な方針で動いていたかもしれない。


「しかし、そういう事情がお有りでしたら、こうしてカードバインダーを強化できたのは本当に良かったですね。ペトルさんを信仰することによって身についた幸運は、カードという神器に非常に合っていると思いますよ」

「ああ。本当に良かったよ」


 俺は今、バインダーを開いており、両隣ではクローネとペトルがそれを見つめていた。

 バインダーにはゴブルトガイダルを倒した事によって得られた2枚のカードを含め、計5枚のカードが収められている。




■「トリプル・ダーツ」スキルカード

・レアリティ☆

・三回攻撃、一投ずつ。手元にダーツを出現させ、相手に投げて攻撃できる。命中すれば強い衝撃を与え、当たりどころが良いほどダーツが強く爆発する。カードオリジナルスキル。


□「アイシング・キューブ」アイテムカード

・レアリティ☆

・ひんやり冷たい氷のブロック。50cm角の氷のキューブを出現させる。


■「鈍蜂シャンメロ」モンスターカード

・レアリティ☆

・知性のない魔獣指定の虫族。巨大な蜂のような姿をしている。

 強靭な翅は自身を魔力なしに浮かせているが、動きは非常に遅い。

 群れで近づかれると厄介だが、一匹毎の対処はあまり難しいものではない。


■「蛮獣ゴブルト」モンスターカード

・レアリティ☆☆

・知性の低い魔獣指定の獣族。二足歩行の大きな犬の姿をしている。

 手に武器を持ち、人間に襲いかかってくる危険な生物。

 広く世界に繁栄し、主に爪神や卑神を信仰する傾向が強い。


■「破天蛮獣ゴブルトガイダル」モンスターカード

・レアリティ☆☆☆

・知性の低い魔獣指定の獣族。巨大な人狼。

 ゴブルトよりも1m近く大きく、生命力も強い。

 砦を築き、ゴブルトを集めてコロニーを形成する。



 スキルカード1枚。

 アイテムカード1枚。

 そして、モンスターカード3枚。


 ゴブルトガイダル1体を倒しただけで2枚のカードが手に入ったことには驚いた。

 倒した相手のレベルによって、カードの出やすさや枚数が変化するのだろうか?

 だとしたら、今までドロップしてきたカードの枚数も考えると、バインダーの9スロットというのはちょっと心許ない。調子が良いと、すぐに埋まってオーバーしそうだ。


「カードは、残り時間が長い状態であれば、専門のお店で取引することもできます。ヤツシロさんがカードを順調に手に入れられるようになれば、生活に困らないどころか、少々贅沢なこともできるかもしれません」

「……カード集め、か。懐かしいな」

「懐かしい?」

「ああいや、こっちの話」


 カードを手に入れて、見せて売買する。

 小さい頃にちょっとだけやったことあるな。もちろんTCGだけど。


「ねえねえシロ、この赤い所に、カード入れてみて!」

「おお、そうだな」


 まだ、ミス・リヴンから言い渡されていた条件はクリアしていない。

 俺はまだ、モンスターカードを指定された赤いスロットに入れていないのだ。


 モンスターカードを中央横列に並べることによって、コレクターレベルは1上がる。

 そうすれば新しいページが増え、バインダーは正式に俺の物となるわけだ。


「じゃあ、入れていくぞ」

「わくわく」

「……なんだかんだで、コレクターレベルが上がる瞬間というものは、初めて目にするかもしれません」


 俺は興味深そうに覗きこむ二人の間で、バインダーのカードを整理し始めた。


 鈍蜂シャンメロを左端へ。

 蛮獣ゴブルトを中央へ。

 破天蛮獣ゴブルトガイダルを……右端へ。


 最後の一枚をはめ込むと、三枚のカードはパッと輝き、光となった。

 三つの光は少しの間だけ俺の目の前でぐるぐると回り、すぐにそれらが次のページへ飛び込むと……そこには、新たなバインダーのページが増えていた。

 見開きの2ページ分のバインダーとして、進化したのである。


「おほー!」

「おめでとうございます、ヤツシロさん」

「ああ……二人共、ありがとう」


 モンスターカードは消滅し、完全に消えてなくなったようだ。

 バインダーに残るは二枚のカードのみ。少々寂しいが、このバインダーが完全に俺の物となったことを思えば、なんとなく愛着が湧くというか、そんな気分になってきた。


「……拝一信仰で他の神様には祈れないけど……カードの神様に感謝するくらいだったら、良いよな」

「良いよー」

「ふふっ」


 聞いたわけじゃないけど、ペトルは許可をくれた。

 ありがとう俺の神様。だったらせっかくだし、ミス・リヴンに拝ませてもらうとしよう。


「……ありがとうございます、ミス・リヴン様」

『うふふ、良いの良いの。カード好きな人間なら、信徒じゃなくたって大歓迎だもん』


 俺がバインダーに向かって合掌すると、どこからか声が響いてきた気がした。


『でもその手の合わせ方、あまり人前でやらないほうが良いわよ』

「え?」

「……ヤツシロさん。あなたは異世界から来たので、私は執拗に咎めるつもりはありませんが……それは闇の信徒達の祈り方ですよ」

「え、あっ、ごめん」


 合掌は駄目なのか。初めて知った。


『……合掌って……あの異教徒、大丈夫なのかしら?』

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