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らん豚女神と縛りプレイ  作者: ジェームズ・リッチマン
第三章 討つは奴への猜疑心
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会員制で成人のみ利用可のカードショップが徒歩1分のところにほしいです


「まぁ、予行演習には丁度良いのかもな……」

「そうですね……」

「……本音を言うと、初日くらい良い宿で休みたかったけどね……」

「むぅむぅ……」


 さて。

 今俺達が何をしているのかというと、寝ている真っ最中である。


 ただし、宿を取って寝たわけではない。

 スラム街の隅で試験運用したリージョンコテージの中で、仲良く川の字で寝ているのだ。


 何故こんなことになったのかというと、簡単だ。

 夜になって、さてそれじゃあとりあえず休むかという事になったのだが、そこで問題になったのが発動しっぱなしのリージョンコテージだったのである。

 再びスラム街まで取りに来るのもあれだし、、万が一……無いとは思うが万が一、盗まれてしまうかもしれないということもある。

 ここで寝るのがどんな感じなのかを把握しておきたいということもあり、俺達はコテージの中で寝具を広げ、そのまま寝ることになったのだ。


 コテージ内は街中と同じように僅かな光輝神の加護があるらしく、闇除けに蝋燭を一本つけておけば問題無いだろうとはクローネの言。

 闇の神には夢の中でだって会いたくはない。リージョンコテージが闇夜でも機能してくれるようで何よりである。


「じゃあそろそろ寝ますかね」

「はい、おやすみなさい。お疲れ様でした」

「ん、おやすみ」


 布たっぷり、綿たっぷりの寝具があるので、寝苦しくはない。

 ただ、リージョンコテージの中は結構狭いので……ペトルを隔てているとはいえ、近くで女の子が寝ている状況というのは結構精神的にクるものがある。

 酒も煙草も女も賭け事も全く縁のない……というか、自分から全力で遠ざけていた俺が、まさか異世界にきてこんな状況になってしまうとは……。

 人生何が起こるかわからないとはいえ、さすがに俺ほどわけのわからない人生を送っている奴もそうはいないだろう。


「むにゃむにゃ……たらばがに……」


 なんとも奇妙な人生だが、このよだれを垂らして幸せそうに眠ってる女神様のおかげで不幸のない一時を過ごせている。

 それは多分、感謝すべきことなのだろう。


 まだ手がかりどころか、己の身の上さえも怪しいところではあるけども。

 さっさと見つかると良いな、お前の宝玉。




「起きてー!」

「ぶっふぉん!?」


 俺はサッカー選手みたいな叫び声を上げて目を覚ました。


「シロ、朝よー!」

「お、おう……」


 どうやら仰向けに寝ている俺に、ペトルが思い切り容赦のないプレスを決めてくれたらしい。

 起こしてくれてありがとうペトル。昨日の寝る間際の決意は今ので忘れたことにするからな。


「って、あれ……?」

「ヤツシロさん、おはようございます。……リージョンコテージが解除されると、こうなるらしいですよ」


 俺はブランケットから起き上がって、周りを見た。

 昨日までいたリージョンコテージの中ではない。なんと俺はスラム街の一角で、寒空の下に寝具を敷いて眠っていたのである。

 既にクローネやコヤン達は寝具を回収し終えており、唯一俺だけがホームレスをしていたかのような格好であった。


 ……なんだこれ、超恥ずかしい。


「朝日と同時に解除されて、リージョンコテージは勝手に元の形に戻ったわ。んで、部屋にいた私達は問答無用で外に叩き出されたわけ」

「うわぁ……なんて強引なチェックアウトなんだ……」


 どうやらリージョンコテージの能力は『プレイジオの欠片』で見たものと全く同じであるようだ。

 朝日が登ると共に解除され、元のミニチュアになると。


 ……いや、便利なんだけどね?

 便利なんだけど、日の出の薄暗くてくっそ寒い時にいきなり放り出されるのって、結構辛いな……。

 あまりにも寝坊がすぎると、森の中で屋根なしのまま放り出されるってわけか。

 ……雨の日とかは最悪だな。いきなり顔面に雨が降り注いで叩き起こされ、寝具はびしょ濡れ。服もびしょ濡れ。


 ……いや、別に邪なことは考えてないよ? うん。ただ辛いなって話をしてるだけだよ俺は。本当に。


「これからは、早起きする癖をつけなければなりませんね」

「うーん……空模様も見えないしね……日の出前に起きるのって難しい気がするわ……」


 うまくいけばこの街にいる間も宿を取らずに寝泊まりできるかも……なんて考えも本の少しだけあったが、さすがに無防備の状態のままスラム街に放置されるというのは過酷である。

 万が一近くに誰かがいたら、何されるかわかったものではない。


 俺達はリージョンコテージの問題点を確認したのであった。




 さて、ともあれ朝である。

 このカルロニアにやってきてようやく最初の朝になったわけだ。体は万全だし、金は潤沢。

 しかしカードが多すぎるせいで、不安が全く無いとは言い切れないのが現状だ。


 俺のメインウエポンがカードである以上、カードバインダーの戦力や、逆に空きなどにも、どちらも余裕が欲しい。

 在庫と空きの両方を欲しがるなんて随分と都合のいい話であるが、実際どちらも欲しいのだから仕方がない。

 スキルカードがなければ戦えないし、逆にバインダーの空きが無ければいざというときカードをそのまま持ち歩かなければならないのだ。

 カードは外に出しっぱなしのまま24時間が経過すると石化してしまう。それはなんとしても回避したい。


 なので、とりあえず俺達はカード屋にて、手持ちの不要なカードを売り払うことにしたのだった。




 訪れた店は、カルロニアのカード専門店『ハードスリーブ』。

 店構えは非常に大きく、外側から見た感じではどうやら二階まであるようだ。ホルツザムで訪れた店『コアスリーブ』もなかなか広い店だったが、ここはその二倍はあるかもしれん。

 カードなんて薄っぺらいものを保管する店なのに、この広さである。

 どうやら品揃えにも期待できそうだ。……多分買わないけどな。


「うお、広いな」

「カルロニアよ? どこも一番に決まってるじゃない」


 コヤンはまるでここがホームであるかのように自慢気である。

 いや、商人にとってはホームのようなものなのだろう。


 店内にはいくつもテーブルが置かれており、バインダーを持った人々がカードの交換に興じている。

 朝早いというのに客の数は多く、俺達が集団で入ってきてもほとんど誰も振り向かないほどであった。


 案の定、店の奥にはいくつかのカウンターがあり、そこには店員らしき人が座っている。店のカードの販売や売却などは、あそこでやる必要があるのだろう。

 今も何人か並んでおり、カードの売却を行っているようだった。


「ヤツシロさん。とりあえずは、このお店の会員登録をしなければ」

「あ、そうだったな。そんなのもあったか……」


 ギルドで会員登録。カード屋で会員登録。

 まぁ簡単な手続きだから問題はないのだが、一見さんというのはどこにいっても面倒なものである。



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[一言] たらばがにでびっくりしました、あなたもティリスの民か しかし頼りない言動の幸運の女神、確かに似ているところがありますね……
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