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らん豚女神と縛りプレイ  作者: ジェームズ・リッチマン
第三章 討つは奴への猜疑心
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観光客狙いの店は大体怪しい


「コヤン、集合場所にはまだ来てないみたいだな」

「そうですね。もう少し時間を潰さなくては」


 教会を出た後、俺達はコヤンと決めた待ち合わせの塔のまでやってきたのだが……そこにはまだコヤンの姿はなかった。

 まぁ、まだ陽も落ちていないし、何時間も経っていない。商売がそう早く終わるはずもないか。


「ねえねえ、シロ」

「ん?」

「コヤン、もう会えないの?」

「いや、まぁもうちょっとすれば来るだろ。その間、何してようかってこと」

「ほへー……」


 相変わらずペトルの頭はどこかぼけーっとしているようである。

 見た目こそ少女と言って差し支えない姿をしているが、精神年齢で言えば間違いなく一桁だろう。


「では、ヤツシロさん。せっかくなので市場を見て回るのはいかがでしょう? 食事はコヤンさんと一緒に済ませた方が良いでしょうし」

「あーそうだな。それもそうだ」


 うむ。せっかく俺達も商売の神様のお膝元にやってきたのだ。

 都合よく手元には大金もある。ここで一度、アイテムを揃えておくのも悪くはないだろう。

 というか、新しい街についたら買い物するのが基本だよな、うん。とりあえず武器屋の一番下の方を確認するところから始めないとな、うん。


「おにく……たべたい……」

「飯はコヤンと合流してからな」

「そんなー……」


 というわけで、些細な反対意見はあったものの、俺達は概ね満場一致で適当にぶらぶらと買い物することになったのだった。




 とはいえ、実際の買い物はRPGのように商品ごとに説明はついていないし、相場も一定ではない。

 中には低品質のものや、まがい物まで存在する。買った値段の半分で売れるという保証もない。

 なので、俺達消費者はこういった露店の並ぶ場所で品定めをする際には、入念に調べ、考える必要があるのだが……。


「粗挽きザルトの実、一袋42カロンだよー! 一番安いよぉー!」

「ユニバス大公国で作られた美味しいチーズだよ! そこらのものとは違う味わいだぁ、今夜の酒と一緒にどうだい!?」

「魔導法国直輸入の素晴らしい法衣ですよ! 法神信仰の方、旅の最中とはいえ身なりにも気を配らねば……!」


 ……いかんせん、俺はこの世界の物の価値を知らなさすぎた。

 現代的な感覚からすれば「おーすげー」となるものはかなり多いのだが、それはこの世界の常識や価値観と合致するわけではない。

 例えばそこにあるザルトの実。あの樹の実は砕くと中から半透明な白くて硬い実が出てくるのだが、それは塩として利用できるのだそうな。

 そのお値段が一袋42カロンである。袋といっても、俺達現代人が創造するビニールに包まれたアレではない。もうちょっと小さい、片手の上に乗るような小袋のタイプである。あの少なさで42グラムなのだ。

 しかもそいつが粗挽きというのだから、隙間もかなり多いことだろう。自分で更に砕く手間を考慮すれば、これはあまり嬉しい買い物ではない。

 だが、それはこの世界においては、塩がそれなりに貴重ということなのだろう。俺は無知だからなんとも言えないが、42カロンが適正価格であるというのは十分に考えられる話である。


 何が高くて、何が安いのか。

 それは俺にはわからない。コヤンかクローネにしか聞けないことであろう。


 しかし、品物をひとつ見るたびにこれはどうだろうあれはどうだろうとクローネを煩わせるのも、正直ちょっとアレだ。

 というわけで、俺は俺なりの方法で、この露店立ち並ぶ通りに立ち向かうことにした。




「んー、これはどうかな……」

「おおう、旅人さんかね? 色々な地方のお守りを集めておるんじゃよ。どれ、じっくり見て行きなさい」


 じっくりみてくれ、ということですので、じっくり見てみようかと思います。


 俺が立ち止まったのは、沢山の異国風のお守りをシートに並べた露店だ。

 人の良さそうな顔をした老人が胡座をかいて店番をしており、聞いてもいないのに色々なお守りの作用やら原産地やらを教えてくれる。


「こっちはエドガン村で作られた竜人民族の紋様入のお守りじゃ。懐かしいのぉ、もう随分前に竜人族の商人から譲ってもらったものなのじゃ」

「ほー」


 江戸村だかエドガン村だか知らないが、ここの世界の大抵の文明や民族はよくわからない。

 が、それでも一応はお守りを手に取って、まじまじと見つめてみる。


 そう……右手の中に、そっと『プレイジオの欠片』を忍ばせておくことも忘れずに。




名前:エドガン族風の木札

系譜:万神ヤォ

意義:エドガン族の紋様を模して作られたお守り。偽物。

現所有:タリヤ・ジュジーロ

前所有:なし



 ……うん? おじいさん?

 ちょっとこれ、なんか偽物って出てるんですが?

 あとさっき譲ってもらったって言ってたけど、前の所有者いないっすよ?


「こっちは木人族アダロが作った精霊祈願の札じゃ。身に付けるだけで霊力が集まると言われておる。こっちはさすがに、友人から譲られたものでな。信じてくれとはいわないが」

「はぁ……」


 アダロね、はいはい。しらんけど、一応見ておくわ。



名前:アダロ製作風の木札

系譜:万神ヤォ

意義:アダロが作ったという付加価値を狙って製作された。偽物。

現所有:タリヤ・ジュジーロ

前所有:なし



 んんん? おいじいさん? こいつもなんか偽物って表示されてるぞおい?

 しかもさっきと製作者の名前が同じような気がするんだけど? 前所有者がいないんだけど?


「あとはとっておきのものが……」

「あーはいはい、よし次行こう次。じいさんどうも、それじゃ」

「……チッ」


 あぶねーあぶねー。

 値段の安さと人当たりの良さにちょっとだけ心が傾いたが、まさかああまで堂々と詐欺してくるとは思わなんだ。

 爺さんのあの様子だと、並んでいたものは全て同じ奴が作ったもので、それをあそこで売ってる……って感じなんだろうなぁ。

 ぱっと見た限りでは荒っぽく彫った木のお守りで、良く言えばあたたかみがあるようにも見えなくはない。

 おみやげに一つ買ってしまおう、なんて浮かれた客をちょこちょこと騙して商売しているのだろう。あの爺さんは。


「……ヤツシロさん、どうでした?」

「あっちは駄目だったな。掘り出し物があるかとも思ったんだが」

「そうですか……いえ、しかし良し悪しの判別が出来るのは素晴らしいことです。その……欠片があれば、ヤツシロさんが買い物で騙されることはありませんからね」

「ああ。プレイジオ様にはちょっと感謝しないとな」


 万神ヤォから受け取った神器、『プレイジオの欠片』。

 これを押し当てれば、その品物の情報を大雑把に見ることができる。こいつさえあれば、俺はどんな怪しい露店でもそれなりに良い買い物をすることができるだろう。

 根気よくやれば、掘り出し物を見つけることも可能かもしれない。


 ……この街に滞在するしばらくの間、お宝探しでもやっていようかな……?

 ひょっとするとものすごい価値のある骨董品を当てちゃったりなんかして、それを売って今よりももっと大金持ちになっちゃったりしてな。


 ……なんかやってることが、カードを転売したりアイテムを転売したり……今更だけど全然勇者じゃねえな、俺。



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