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らん豚女神と縛りプレイ  作者: ジェームズ・リッチマン
第三章 討つは奴への猜疑心
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タイトル変えたのでよろしくお願いします

「大丈夫なの? 結構長い間やってたみたいだけど……」

「はい、コヤンさん。とりあえず重傷の方を中心に治療し、次の宿場で再度ということになりました」

「……まぁ、完治は難しいわよね。そっか、お疲れ様」

「あら。ありがとうございます」


 コヤンの言う通り、クローネの治療は一段落したらしい。

 とはいえ、クローネのスキル『陽だまりの加護』では完治には至らないようである。次の治療は、またクローネの霊力が回復してからになりそうだ。


 ……となると、クローネのスキルでは大怪我までは治せないということだろうか?

 聞いた感じ、かすり傷程度なら治りそうな気はするのだが、どうも大きすぎる怪我には効果が薄いように思えてくる。

 最初からよりかかるつもりはないのだが、そのくらいのものだと考えておくことにしよう。

 いざ怪我をした時、焦りたくはないからな。




 さて、陽も昇ってきたということで、俺達隊商の面々は出発することになった。

 俺達は昨日と同じ最後尾である。他の所は入れ替えや整理などがあったらしいが、こちらは変わらずだ。いざという時のために護ってくれるかもしれない、という隊商としての判断もあったのだろう。

 そんなに期待されても困るのだが、実際のところガシュカダルから貸してもらった……借りパクしてしまった剣があれば、昨日と同じくらいの相手だったら怖くはない。

 むしろこの剣をどういうタイミングで返したらいいのかがわからない。今は一番それが怖かったりする。


「ガシュカダルの剣……早く返すべきだと思います……けど」

「不安だよな」

「そうよねぇ……万が一っていうこともあるしね……」


 馬車の中では、概ねこの剣の話題で持ち切りだった。昨日は皆疲労やら眠気やらでろくに会話さえできなかったので仕方ない。

 そして、皆ガシュカダルの剣をそのままにしておくことには否定的ではあるらしい。やはりここも俺と同じで、今このタイミングで手放すのはちょっと怖いという事なのだろう。


「現在の持ち主……刀装神ガシュカダル……ぁあ、なんという……」

「ええっ、今見えてるの? 私にも見せてっ」


 クローネとコヤンの二人がプレイジオの欠片でマインガーシュを鑑定したり、これからの振る舞いを話し合ったりなど、わりと退屈しない旅路であった。




 次の宿場町にはあっさりと到着した。

 日が暮れる前の、かなり余裕ある時間帯である。トラブルらしいトラブルもなく休憩場所に着くことがこれほど安心できることだとは……異世界に来ても、俺はまだまだ安息できないようである。


 宿場町はさほど大きいものではなく、お馬さん用の草や寝泊まりする場所、そして多少の農場があるばかりの、町と呼ぶには規模の小さなものだった。

 買い物をするにしたって店らしい店も出ていないのでどうしようもない。

 が、俺達は隊商である。入用の物は仲間内だけで揃えることもできるので、道中で必要になったものの補充はわりと簡単にきいた。


 金に困っているというわけでもないのだが、俺が昨晩大活躍したためか、半額以下で買えてしまった。

 腹を空かせたペトル用の果物を買っただけなので、まぁ特別大きな買い物をしたわけではない。

 こういう時に半額されると、なんか、こう……家電量販店の会計時のくじで半額が当たったものの、買ったものが単三電池だけだった時みたいな……あんな気持ちを思い出してしまう。どうでもいいことだったな。すまんな。


 宿場町に着いた直後は、休憩を挟んだクローネが再び怪我人を癒やすために『陽だまりの加護』をかけに回った。

 ついでに俺も現代知識を活かして、怪我人の応急処置などを的確にこなしちゃおうかなーなんて考えていたのであるが、意外とここの人の治療は正しいもので、あまり俺の出番がなくてがっかりした。いや、がっかりしたというか、ちょっと落ち込んだと言うべきだな。


 そしてコヤンの方はというと……。


「ペトルちゃん。霊界ってどんな所?」

「うーん、キラキラしてる?」

「もうちょっとわかりやすく!」

「ぴっかー! って! きらきらーっ! って!」

「んー! 声の大きさじゃないんだよなー!」


 ペトルのお守りをしてくれていた。


 ……何やら神様としてのペトルに色々と聞き出したいことがあるようなのだが、一言で纏めて、無駄な努力である。

 俺もペトルから聞こうとした機会は多くあったが、その尽くがあんな感じであった。


「……ヤツシロ! ちょっと翻訳してぇ!」

「そんなー」


 んなこと言われても無理なもんは無理だ。

 むしろ翻訳できるなら俺の方が頼みたいくらいだ。


「ぐぬぬぅ……神様の世界、商売抜きにしたって、結構興味あるんだけどなぁ……」

「良い所よー」


 ……霊界への道は、まだまだ遠い。




 宿場町の夕時には、宿で安い食事を摂ってすぐに眠った。

 意外と身の回りの支度やら何やらで忙しく、日没までに着いてもあっというまに睡眠時間になってしまうものである。

 それまでに蓄積されていた疲れもあったのだろう。その日は闇の信徒からの襲撃もなく、割合とぐっすりと眠りにつくことができた。


 で、翌日も概ね同じような感じである。

 起きて、馬車に乗って、駄弁って。途中でいちいち馬車を降りてモンスターと戦う旅など遠回りでしかないのだなぁと、なんとなく感じた道中であった。


「それにしても、ヤツシロのカードバインダーって本当に沢山入ってるわよね……そんなにカードが入ってるバインダー、店の人くらいでしか見たことないわよ……」

「ん?」


 俺がカードバインダーの中身を整理していると、コヤンが青い目を細めて苦笑していた。


「まぁ、コレクターレベル3で、ページは3。ポケットは27あるからな。枚数は16枚……今のところ一番潤ってる状態ではあるな」

「おほー」

「確かに、ヤツシロさんのバインダーもかなり充実してきましたね」


 今の俺のバインダーは、闇の信徒達からのドロップもあって非常に潤っている。

 質も量もそれなりだ。闘いになっても安心だし、売り払って金の心配をしなくても良い程度には潤沢である。


「すごい、3までいったんだ。じゃあ4になれば『カードケア』じゃない?」

「ああ、そういやそうだったな。っていうか、コヤンもそういうこと知ってるのな」

「一応、譲渡不可能とはいえカードも神器だしね。多少は知っとかないと商売にならないわ」


 それもそうか。まぁ、カードも立派な商品になるものな。


「あれ。そういえば次のコレクターレベルってどうすりゃいいんだっけか……」

「あ、そうでしたね。前回は色々あって見過ごしていましたが……バインダーの中央列を見てみましょうか」

「おう」


 バインダーのレベルを上げるためには、バインダーの真ん中の横列を特定のモンスターカードで埋める必要がある。

 最初はレアリティ1、2、3のモンスターカードだった。

 その次はレアリティ1が3枚、2が2枚、3が1枚のカードだった。

 いずれもページの中央横3ポケットを埋めるような入れ方が必要になってくる。

 同じ要領でくれば、次は3ページ分のポケット……つまり、合計9枚のモンスターカードが必要になるはずだ。

 現時点のバインダーでギリギリ収まる範囲内といったところだろうか。……意外と、このページ数でも上限が厳しくなってきたかもしれない。


 さて、中央横列のポケットには、今度は何が描いてあるのだろうか?


「……ん?」

「ああ、これは……」


 カードの位置を整理してバインダーの中央横列を見てみると……そこには、これまでとはちょっと違った絵柄が描かれていた。


「……1ページ目は3つとも、猪で……」

「おほー!」

「2ページ目が3つとも、鹿で……」

「おほ」

「3ページ目が3つとも、蝶……だよな?」

「おほ?」


 猪。鹿。蝶。

 デフォルメされてはいるものの、バインダーに描かれていた簡素な赤い絵柄は……確かに、どう見ても猪鹿蝶の3つであった。


「花札かよ」

「難しいことはよくわからないよ」


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