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『プレスマン灸』

作者: 成城速記部
掲載日:2026/05/28

 讃岐の金比羅さんの石段の途中に宿屋さんがありました。石段の途中にありますので、皆が石段屋と呼んでいました。ただし、このくだりは、筋書きにさほど関係ありません。

 この宿屋に、都からのお客がありました。わざわざこの宿に来られたのは、石段の途中にある宿屋で、金比羅灸という、よく効くお灸をすえてくれるといううわさを聞いたからなのですが、石段の途中にある宿屋というのは何十件もあって、そのほとんどが石段屋と呼ばれていましたので、多分、石段屋違いを起こしてしまったのでしょう、宿の主人にもおかみにもお灸に心当たりがありませんでした。もちろん、心得も。

 しかし、この石段屋が、お灸の石段屋ではないことがわかってしまうと、面倒なことになりますので、何とか頑張ってみることにしました。お灸などというものは、医療行為の一種ですから、普通、頑張ってみてはいけないのですが、まあ、こんなところで倫理観を振りかざすのはやめましょう。

 お客にいろいろ尋ねてみると、金比羅灸というのは、足の裏にすえるものだということがわかりましたので、お客をうつ伏せに寝かせて、灸をすえたふりをして、プレスマンのとがったところで思い切り刺すと、お客は、熱いのと痛いのを勘違いして満足してくれ、しかも、足裏のつぼを刺激したことで、お客が期待した効果も上がり、金比羅灸の評判は、いやが上にも高まりました。



教訓:石段屋のプレスマン灸と名乗ってみたが、どの石段屋なのか区別されず、新規顧客は獲得できなかったという。

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