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鉄棒

ドアを閉める。


君の歌声は、そこで途切れた。


スマホにはまだ少し熱が残っていて、

左の裏地に入れる。

心臓に近い位置だった。


時刻は 00:23。

少し立ってから、

スーツケースを持ち上げて、階段を下りた。


00:25。

冷たい風が、少しだけ酔いを散らした。


00:28。

スーツケースを提げたまま歩く。

音を立てるわけにはいかない。

“あれら” は、この近くにいる。


00:36。

角で止まって、煙草を一本吸う。

スマホに触れて、

一度、強く握った。


00:49。

この道だ。

“あれら” は、ここを通らない。


01:05。

こんなに遠かったか。


01:16。

まだ着かない。

少し眠い。

酔いも、まだ残っている。


01:35。

もういいだろうか。

立ち止まって、また煙草を吸う。

この時間なら、

君の配信はもう終わっているはずだった。


01:38。

リュックから上着を引っぱり出して着る。

太腿を何度か強く叩いた。


01:48。

火の光が見えた。

たぶん、あそこだ。


01:55。

少し離れたところから、しばらく見た。

やはり、あそこだと思った。


行ってみるべきだと、

思った。


「止まれ!」


ひとりの鉄棍が立ち上がった。

続けてふたりも得物を持って、

こっちへ向かってくる。


夜。

火の明かり。

三つの人影。


僕は一歩、下がった。

物干し竿を、

胸の前に少しだけかざす。


先頭の鉄棍はすぐに止まり、

鉄棍の先で僕を指した。


「てめえ」


僕は慌てて両手を体の横に広げた。

敵意はない、と見せるために。


鉄棍は近づいてきた。

先がまっすぐ、僕の鼻先まで伸びてくる。

上から下まで僕を眺めて、言った。


「向こうへ行きたいんだろ」


僕はうなずいた。


「六千円」


「兄貴、俺、そんなに……」


「六千円!」


もうふたりも、

左右から僕を囲んでいた。


僕は目を細めて、

鉄棍を見る。

逆光のせいで、

ただ黒かった。


手を伸ばす。

裏地の内側に突っ込んで、

半箱の煙草と札の束をつかみ出した。


向こうが見きる前に、

鉄棍はそれをひとまとめに奪っていった。


「おい……っ」


最後まで言えなかった。


誰かがいきなり僕の手首をねじり上げた。

そのすぐあと、

腹に鈍い音が入る。


僕は腰を折った。

手首を押さえるその力は、少しも緩まない。

僕に残っていたかもしれない動きを、

そのまま全部ねじ伏せるみたいに。


首を無理にひねって顔を上げる。

目の前には、

まだあの黒い鉄棍がある。


鉄棍は僕の金を数えた。

煙草といっしょにポケットへしまう。


顔が、少し動いた気がした。

火のあるほうへ、

わずかに頭を振る。


手首を押さえていた力が一瞬ゆるんで、

次には同じ強さで、

今度は後ろ首をつかまれた。


「行くぞ、兄弟分」


僕はそのまま引き立てられて、

ドラム缶の火が照らす範囲まで連れて行かれた。


そこでやっと、

少しだけよく見えた。


鉄網の下。

雑多なものが、いくつもばらばらに積まれている。

それぞれに、持ち主がいるらしかった。

そのそばで、

持ち主たちは縮こまっていた。


三人か五人ほどの影が、

あの輪になった火を囲んでいる。


それ以外には、

僕のよろめく足音だけが残っているようだった。


僕は空いたところに押し込まれた。


「夜が明けたら出る」


鉄棍はそう言って、

またドラム缶の火のほうへ戻っていった。


隣で外套をかぶっていた男が、

騒ぎで少し目を覚ましたらしかった。

横目で僕を一度見て、

また目を閉じた。


何かしたかった。


立ち上がることかもしれない。

足を伸ばすことかもしれない。

痛む腹を押さえることかもしれない。


けれど結局、僕はただ、

スーツケースと寝具を背もたれにして、

どうにか体を置ける形をつくっただけだった。


片手でリュックを抱える。

もう片方の手で、胸の中のスマホを握る。


何人かが鉄棍のところへ集まっていくのが見えた。

風の音がした。

あれらの笑い声も聞こえた。


まだ、夜は明けていなかった。






中国語原文


第二章:鐵棍


我關上門

你的歌聲失去了連結


手機還有些餘溫

放進左邊的內襯

貼著心臟的位置


時間是00:23

我站了一會,提起行李箱

走下樓道


00:25,冷風吹散了些許酒意


00:28,一路提著行李箱

不敢讓它發出聲響

「它們」就在附近


00:36,轉角位置

停下抽根菸

摸到手機

攥了一下


00:49,是這條路

「它們」不會經過


01:05,怎麼這麼遠


01:16,還沒到

我有點困

酒意還在


01:35,可以了吧

停下抽根菸

這個時間

你應該下播了


01:38,從背包裡翻扯出外套穿上

用力錘了幾下大腿


01:48,有火光

應該就是那裡


01:55,離遠看了一陣

應該就是那裡


我想

我該上前看看


「站著!」


一個人執起鐵棍站起來

兩個人隨後拿起傢伙

一起迎了上來


黑夜,火光,三道人影


我退了一步

把晾衣桿往身前擋了一下


當前那人立即停下

用鐵棍指著我

「你他媽!」


我趕緊把雙手張到身體兩側

表示我沒有敵意


他靠過來

鐵棍徑直刺到我鼻尖前

上下看了我幾眼

「想過去,是吧?」


我點點頭


「三百」


「大哥,我身上...」


「三百!」


另外兩個人也圍在我兩側


我眯著眼

看著鐵棍

他背著光

漆黑


我伸手

掏進內襯

抓出那半盒菸和一疊現金


還沒看清

就被鐵棍一手全搶了過去


「喂...額」

我話沒說出來

有人猛地擰住我手腕

緊接著

腹部傳來一聲悶響


我蜷著腰

手上那股力道一點沒鬆

擰住了我所有有可能的動作


我別著脖子抬頭

臉前依然是漆黑的鐵棍


他點了點我的錢

連同我的菸一起塞進了兜裡


他臉上像是動了一下

往火光的方向側了側頭


擰住我的手鬆開了一下

隨後

又是相同的力度

掐在我後脖子上

「走吧,兄弟」


我被架著走進火桶照亮的範圍

我開始看得更清楚


鐵網下

一堆堆錯落的雜物

好像各自有屬於它們的主人

蜷縮在旁


三五個人影圍著那一圈火光


除此以外

好像只剩下我幾聲踉蹌的腳步


我被按在一個空位裡

「天亮就走」

那人說完

就走回火桶邊


一旁披著大衣的人

好像被吵醒了

斜眼看了我一下

又閉上了


我想做點什麼

也許是站起身

也許是伸展一下雙腳

也許是想揉一下疼痛的腹部


但我最後

只是把行李箱和被鋪枕在身後

調整出一個能待著的位置


一手抱著背包

一手握著懷裡的手機


我看到幾個人往鐵棍聚攏

我聽到風聲

我聽到他們的笑聲


天還沒亮

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