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第3次 中二病大戦 〜無能力の俺が物理法則(マジレス)で世界最強の設定(妄想)を解体する〜  作者: ぱすた屋さん


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第2話 論理の裏側と、忍び寄る「最速」

 


「痛っ……! ちょ、マジで痛い! 消毒液染みてる!」


「動かないでください! 凍傷からの裂傷なんですから、ちゃんと処置しないと悪化しますよ!」


 荒野の岩陰で、俺は右手に応急処置を受けていた。

 処置をしてくれているのは、俺と共に最前線へ転送されてしまった不憫なオペレーター、如月きさらぎさんだ。


 彼女は手際よく俺の右手に包帯を巻きながら、大きくため息をついた。

 俺はその様子を横目で見つつ、痛みを堪えて必死にクールな表情を作る。


「フッ……この程度の傷、かつて『深淵の竜』と戦った時に比べれば、そよ風のようなものだ」


(やばい、痛すぎて涙出そう。でもここで泣いたら、さっきまでの超カッコいい俺の設定が台無しになる!)


 内心では泣き叫びながらも、俺はあくまで「余裕のある強キャラ」を演じ続けた。

 如月さんはそんな俺の痛いセリフを完全にスルーし、手元の携帯端末を操作し始める。


「それにしても、信じられません。さっきのトウキョウ帝国代表の能力、完全にシステムダウンしていましたよね」


 大会運営AIのログを解析した彼女の顔に、驚きの色が浮かぶ。

 どうやら、俺が引き起こした現象の正体に気づいたらしい。


「神宮寺さんの攻撃は、ただの物理打撃でした。でも、その直前にあなたが提示した『絶対零度における低温脆性』という物理法則の指摘」


 如月さんは端末の画面を俺に見せながら、興奮気味に言葉を続ける。


「相手の『無敵の装甲』という妄想設定と、あなたが突きつけた『物理的な現実』。AIはその二つの間で論理エラーを起こし、処理落ちしたんですね!」


「……事象の解体ロジカル・ブレイク。俺はただ、世界のバグを修正したまでだ」


「いや、バグらせたのはあなたですよ。でも、これなら……最弱のサイチグントでも、知略で勝ち残れるかもしれません!」


 如月さんの目が希望に輝いた、その瞬間だった。


 バリバリバリッ!!


 鼓膜を破るような轟音と共に、俺たちのすぐ横の岩が粉々に吹き飛んだ。

 土煙が舞い上がり、焦げ臭いオゾンの匂いが辺りに充満する。


「きゃあっ!?」


「チッ……! 結界を張れ、如月!」


 俺はとっさに彼女を庇い、土煙の先を睨みつけた。

 結界なんてものは当然使えないが、こういう時は雰囲気とセリフ選びが大事だ。


「ハッ、結界だと? そんなもんが俺のスピードに追いつくとでも思ってんのか?」


 土煙が晴れた先に立っていたのは、全身から青白い放電を散らす金髪の男だった。

 余裕の笑みを浮かべ、手には稲妻を纏ったナイフを弄んでいる。


「俺はオオサカ・キョウト連合の代表。能力は『神速の雷光』だ。さっきの配信、見させてもらったぜ」


 男の全身の放電がさらに激しさを増す。

 ただ立っているだけで、周囲の空気がビリビリと震えていた。


「口先の屁理屈で勝つとは、面白い真似をする。だがな、俺のスピードの前では、言葉を発する暇すらねえぜ!」


 次の瞬間、男の姿がフッと消えた。


「なっ……!?」


 視認すらできなかった。

 気づいた時には、俺の腹部に強烈な衝撃が走り、体が宙に浮いていた。


「ガハッ……!」


「神宮寺さん!!」


 如月さんの悲鳴が遠く聞こえる。

 地面に叩きつけられた俺を追撃するように、男の姿が再び閃光となって迫る。


 俺は必死に体を捻って回避しようとするが、かすりもしない。

 むしろ、相手の動きの余波だけで、俺の服が切り裂かれ、皮膚に浅い傷が無数に刻まれていく。


「ハハハハ! どうした屁理屈野郎! その自慢の口を動かしてみろよ!」


 圧倒的な暴力。物理的な速度の暴力だ。

 いくら論理の矛盾を突こうにも、相手の動きが速すぎて言葉を挟む余地がない。


「だ、駄目です! あの人、音速を超えてます! 神宮寺さん、逃げて!」


 如月さんが端末を見ながら絶望的な声を上げる。

 音速を超えるスピード。それはまさに、男の『神速』という痛い設定が完璧に具現化された結果だった。


 俺は血を吐きながらも、ゆっくりと立ち上がった。

 全身はボロボロで、立っているのがやっとの状態だ。


 だが、俺の口元は自然と歪んでいた。


(マジかよ、音速移動とかロマンの塊じゃん! ……でも、ちょっと設定盛りすぎじゃないか?)


「フッ……クックック……」


「あ? 何笑ってやがる。脳天までイカれたか?」


 男が訝しげに眉をひそめ、ナイフを構え直す。

 俺は口元から流れる血を乱暴に拭い去り、男を真っ直ぐに見据えた。


「速すぎるのも、考えものだな……」


 その言葉に込められた論理の刃に、男はまだ気づいていなかった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


本作を応援してくださる方は、ぜひブックマークや下の評価【☆☆☆☆☆】をいただけますと幸いです。


次回お楽しみに。

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