エピローグ②
大会が終わって、
数日後。
トレ高クレーンゲーム部の部室に、
見慣れない機械が運び込まれた。
最新型のクレーンゲーム筐体。
「……でかっ」
豚田が、
率直な感想を漏らす。
「最新機種ですわ」
「大会優勝校、特別仕様だそうで」
舞子が、
誇らしげに言った。
その横で、
段ボール箱がいくつも開けられる。
中身は、
白磁のティーカップ。
「人数分、ちゃんとありますわよ」
その言葉で、
自然と全員が集まった。
⸻
部室の片隅。
即席のティータイム。
「部室で紅茶って、なんか不思議だな」
沙希が笑う。
「優勝校らしい」
凛は淡々とカップを口に運ぶ。
「ぶひ……これ、高そう……」
豚田は落とさないように両手持ちだ。
「主将、ちゃんと管理よろしく」
舞子が針千を見る。
「はいはい……」
針千は苦笑いしながらも、
どこか嬉しそうだった。
⸻
優勝記念撮影のあと。
晴谷が山口に声をかけた。
「なぁ」
「今度、お前の店行っていいか?」
山口は、
一瞬きょとんとする。
「……あぁ」
晴谷は、
ニヤリと笑った。
「久々に景品枯らしちゃうか!」
「お前は初期位置戻さないからな?」
そう言いながらも、
山口の口元は緩んでいた。
「じゃあ」
聞見が、
楽しそうに言う。
「わたしも、プレイしちゃおっかなぁ〜?」
三人は、
並んで歩いていった。
⸻
後日。
月刊クレーンゲーム。
表紙を飾ったのは、
トレ高クレーンゲーム部。
学校では、
一気に話題になった。
「見た?」
「すごくない?」
「同じ学校だよね?」
すきは、
少し照れながら、
それを聞いていた。
⸻
夢幻高校との合同練習。
筐体の前で、
豚田が真剣な顔をしている。
「運命先輩……」
「ここ、どうしたらいいぶひ?」
「そこはね——」
運命が、
自然な声で答える。
「重心が少し前だから」
「焦らず、ここ」
「……なるほど!」
豚田の目が、
きらきらと輝いた。
「運命たん……すごい……」
「渡さない」
即座に、
神咲が割って入る。
「運命先輩は、うちのです」
「ぶひ!?」
その様子を、
すきと沙希が並んで見ていた。
「なんかさ」
沙希が言う。
「平和だね」
「うん」
すきは頷いた。
少し離れた場所では、
凛と舞子が、
寸胴姫歌と談笑している。
技の話。
失敗談。
これからの話。
——もう、
切り捨てられる誰もいなかった。
⸻
さらに離れた場所。
「で」
針千が、
享楽に詰め寄る。
「なんで扉、捨てたんすか!?」
「おれ、欲しかったんすけど!」
「そんないいものじゃねぇよ。」
享楽は、
面倒くさそうに返す。
「必要なくなっただけだ」
「それが一番ズルいっすよ!」
享楽は、
笑った。
⸻
合同練習が終わり、
すきは家に帰った。
その日は、
珍しく父も早く帰ってきていた。
三人で、
久しぶりの夕食。
「そういえば」
母が言う。
「来週、すき誕生日でしょ?」
「あ、うん」
「せっかくだから」
「お父さんに欲しいもの、言っといたら?」
父が、
箸を置く。
「そうだな」
「すき、何が欲しい?」
すきは、
少し考える。
「……んー」
そして、
顔を上げた。
「あっ」
「来週の日曜日さ」
「三人で」
「ゲームセンター、行こう?」
一瞬、
両親は顔を見合わせた。
「ゲームセンター?」
「昔はよく行ったけど……」
「最近、全然行ってなかったな」
父は、
少し考えてから、
にっと笑った。
「よし」
「じゃあ、お父さんが」
「すきの欲しいやつ、全部取ってやる!」
「ちょっと」
母が笑う。
「使いすぎないでよ?」
「うん!」
すきは、
大きく頷いた。
「楽しみにしてる!」
⸻
その夜。
すきは、
布団に入って、
天井を見上げた。
今日も、
世界は続いている。
明日も、
きっと。
——それでいい。
第二章高校編~完~




