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くれげの世界  作者: ぐろ
第二章 高校編
90/205

第89話 きっと笑ってる

会場中央。



優勝トロフィー。

賞状。

最新型クレーンゲーム。


「——それでは」


司会の声が、

少し弾む。


「優勝チーム、県立トレトレ高校」


拍手が起こる。



……が。


誰も、

一歩目を踏み出さなかった。


視線が、

自然と交差する。


「……誰、行く?」


豚田が、

小声で言った。


沙希が、

首を傾げる。


「普通、主将じゃない?」


その言葉に。


晴谷が、

針千の背中を軽く叩いた。


「行ってこい」


「……え?」


針千が、

目を丸くする。


「おれ?」

「マネージャーですけど?」


晴谷は、

悪びれもせず言った。


「正式に部活登録したとき」

「主将の名前、書いたのはお前だ」


一拍。


「……は?」



「うん!」


すきが、

即答した。


「針千なら、ぴったりだよ!」


沙希が、

肩をすくめる。


「主将兼マネージャーだね」

「忙しそう」


「肩書きが増えたぶひ……」


豚田が、

どこか誇らしげに笑う。


凛は、

腕を組んだまま。


「合理的」

「統率と調整を同一人物が担うのは、効率がいい」


「それでしたら」


舞子が、

上品に微笑む。


「部費で新しいティーカップを」

「人数分、よろしくお願いしますわ」


「……もう好きにしてくれ」


針千は、

観念したように前に出た。



会長が、

トロフィーを手に取る。


「優勝」

「県立トレトレ高校」


針千は、

両手で受け取った。


少しだけ、

手が震えた。


賞状も、

同時に渡される。


拍手。


——確かに、

ここに立っている。



「続いて」

「大会MVPの発表です」


ざわめき。


「銀泉舞子」


一瞬、

時が止まった。


「……わたくし?」


舞子が、

目を見開く。


会長が、

ゆっくりと頷いた。


「決勝・次鋒戦」

「判断、技術、覚悟」

「いずれも印象的だった」


舞子は、

小さく息を吸い。


そして、

深く一礼した。



「それでは」

「優勝チーム、記念撮影です」


聞見が、

やたら大きなカメラを構える。


「皆さん、いいですかぁ〜?」


すきが、

一歩前に出た。


「……ちょっと、待ってください」


そして、

脇を見た。


「山口さん」


呼ばれた名に、

山口が一瞬、固まる。


「……え?」

「いや、俺は……」


晴谷が、

横から口を挟む。


「聞見に撮られるの、何年ぶりだ?」

「まったく」

「自分は部外者だって顔して」


「いや、だから——」


その時。


会長が、

無言で聞見のカメラを奪った。


「……え?」

「撮影許可、ありますよ?」


「違う」


会長は、

短く言う。


「お前も入れ」


「ふぁ?」


聞見が、

素っ頓狂な声を出す。



並ぶ。


すき。

沙希。

凛。

舞子。

豚田。

針千。

晴谷。


そして、

少し遅れて、

山口。聞見。


トレ高チームと、

かつての同級生三人。


「よし、いくぞ〜」


会長の声。


シャッター。



——それが。


優勝の形だった。

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