第88話 勝者と敗者
勝者、トレ高。
その宣告が、会場に響いた瞬間。
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「うおおおおお!!」
誰かが叫んだ。
次の瞬間、理性は吹き飛んだ。
すきが抱き上げられ、
沙希が泣き笑いで飛びつき、
凛が無言のまま、強く拳を握る。
そして——
「……あれ?」
床に倒れていた豚田が、
ゆっくりと目を開けた。
「……勝った? え、勝ったぶひ!?」
次の瞬間、
全員に押し潰される。
「ちょ、ちょっと待っ——」
「先鋒復活おめでとー!」
「お前、ここで起きるのズルいだろ!」
笑い声と涙と、
ぐちゃぐちゃの抱擁。
それが、
トレ高の優勝だった。
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少し離れた場所。
夢幻高校の控え席。
運命は、
照れくさそうに頭を掻いた。
「……ごめん」
「負けちゃった」
その瞬間。
「せんぱぁぁぁい!!」
神咲が、
泣きながら抱きついた。
「運命先輩が負けるところ……」
「初めて見ました……!」
肩が、震えている。
運命は、
少し驚いてから、
そっと頭に手を置いた。
「……ごめんね」
神咲だけじゃない。
松下蘭も。
寸胴姫歌も。
声を殺して、
泣いていた。
——よっぽど、怖かったのだろう。
勝てなければ。
失敗すれば。
切り捨てられるんじゃないか。
そんな空気の中で、
ここまで戦ってきたのだから。
「……みんな」
運命は、
一度、深く息を吸う。
「今まで、ごめんね」
顔を上げて、
はっきりと言った。
「明日からはさ」
「失敗しても、取れなくても」
「楽しもう」
一瞬の沈黙。
次の瞬間、
堰を切ったように、
泣き声が溢れた。
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少し離れた場所。
享楽が、
壁にもたれて立っていた。
「……ずっと、傍にいてくれて」
「ありがとう」
運命は、
まっすぐに言った。
享楽は、
少しだけ目を逸らす。
「なぁ」
「最後、なんで未来潰し使わなかったんだ?」
その問いに。
運命は、
少し考えてから、
苦笑した。
「だって……」
「ズルしたらさ」
「織田くんに怒られちゃうでしょ」
一瞬。
享楽は、
吹き出した。
「……それだけかよ」
「それだけ」
二人は、
同時に笑った。
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その時。
「……あの」
声がした。
振り返ると、
すきが立っていた。
夢幻高校の控え席の前。
「柚木さん」
一歩、
神咲が前に出る。
「自分の運命先輩に、なんですか」
少し、
警戒した声。
すきは、
慌てて首を振った。
「ち、違います」
「その……」
一拍。
「今度」
「クレーンゲーム、教えてください」
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その言葉に。
運命の中で、
時間が、重なった。
「運命ちゃん、ここ教えて」
「運命先輩、これはどうすればいいですか?」
——あぁ。
あの頃の声。
頼られて、
一緒に笑っていた時間。
砂漠に行く前の、
世界。
運命は、
一瞬だけ目を伏せて。
そして、
笑った。
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「うん、もちろん!」
「一緒に、練習しよう!」
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すきは、
少しだけ目を丸くしてから。
小さく、
頷いた。
その光景を、
享楽が見ていた。
神咲も、
松下も、
寸胴も。
誰も、
切り捨てられなかった。
誰も、
置いていかれなかった。




