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くれげの世界  作者: ぐろ
第二章 高校編
88/205

第87話 ずっと傍にいる


箱は、宙にあった。


落ちるか、

耐えるか。


誰にも分からない、

一瞬の静止。



運命は、

未来潰しに触れていた。


指先の感触は、

もう何度も知っている。


使えば、

この箱は落ちない。


使えば、

勝てる。



砂漠が、脳裏に浮かぶ。


何もない。

誰もいない。

足跡だけが、風に消えていく。


それでも歩いた。

歩き続けた。


一人で。



(……もし)


(ここで、見えたら)


享楽が、

自分から離れる未来が。


そのために、

残していた。


最後の一回。



「……」


運命の視界の端で、

享楽が、前に出た。



「運命!」


叫びだった。


技術でも、

理屈でもない。



「使え!!」


一拍。


享楽は、

拳を握りしめる。


「……それでも」


声が、震えない。


「おれは、離れない」



運命の中で、

何かが、崩れた。


——あぁ。


——そうか。


⸻私はまもられていたんだ。


織田くんのことで無理して明るくしてた時も。

部活でみんなから運命はいらないと言われたのも。

部員全員を敵に回したときも。

残った神咲や新一年生を従えた、つもりになってたときも。


ずっと

享楽が傍で

護ってくれてたんだ。




運命は、

笑った。


ほんの一瞬。


中学の頃。

三人で、

何も考えずに笑っていた、

あの顔で。



未来潰しから、

指を離す。


(……もう、いい)


(失わない)



5手目。


運命は、

力を使わない。


砂漠を歩いてきた、

自分自身で、

最後の操作をする。



同時に。


すきの宇宙で、

星が、一直線に並ぶ。


迷いはない。


選択は、

もう済んでいる。



アームが、

静かに、箱を離す。



ゴトン。



落ちた。



一拍の静寂。


そして。



歓声が、

会場を揺らした。



勝者、トレ高

昏華すき。



すきは、

すぐには喜ばなかった。


ただ、

運命を見る。


そして、

小さく、息を吐いた。


(……すごいな)


(この人は)


(境地に一人で辿り着いたんだ。)



運命は、

何も言わない。


ただ、

前を向いて歩き出す。


その背中を、

享楽が、追いかけた。


並ぶ。


離れない。



決勝戦。


勝敗は、

5手で決まった。


だが、

残ったものは、

勝ち負けじゃない。



選ばれなかった未来と、

それでも選んだ現在。




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