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くれげの世界  作者: ぐろ
第一章 中学編
8/81

第8話 4人目


 派手な音が、少しだけ遠のいた。


 成宮金(なりみやきん)――

 まだ名前も知らない青年は、

 取れた景品を両手で持って、嬉しそうに眺めている。


「……すみません」


 すきが、思い切って声をかけた。


「え?」


 青年は、ぱっと顔を上げた。


「なに?」


 警戒は、ない。

 純粋に、聞き返しているだけの声。


「さっきから見てたんですけど……」


 沙希が続く。


「そのプレイ、

 ちょっと……すごいね」


「え、そう?」


 青年は、心底不思議そうに首を傾げた。


「だって、

 取れるまでやるだけだし」


 すきと沙希が、同時に凛を見る。


 ――やっぱり理論外。


 凛は、冷静に質問した。


「普段も、

 そのやり方なんですか」


「うん」


 即答。


「難しいこと分かんないし」


「……クレーンゲームは」


 凛が言葉を選ぶ。


「配置と確率のゲームです」


「そっか!」


 青年は、素直に頷いた。


「でも、

 取れると嬉しいよね」


 三人、言葉に詰まる。


 その後ろで。


「坊っちゃま」


 スーツ姿の年配男性が、

 静かに一歩前に出た。


「そろそろお時間を――」


「えー、まだやりたい」


「……」


 もう一人の執事が、

 困ったように視線を逸らす。


「坊っちゃま、

 本日の――」


「大丈夫!」


 青年は、にこっと笑った。


「まだいっぱいあるから」


 その瞬間。


 凛の視線が、

 青年の服装、

 執事の立ち位置、

 そして支払いの仕方を、一気に結ぶ。


「……成宮」


 ぽつり。


 青年が、きょとんとする。


「え、なんで分かったの?」


 沙希が、目を見開いた。


「え?」


 すきも、息を呑む。


 凛は、静かに続ける。


「成宮財閥の……」


 一拍。


「次男、ですよね」


 青年は、少し考えてから頷いた。


「たぶん、そう」


 三人、揃って言葉を失った。


「……坊っちゃま」


 執事が、軽く頭を下げる。


「名乗る必要は――」


「あ、そっか」


 青年は、悪びれもせず笑う。


「でも、

 別に隠してないよ?」


 沙希が、乾いた笑いを漏らす。


「……なるほどね」


「で」


 青年が、三人を見る。


「さっきから何の話?」


 すきは、胸の奥のざわつきを抑えて、

 一歩前に出た。


「クレーンゲームの大会が、あるんです」


 青年の目が、輝いた。


「大会?」


「五人一組で」


 沙希が言う。


「一人一手」


「へえ!」


 青年は、即座に食いついた。


「楽しそう!」


 凛が、確認する。


「勝つ気は、ありますか」


「あるよ」


 迷いのない答え。


「だって、

 取れたほうが嬉しいじゃん」


 三人は、顔を見合わせた。


 理屈じゃない。

 才能でもない。


 でも。


 この人は、

 “取りたい”って気持ちだけは、

 一度もブレていない。


「……一緒に」


 沙希が言う。


「出ない?」


 青年は、目を丸くする。


「いいの?」


「正直言うと」


 沙希は、笑う。


「めっちゃ引いた」


「……はい」


 すきも、正直に頷く。


「効率も、最悪です」


「……」


 青年は、一瞬だけ黙ったあと、

 にこっと笑った。


「でも、

 楽しいでしょ?」


 三人、否定できなかった。


「名前」


 凛が言う。


「改めて」


「金」


 青年は、胸を張る。


「成宮 金」


 執事二人が、

 静かに一歩下がった。


「坊っちゃま」


「ご武運を」


 こうして。


 四人目が、加わった。


 配置を作る人間。

 判断する人間。

 理論を組む人間。


 そして。


 金で殴って、

 それでも笑う人間。


 ――あと一人。


 この歪んだチームを、

 完成させる存在は、

 まだ、どこかで“震え”を待っている。

キャラ紹介

成宮 なりみや・きん

•髪:少し長めで整っている(金で整えてる)

•表情:自信ありそうで、実は不安顔

•服装:ブランド物・高そう・でもズレてる

•口癖:「金で解決できるよね?」「これ、いくら?」

•技術ゼロ、知識も薄い

•でも誰よりも現実的な選択をする凡人

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