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くれげの世界  作者: ぐろ
第二章 高校編
73/205

第72話 命

決勝会場は、異様な熱気に包まれていた。


その一角だけ、

明らかに色が違う。


ピンク。

とにかくピンク。


法被、ハチマキ、ペンライト。

統一された文字。


——萌えたん。


「も・え・た・ん♪

 も・え・た・ん♪」


規則正しいコールが、

波のように広がっていく。


豚田は、控え席の前で固まった。


「……え?」


視線を向けると、

そこには明らかに“組織化された集団”。


一番前に立つ男が、

拳を高く掲げる。


「萌えたんオフィシャル会員No.1!!

 親衛隊・隊長豚田武!!」


ビシッと敬礼。


「隊長!!

 本日のご武運、全力で祈願いたします!!」


その瞬間。


豚田の表情が、変わった。


背筋が伸び、

目が据わる。


——凛々しい。


「……みんな、来てくれたのかブヒ……」


観客席から、

一段と大きな歓声。


「も・え・た・ん♪

 も・え・た・ん♪」


針千が、耐えきれずに横からツッコむ。


「いや、あのピンクい軍団、

 誰を応援してんだよ!?」


「萌えたん萌えたんじゃ、

 豚田なのか景品なのかわかんねぇだろ!」


一拍置いて。


「あと、

 急に肩書き増えて凛々しくなるな!!」


だが豚田は、

もう聞いていなかった。


カバンから、

一枚の布を取り出す。


白地に、赤文字。


——萌えたん命。


キュッと、

額に巻く。


「……よし」


豚田は、深く息を吸った。


「今日は……

 いつも以上に、気合い入れるブヒ」


コールが、さらに大きくなる。


「も・え・た・ん♪

 も・え・た・ん♪」



対戦台の向こう。


夢幻高校は、静かだった。

円陣も、声出しもない。

それぞれが、決められた位置に立っているだけ。


それでも、空気は重い。


一年・松下 (まつしたらん)


最前列に立つ、小柄な一年生。

表情は柔らかく、どこかぼんやりしている。

だが、その視線だけは、台から一度も逸れない。



一年・寸胴 姫歌(ずんどうひめか)


松下の隣に立つ少女は、対照的だった。

腕を組み、堂々と胸を張る。


強気。

凛と舞子を凝視する。


二年・神咲 (かんざきめぐみ)


その二人を、少し離れた位置から見下ろすように立つ二年生。

表情は読めない。


口を空けぼけ〜っとしている。


三年・享楽 (きょうらくでん)


その後ろに立つ三年生は、驚くほど静かだった。


目立たない。

感情も、表情も、表に出さない。


けれど、

誰よりも近くで、誰よりも深く、

“誰かの内側”を見ている目をしていた。


三年・柚木 運命(ゆずきさだめ)


最後尾。

チームの中心であり、核。


柚木運命は、何も語らない。

だが、そこに立っているだけでわかる。


――この人が、夢幻の核だ。


勝ち筋も、負け筋も、

すでに一度は見た上で、

それでもここに立つことを選んでいる。






アナウンスが響く。


「決勝戦・先鋒!!

 トレ高・豚田武!!

 夢幻高校・松下蘭!!」


「——開始!!」


豚田は、

ボタンに手を伸ばす。


胸の奥で、

確かに感じていた。


今日は、

一人じゃない。


この声援も、

この熱も、

この“神”も。


全部背負って、

ここに立っている。


「いくブヒ……!」


萌えたん親衛隊のコールが、

会場を揺らした。


「も・え・た・ん♪

 も・え・た・ん♪」


——その直後。


運命の用意した“未来”が、

静かに、動き出していた

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