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くれげの世界  作者: ぐろ
第一章 中学編
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第7話 金殴り

キャラ紹介

雨瑠 あめる・りん

•髪:黒髪ストレート、肩〜背中あたり

•表情:基本無表情。考えてる時は眉が少し寄る

•服装:シンプル・落ち着いた色(白黒グレー)

•口癖:「理論上は」「確率的に考えると」

•元フィギュアスケート選手

•理屈で世界を理解しようとする理論派

「違う音」


 夜のゲームセンターは、

 人が減るほど癖が出る。


 設定が渋い店。

 回転率だけを求める店。

 景品の“落とし方”が露骨な店。


 三人は、いくつかの店をはしごしていた。


「……ねえ」


 歩きながら、沙希が言う。


「大会さ」


「初手は、

 私で決まりだよね」


 すきは、即座に頷いた。


「はい」


「配置作り、

 沙希さん以外考えられません」


「でしょ」


 沙希は、当然みたいに笑う。


 凛も、否定しなかった。


「初手の安定度が、

 そのままチームの期待値になる」


「初手は沙希で確定」


「問題は、その後」


「四手目、五手目を

 誰に任せるか」


「つまり――」


 沙希が、にやっとする。


「一緒に“作れる人”ね」


 そのとき。


 一台の筐体の前で、

 人の流れが不自然に切れた。


 誰かのプレイが終わる。


 アームが戻る。


 景品が、

 “ちょうどいい位置”で止まった。


 次の瞬間。


 すっと、一人の男が入る。


 確認は一瞬。

 迷いがない。


 ボタンを押す。


 ――落ちた。


「……早」


 沙希が、思わず言った。


「ハイエナの仁」


 凛が、低く言う。


「配置が整った台しか触らない」


「でも、

 決める手は一級品」


 三人は、しばらく仁の背中を見ていた。


「……でもさ」


 沙希が、ぽつりと言う。


「この人、

 最初から一緒にやる気ないよね」


「配置、

 他人任せです」


 すきが続ける。


「勝てるけど、

 チームじゃない」


 凛の結論は短かった。


 声をかけない。

 選ばない。


 仁は、

 人混みに溶けて消えた。


「……次」


 沙希が言った。


 別の島に入った瞬間、

 “音”が変わった。


 ボタン音。


 やけに、速い。


「……え」


 すきが、思わず立ち止まる。


 一台の筐体。


 派手な服の青年が、

 間もなくボタンを連打していた。


 確認、ゼロ。

 調整、ゼロ。


 ただ、押す。


「ちょ、待って」


 沙希が、思わず止めに入る。


「それ、

 見るとこじゃ――」


 ガコン。


 アームが空を切る。


 ガコン。


 また、空。


 札が、吸い込まれていく。


「……」


 すきは、無意識に耳を塞ぎかけて、

 はっとして手を下ろした。


 ――声は、聞こえない。


 それでも。


 このプレイは、

 “うるさい”。


「……これは」


 凛が、言葉を探す。


「理論外、というより」


 一拍。


「.........金殴り」


「……ドン引きなんだけど」


 沙希が、正直に言った。


「え、

 今の何も考えてなくない?」


「考えてないよ!」


 青年は、笑顔で即答した。


「取れるまでやるだけだし!」


 三人、完全に引いた。


 その背後。


 少し距離を空けて、

 スーツ姿の年配男性が二人、

 同時に一歩前に出る。


「坊っちゃま、

 ペースを――」


「本日のご予算は

 十分に――」


「大丈夫!」


 青年は、振り返らない。


 ガコン。


 ――偶然。


 本当に、ただの偶然で、

 景品が落ちた。


「――取れた!」


 青年が振り返る。


 満面の笑み。


 心から、嬉しそうな顔。


「やったー!」


 その瞬間。


 三人の“引き”が、

 ほんの少しだけ揺らいだ。


「……」


「……」


「……」


「……ズルい笑顔」


 沙希が、ぼそっと言う。


 すきは、胸の奥が、

 少しだけ温かくなるのを感じていた。


 凛は、

 減った金額と、落ちた景品と、

 その笑顔を、同時に見ていた。


「……効率は最悪」


 一拍。


「でも」


「欲は、本物」


 三人の視線が、揃う。


「……一回」


 沙希が言う。


「話しかけてみよっか」


 四人目。


 まだ名前も知らない。


 でも。


 ――理屈で選ばなかった“正解”より、

 理屈を壊すこの異物のほうが、

 チームに必要な気がした

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