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くれげの世界  作者: ぐろ
第二章 高校編
66/81

第65話 計算通り

先鋒戦の余韻が残る中、

次鋒、豚田は台の前に立った。


いつもより、少しだけ大きく身体を揺らす。


「……いける」


自分に言い聞かせるように、

リズムを刻む。”萌えたんモード”


アームが降りる。



トントンットン


一手目。

悪くない。


トンットトン


二手目。

箱は、確かに前に出た。


会場が、わずかに沸く。


だが――

三手目で、流れが止まった。


角度。

判断。

ほんの、わずかな差。


真心高校の選手は、同じ配置から

迷いなく、詰めてくる。


「次鋒戦、真心高校の勝利!」


豚田は、台から目を離さなかった。


「……まだ、足りないっすねブヒ」


悔しさよりも、

現実を受け止める声だった。


続く中堅。


舞子は、指先を見つめ、

静かに深呼吸する。


「――参りますわ」


一手目。

押す。


二手目。

回す。


刺し回し。


箱が、回転した。


「おお……!」


歓声が上がる。


だが、落ちない。


橋の上で、

止まる。


舞子は、唇を噛む。


もう一度。


だが、わずかに届かない。


「中堅戦、真心高校の勝利!」


舞子は、静かに頭を下げた。


「……これでは、まだダブルアクセルですわね」


凛が、横で頷く。


「でも、確実に前には進んでる」


トレ高1勝 真心高2勝


会場の空気が、張り詰める。


副将、雨瑠凛。


晴谷が、小さく息を吐く。


「本当なら、ここで決めるつもりだったんだがなぁ」


凛は、振り返らずに言った。


「計算通りにいきませんね」


それは、責めでも皮肉でもなかった。


ただの、事実。


凛は、台の前に立つ。


視線は、配置だけを見ている。


アームが降りる。


一手。

二手。


正確。


だが――

三手目で、凛はわずかに“外した”。


(……上へ)


扉が、開く。


階段。


理論の、その先。


凛は、迷わず駆け上がる。


箱が、跳ねる。


重心が、越えた。


落下音。


「副将戦、トレ高 雨瑠の勝利!」


歓声の中、

凛は一度だけ、振り返る。


ベンチに向かって、

小さく頷いた。


スコアは、決した。


残るは――大将戦。


その瞬間。


真心進が、ゆっくりと立ち上がった。


視線は、一直線に沙希へ向く。


「……計算通りだ」


沙希は、返事をしなかった。


進は、続ける。


「君は、やっぱりすごい」


その言葉に、

沙希の指先が、わずかに強張る。


「昔からさ」


進は、どこか懐かしむように言う。


「君は、いつも“正しい側”にいた」


「誰も切り捨てず、

誰も選ばず、

真ん中で、バランスを取ってた」


沙希は、目を伏せた。


進は、それを肯定と受け取ったように、

言葉を重ねる。


「だから安心できた」


「負けない場所に、

ずっと立ってる人だって」


その瞬間。


沙希の胸の奥で、

何かが、軋んだ。


違う。


でも――

言葉にできない。


進は、微笑む。


「大将戦だね」


「君が勝てば、終わりだ」


沙希は、ようやく顔を上げた。


目が合う。


その視線は、

昔と同じだった。


理解したつもりで、

閉じ込める目。


沙希は、初めて気づく。


――逃げ場が、ない。


自分が負けたら、終わる。


繋げない。

託せない。


ここは、

勝敗が、自分ひとりに集まる場所。


胸が、わずかに震えた。


(……怖い)


その感情を、

沙希は、初めて否定しなかった。


ベンチの端で、

針千が、その震えを見ていた。


(……あれ?)


(沙希が、震えてる?)


あの、才能の塊みたいな沙希が。


理由は、まだわからない。


けれど――

胸の奥に、小さな違和感が残った。


準決勝は、

最後の局面へ進む。


線は、

まだ引かれたままだ

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