第49話 高校生大会開幕
ホールの照明が、ゆっくりと落ちた。
ざわついていた空気が、自然と静まっていく。
中央ステージに、一人の人物が立つ。
背筋の伸びた、年配の男。
胸元の協会バッジが、わずかに光った。
「――クレーンゲーム協会会長、
九条 恒一です」
低く、よく通る声。
「本日は」
会長は、会場を一望してから続けた。
「高校生クレーンゲーム大会に、ご参加いただきありがとうございます」
拍手が起きる。
だが、騒がしくはならない。
「近年」
会長は言葉を選ぶように、ゆっくり話した。
「クレーンゲームは、ただの娯楽ではなくなりました」
スクリーンに、映像が映し出される。
SNS、配信、専門誌。
大会の切り抜き動画。
「技術は共有され」
「研究は進み」
「競技人口は、確実に増えています」
沙希が、小さく呟く。
「……ほんとに、競技になってる」
「そして」
会長は、一拍置いた。
「もう一つ、無視できない変化があります」
会場の空気が、わずかに張る。
「――“扉”を持つ若者が、増えてきたことです」
ざわり。
言葉に反応して、視線が走る。
すきの胸が、きゅっと縮んだ。
「もちろん」
会長は、すぐに続ける。
「それは、超能力や特別な力という意味ではありません」
「感覚」
「集中」
「再現性」
「直感」
「呼び方は、様々です」
「しかし」
視線が、真っ直ぐになる。
「それらを“持つ”者と、“持たない”者が存在することも、事実です」
凛は、静かに目を閉じた。
舞子は、指先を握る。
豚田は、息を整える。
「この大会は」
会長は、はっきりと言った。
「才能を測る場ではありません」
「選択を、見る場です」
「扉の前で」
「進むのか」
「立ち止まるのか」
「そして」
「誰と、立つのか」
その言葉に、針千が一瞬、視線を落とした。
「――以上を踏まえ」
会長は、司会に軽く合図を送る。
「大会ルールの説明に移ります」
⸻
明るい声が、ホールに響いた。
『それでは、大会ルールをご説明します!』
大型モニターに、図が映る。
『本大会は――
5人1チーム制!』
『1戦ごとに代表者を一人選出し、
1対1のクレーンゲーム勝負を行います!』
『勝利したチームに、1ポイント!』
『最短3戦先取で、勝敗が決定します!』
沙希が、指を折る。
「大将戦まで、行かないこともあるってことか」
『なお』
司会は続ける。
『出場順は、毎戦自由!
同じ選手が連続出場することも可能です!』
「……えぐ」
針千が呟く。
「戦略ゲーだ」
『そして』
司会の声が、少しだけ溜めを作る。
『優勝高校には――』
画面が切り替わる。
『優勝カップ!
表彰状!』
拍手。
『さらに!』
一瞬、間。
『――最新型クレーンゲーム本体を、1台贈呈します!』
一拍遅れて。
「「「えええ!?」」」
会場が、一気に湧いた。
「本体!?」
「学校に!?」
「やばくない?」
豚田が、目を丸くする。
「……部室に、置ける……?」
「練習台が増えれば」
舞子が、珍しく早口になる。
「練習効率倍ですわ。」
沙希は、にやっと笑った。
「勝つ理由、増えたね」
すきは、ざわめきの中で静かに思う。
(……逃げられない)
これは、遊びじゃない。
アナウンスが、締めに入る。
『以上のルールをもって、
本大会を開催いたします!』
『選手の皆さん――
全力で、クレーンゲームを楽しんでください!』
拍手が、ホールを満たす。
その中で。
すきは、そっと胸に手を当てた。
――聞こえない。
でも。
(……ここからは、開くかどうかを選ぶ)
扉は、もう逃げない。
大会は、始まった
キャラ紹介
九条 恒一
クレーンゲーム協会 会長
・年齢:年配(60代前後)
・体格:背筋が異様に伸びている
・雰囲気:静か・威圧感はないが、場を支配する
・服装:黒を基調としたスーツ(装飾なし)
・胸元:協会バッジのみ(権威の象徴)
・声:低く、よく通る
・表情:感情が読めない
・口調:簡潔・断定的
・思想:
クレーンゲームは娯楽ではなく競技
重要なのは結果ではなく「どの手を選んだか」
・特徴:
才能・年齢・立場で人を判断しない
”境地”に至っているので”扉持ち”は認識可能
・備考:元々ゲームセンターの店長だったが
クレーンゲームへの探究心により
クレーンゲーム協会を立ち上げる。




