第43話 合宿
38.39.40話投稿前に
41.42.43話投稿してました。大変失礼しました┏○ペコッ
話数のズレも修正しました。
今後ないように気をつけます。
部室の空気は、まだ張りつめていた。
対戦校一覧の公開。
知らない名前。
見覚えのある強豪校。
誰も口を開かない。
「……まあ」
その沈黙を、晴谷が割った。
「一回、場所変えようか」
「え?」
針千が反応する。
「合宿」
全員が、固まった。
「合宿!?」
「ちょっと待ってください」
針千が即座に立ち上がる。
「いきなり!?てか部費、足りますか?」
「そこ?」
「そこです!」
晴谷は笑った。
「安心して」
「安心できる要素ありました?」
「安いとこ、知ってる」
それだけで、全員が不安になる。
⸻
「……ブヒ」
豚田が、小さく声を漏らす。
「豚田?」
沙希が振り向く。
「合宿って……」
言葉を選ぶ。
「泊まり、ですよね」
「当然」
凛が言う。
「……ぶひ」
もう一度。
「いや」
針千が手を振る。
「部費の話中にブヒが紛らわしい」
「え?」
「賛成なのか不安なのか分からない!」
「……不安です」
「正直でよろしい!」
⸻
「でもさ」
沙希が言う。
「悪くないと思う」
「理由は?」
凛が聞く。
「逃げ場、なくなるから」
舞子が、静かに頷いた。
「……理にかなっていますわ」
「舞子まで!?」
「勝負は、環境で決まる部分も大きいですもの」
すきは、少し遅れて口を開いた。
「……集中、できそう」
「ほら」
晴谷が指を鳴らす。
「全会一致」
「強引すぎません?」
⸻
針千は、ノートを取り出した。
「交通費」
「宿泊費」
「食費」
ぶつぶつ言いながら計算する。
「……ギリギリです」
「ギリ?」
沙希が笑う。
「いけるじゃん」
「その“いける”が一番怖い!」
⸻
「決まりだね」
晴谷は、あっさり言った。
「目的は三つ」
指を立てる。
「一、基礎の底上げ」
「二、役割の再確認」
「三……」
一瞬、間を置く。
「自分が、どこで折れるかを知る」
空気が、静まる。
「折れないために、ですか?」
凛が聞く。
「いや」
晴谷は笑った。
「折れる前提」
舞子が、目を細める。
「……お嫌いですわね」
「何が?」
「綺麗な勝ち方」
「昔から」
⸻
豚田が、意を決したように手を挙げる。
「あの……」
「はい」
「俺」
深呼吸。
「足、引っ張ります」
「もう言うな!」
針千が即ツッコむ。
「それ前提にされると、こっちが困る!」
「……ブヒ」
「今のも紛らわしい!」
部室に、久しぶりの笑いが起きた。
すきは、その様子を見て、胸の奥が少しだけ軽くなる。
(……逃げない)
場所が変わっても。
空気が変わっても。
それだけは、同じだ。
⸻
晴谷は、窓の外を見て言った。
「じゃあ、準備しよっか」
「どこ行くんです?」
針千が聞く。
「静かで」
「安くて」
一拍置いて。
「……クレーンゲームが、置いてるところ」
強化合宿は、
こうして決まった。
それが、
逃げ場を潰す選択だとも知らずに。




