表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
くれげの世界  作者: ぐろ
第一章 中学編
35/91

エピローグ


大会会場は、もう片付けが始まっていた。


派手だった照明は落とされ、

さっきまでの熱狂が嘘のように、床には静けさだけが残っている。


昏華チームの五人は、

控室のソファに並んで座っていた。


誰も、すぐには口を開かない。


勝った。

確かに勝った。


でも――

それをどう言葉にすればいいのか、まだわからなかった。



「……優勝、かぁ」


最初に声を出したのは、成宮だった。


「実感ないな」


「あるある」

沙希が笑う。


「気づいたら終わってた感じ」


でもその笑顔は、いつもの軽さとは少し違う。

どこか、落ち着いている。


凛は、膝の上で手を組みながら言った。


「説明できない勝ち方だった」


少し間を置いて、続ける。


「でも……

 間違ってないとも、思える」


詠は、背もたれに深くもたれて、天井を見上げていた。


「最高だった」


短く、はっきりと。


「負けた顔、見れたし。

 仲間と勝つ脳汁も、悪くなかった」



すきは、少し離れた場所で、

大会のトロフィーを見つめていた。


(……終わったんだ)


そう思うと、胸の奥が少しだけ、空いた。


フィギュアの声は、もう聞こえない。

未来も、見えない。


でも、不安はなかった。


沙希が、すきの隣に来る。


「ね、すき」


「うん?」


「決勝の最後さ……

 怖くなかった?」


すきは、少し考えてから首を振る。


「ううん」


「怖いより……

 選べた、って感じだった」


沙希は、驚いたように目を瞬かせてから、笑った。


「そっか」



モニター室。


会長は、誰もいない席で、ひとりコーヒーを飲んでいた。


「二つの扉……」


独り言のように呟く。


「開いたのは、ほんの一瞬」

「だが、確かに――選んだ」


すきの映像を思い返す。


「未来を見る力」

「声を聞く力」


「どちらも、まだ未完成だ」


会長は、ふっと笑った。


「……だからこそ、面白い」



帰り道。


夜風が、少し冷たい。


五人は並んで歩いていた。


特別な会話はない。

でも、不思議と沈黙が心地いい。


すきは、ポケットの中で、指先を動かす。


(これから、どうなるんだろ)


そのとき。


ほんの一瞬だけ。


(……たのしみだね)


声とも、気配ともつかない感覚。


すきは、立ち止まりそうになるのをこらえて、前を向く。


(うん)


答えは、声に出さない。


未来は、ひとつじゃない。


でも。


仲間と一緒に選ぶ未来なら、悪くない。


そう思えた。



物語は、ここで一区切り。


だが――

扉の向こうには、まだ続きがある。


中学生編~完~

第一章〈中学編〉の大会は、

勝敗を描くためのものではありませんでした。


それぞれの試合で描かれたのは、

「選択」の意味がどう変わっていくか、です。


才能がなくても選べること。

正しさを手放す勇気。

安定を捨てる覚悟。

任せる強さ。

そして――誰と未来を選ぶか。



明日以降、高校生編を投稿していきます!

まだ書きたいキャラ、エピソードがあります。

なろう小説にはじめて投稿しましたが、これからも暖かい目で見守っていただければと思います。

まずは、第一章中学編ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ