エピローグ
大会会場は、もう片付けが始まっていた。
派手だった照明は落とされ、
さっきまでの熱狂が嘘のように、床には静けさだけが残っている。
昏華チームの五人は、
控室のソファに並んで座っていた。
誰も、すぐには口を開かない。
勝った。
確かに勝った。
でも――
それをどう言葉にすればいいのか、まだわからなかった。
⸻
「……優勝、かぁ」
最初に声を出したのは、成宮だった。
「実感ないな」
「あるある」
沙希が笑う。
「気づいたら終わってた感じ」
でもその笑顔は、いつもの軽さとは少し違う。
どこか、落ち着いている。
凛は、膝の上で手を組みながら言った。
「説明できない勝ち方だった」
少し間を置いて、続ける。
「でも……
間違ってないとも、思える」
詠は、背もたれに深くもたれて、天井を見上げていた。
「最高だった」
短く、はっきりと。
「負けた顔、見れたし。
仲間と勝つ脳汁も、悪くなかった」
⸻
すきは、少し離れた場所で、
大会のトロフィーを見つめていた。
(……終わったんだ)
そう思うと、胸の奥が少しだけ、空いた。
フィギュアの声は、もう聞こえない。
未来も、見えない。
でも、不安はなかった。
沙希が、すきの隣に来る。
「ね、すき」
「うん?」
「決勝の最後さ……
怖くなかった?」
すきは、少し考えてから首を振る。
「ううん」
「怖いより……
選べた、って感じだった」
沙希は、驚いたように目を瞬かせてから、笑った。
「そっか」
⸻
モニター室。
会長は、誰もいない席で、ひとりコーヒーを飲んでいた。
「二つの扉……」
独り言のように呟く。
「開いたのは、ほんの一瞬」
「だが、確かに――選んだ」
すきの映像を思い返す。
「未来を見る力」
「声を聞く力」
「どちらも、まだ未完成だ」
会長は、ふっと笑った。
「……だからこそ、面白い」
⸻
帰り道。
夜風が、少し冷たい。
五人は並んで歩いていた。
特別な会話はない。
でも、不思議と沈黙が心地いい。
すきは、ポケットの中で、指先を動かす。
(これから、どうなるんだろ)
そのとき。
ほんの一瞬だけ。
(……たのしみだね)
声とも、気配ともつかない感覚。
すきは、立ち止まりそうになるのをこらえて、前を向く。
(うん)
答えは、声に出さない。
未来は、ひとつじゃない。
でも。
仲間と一緒に選ぶ未来なら、悪くない。
そう思えた。
⸻
物語は、ここで一区切り。
だが――
扉の向こうには、まだ続きがある。
中学生編~完~
第一章〈中学編〉の大会は、
勝敗を描くためのものではありませんでした。
それぞれの試合で描かれたのは、
「選択」の意味がどう変わっていくか、です。
才能がなくても選べること。
正しさを手放す勇気。
安定を捨てる覚悟。
任せる強さ。
そして――誰と未来を選ぶか。
明日以降、高校生編を投稿していきます!
まだ書きたいキャラ、エピソードがあります。
なろう小説にはじめて投稿しましたが、これからも暖かい目で見守っていただければと思います。
まずは、第一章中学編ありがとうございました!




