第28話 準決勝突破
控室へ戻る通路は、少し騒がしかった。
観客の声。
スタッフの足音。
勝者を迎える、ざわめき。
その中で、マセガキ軍団が立ち止まっていた。
誰も俯いてはいない。
けれど、悔しさは隠せていなかった。
詠が近づくと、一人が口を開く。
「……負けたよ」
素直な声だった。
「理論も、動画も、全部正しかった。
でも……あんたのプレイには、追いつけなかった」
詠は、きょとんとする。
「そ?」
別の子が、苦笑しながら続けた。
「正直さ。
あんたの取り方、動画にしたらバズると思う」
一瞬の間。
「……でも」
視線を逸らす。
「俺たちには、真似できない」
詠は、その言葉を聞いて、少しだけ考えた。
そして、にっと笑う。
「うん」
「だって、私のだから」
その一言で、マセガキ軍団は何も言えなくなった。
悔しい。
でも、不思議と納得していた。
自分らしさで、勝てなかったのだと。
⸻
控室。
扉が閉まった瞬間、空気が一変した。
「っしゃあああ!!」
成宮が叫ぶ。
「勝った!!
準決勝突破だ!!」
沙希が、詠に飛びつく。
「ちょっと詠!
あれ何!?
心臓止まるかと思ったんだけど!」
凛は、深く息を吐いてから言った。
「……怖かったけど」
小さく笑う。
「最高に、チームの勝ち方だった」
すきは、詠をじっと見ていた。
「……楽しかった?」
詠は、少し目を見開いてから。
「うん」
即答だった。
「めちゃくちゃ脳汁出た」
拳を軽く握る。
「一人でやるのも好きだけどさ」
仲間を見る。
「みんなで勝つの、もっとヤバいね」
その言葉に、全員が笑った。
⸻
会場モニターが切り替わる。
次の対戦カードが表示された。
決勝戦
昏華チーム vs 物理学者チーム
「……物理学者?」
成宮が首を傾げる。
沙希が、苦笑する。
「なんか、急に世界変わってない?」
凛は、画面を凝視していた。
「理論の塊だね。
今までで一番、理屈が通る相手」
すきは、胸の奥がざわついた。
(……来る)
理由は、わからない。
でも。
今までとは違う“違和感”が、確かにあった。
協会長が、モニター越しに静かに言う。
「ここからが、本番だ」
視線は、すきに向いている。
「彼女が、
“見る側”でいられるのは――
もう、ここまでかもしれんな」
すきは、何も言わなかった。
ただ、自分の胸に手を当てる。
まだ、扉は開いていない。
けれど。
確かに、何かが――叩いている。
決勝戦。
すきは、覚醒するのか。
その答えは、
次の舞台で示される。




