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くれげの世界  作者: ぐろ
24/62

24話 準決勝前夜

準決勝前夜。


会場のゲームセンターは、すでに営業を終えていた。

照明を落としたフロアには、クレーンゲームの無数のアームだけが、静かに吊られている。


今日ここで、三回戦までが終わった。

それなのに、すきは落ち着かなかった。


「……なんかさ」


宿泊施設へ戻る前、立ち止まってすきは言う。


「この先、普通じゃない気がする」


沙希が振り向く。

「準決勝なんだから、そりゃそうでしょ?」


軽く笑ってみせる。

でも、その笑顔はいつもより長く保てなかった。


凛は腕を組んだまま、静かに言う。


「相手はマセガキ軍団。

 合理性、再現性、失敗率の低さ。

 “正しい手”だけを積み上げてきたチーム」


成宮が頭をかく。


「要するに、負けない動きしかしないってことだな」


その言葉に、沙希がモニター越しに控室の映像を見て吹き出した。


「ねえ、あの子たち……

 なんか昔の成宮っぽくない?」


「え!?」


「親のお金で、無茶しない感じ。

 悪く言ってないよ?」


成宮は一瞬言葉に詰まり、苦笑した。


「……まあ、否定はできねえな」


すきは、そのやり取りを聞きながら、別の違和感に囚われていた。


マセガキ軍団。

揃った服、揃った態度、揃った余裕。


なのに――

胸が、ざわつく。


(違う……)


理由は分からない。

ただ、何かが噛み合わない。


ふと視線をずらす。


詠がいた。


壁にもたれ、スマホも触らず、天井を眺めている。

勝負前夜とは思えないほど、楽しそうだった。


目が合うと、詠はにやっと笑う。


「なに?」


「……別に」


そう答えた瞬間、すきの違和感が一段、強くなる。


(この人……明日、何かする)


根拠はない。

でも、確信に近かった。



同じ頃。

モニタールーム。


協会長は、一人でデータを見返していた。


「才能とは、“扉”だ」


誰に聞かせるでもなく、低く呟く。


「人は皆、無数の才能を持っているわけではない。

 ほとんどは、一つだけだ」


簡略化された図が浮かぶ。


「扉を持つ者は、扉の前に立つだけで

才能の片鱗を得る

 そして開けた瞬間から“強み”を得る」


天秤沙希の映像。


「彼女の扉は

 どんな状態の物でも、バランスを保ちてる

 重心と衝撃を直感で理解する才能

3回戦で扉を開けたな」


雨瑠凛。


「彼女の扉は

 正解を積み上げ、再現する力

彼女も2回戦で一瞬扉を開けて

論理的思考+不確定要素を得た」


成宮金。


「……そして、扉を持たない者もいる」


協会長は淡々と言う。


「それは無能という意味ではない。

 才能に守られていない、というだけだ」


次の映像。


昏華すき。


「二つの扉を持つ例外。

 後天的な感覚と、先天的な予測」


「複数の扉は、人を不安定にする」


最後に表示されたのは、賭良詠。


だが、そこには説明がなかった。


「開く扉が分からないのではない」


協会長は、わずかに目を細める。


「彼女は――

 扉という存在そのものを信用していない」


「才能を磨かない。

 才能に頼らない」


一拍、沈黙。


「……壊す側だ」


その言葉は、記録には残らなかった。



深夜。


ベッドに腰掛けたすきは、獲得したフィギュアを見つめていた。


「ねえ……」


小さく呼びかける。


返事はない。


でも。


“気をつけて”


声じゃない。

幻聴でもない。


ただ、未来が一瞬だけ、拒絶した。


すきは胸を押さえる。


「……明日、なにが起きるの?」


答えは、ない。


ただ一つだけ確かなのは――

明日の準決勝は、なにか起こりそうな予感がした

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