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くれげの世界  作者: ぐろ
23/65

第23話 準決勝進出

 大会会場を見下ろすモニタールームは、静かだった。


 観客の歓声は、厚いガラス越しに、遠く霞んで聞こえる。


「……なるほどね」


 クレーンゲーム協会長は、ゆっくりと椅子に背を預けた。


 画面には、

 三回戦を終えたばかりの昏華チームが映っている。


 一回戦。

 凡人が、覚悟で勝った。


 二回戦。

 論理が、他者を信じて進化した。


 三回戦。

 才能が、役割を脱いだ。


「いいチームだ」


 会長は、小さく笑った。


「全員が、違う“間違え方”を覚えている」


 正しい手を打つことは、簡単だ。

 だが、正しくないかもしれない手を、

 誰かと共有して選ぶのは、難しい。


「それを、

 無意識でやっているのが面白い」


 会長は、別のモニターに視線を移す。


 そこには、敗れたママさんバレーチームの姿があった。


 悔しさは、ある。

 だが、誰も俯いていない。


「積み重ねは、裏切らない」


「だが」


 会長は、独り言のように続ける。


「積み重ね“だけ”じゃ、

 越えられない壁も、確かにある」


 沙希の一手が、脳裏をよぎる。


 あれは技術じゃない。

 奇跡でもない。


 覚悟の更新だ。


「さて……」


 会長は、指先で画面を切り替えた。


 表示される、次の対戦カード。


 ——準決勝。


 試合は、翌日。


 選手の疲労も、

 集中力も、

 “地”が出る。


 そして。


「来たか」


 会長の口元が、わずかに歪む。


 画面に映ったチーム名。


 マセガキ軍団。


 平均年齢は低い。

 だが、動きは無駄がなく、

 判断が、異様に早い。


「知識も、経験も」


「……そして、遠慮もない」


 大人相手でも、

 躊躇なく、踏み込んでくる。


 勝つために、

 嫌われることを選べる連中。


「昏華チームとは、真逆だな」


 会長は、モニターに映る五人を見る。


 まだ、笑っている。

 まだ、気づいていない。


「次はね」


「才能も、覚悟も、

 試される側になる」


 会長は、立ち上がった。


「準決勝……」


「面白くなってきた」


 画面の端で、

 マセガキ軍団の少年が、ニヤリと笑う。


 その視線は、

 まっすぐ、昏華チームを捉えていた。

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