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くれげの世界  作者: ぐろ
最終章“ 神域編”
202/205

第200話 ゴツン

次の瞬間――


会場が爆発した。


「うおおおおおおお!!」


歓声が天井を震わせる。


立ち上がる観客。

鳴り止まない拍手。

名前を叫ぶ声。



その中で。


ゴツン!!


鈍い音。


すきの拳が、

全の頭頂部に直撃した。


「いっっっってぇ!!」


全が頭を押さえてしゃがみ込む。


見る見るうちに、

大きなたんこぶが膨れ上がる。



駆け寄ってくる仲間たち。


売田が腹を抱えて笑う。


「ぎゃははは!優勝の一撃きたぁ!」


ジョーは肩を震わせながら笑いを堪える。


雪平は口元を押さえ、

バズ子はスマホを構える。


「ちょっと全くん♡その顔映える〜♡」


「撮んな!!」


笑いに包まれる空気。


すきも、つい吹き出した。


勝者の顔ではなく、

いつもの笑顔だった。



少し離れた場所。

神代統は静かに息を吐く。


「……あぁ」


空を見上げる。


「負けたかぁ」


悔しさはある。


だが、

口元は穏やかだった。


「届かなかったなぁ」


それでも、

どこか満たされた表情。



その隣で。


一条零は、

膝をついていた。


肩が落ちる。

視線は床へ。

手は動かない。



最初は、誰も近づかなかった。


そして――


カンッ。


床に何かが当たる音。

転がってきたのは、

空のペットボトル。


次に、

メガホン。

紙コップ。


誰かが叫ぶ。


「ざまぁみろ!!」


「でかい口叩いてこのざまかよ!」


「Dランク馬鹿にしてたよなぁ!」


「調子乗んなよ!!」


声は一つではなかった。


観客席。

通路。

関係者席。


――現役プロの中にも。


憎悪。

鬱憤。

劣等感。


溜まり続けた感情が、

一斉に噴き出していた。



零は動けない。


ただ、

音を聞いていた。


罵声。


物が落ちる音。

床を転がる音。

遠ざかる拍手。


その音の中で


記憶が蘇る。


体育館。

硬い床。

鈍い衝撃音。


バスケットボールをぶつけられる。


笑い声。


誰も止めない。

誰も助けない。

あの日の音。


零の呼吸が浅くなる。


視界が揺れる。


体が動かない。


そして呪いの音が蘇る。


ぱすっ。ぱすっ。

ぱすっ。ぱすっ。



そのとき。


空気を切り裂く声が響いた。


「やめるでげす!!!」


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