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くれげの世界  作者: ぐろ
最終章“ 神域編”
201/205

第199話 無限未来


すきの視界に、

未来が広がる。


一本の道ではない。


幾千。

幾万。

幾億。


無数の分岐。


勝利。

失敗。

崩壊。

奇跡。


未来選択。


だが――


次の瞬間。


別の流れが重なった。


全の感覚。


重心の直感。

空気の流れ。

触れる前の予兆。

「ここだ」と確信する感覚。


二つの知覚が重なる。


未来が増殖する。




すき一人では見えなかった分岐。


全一人では届かなかった精度。


それらが融合する。


未来は爆発的に増えた。

可能性が幾何級数的に広がる。


“ 無限未来”


観客席の誰も気付かない。


だが、

境地到達者たちは息を呑んだ。


零の目が見開かれる。


神代の口元が緩む。


雪平が静かに震える。


晴谷は微笑む。


会長の手が震えていた。




すきと全の指が触れる。


言葉はない。


だが、


思考が流れ込む。


(右、危ない)


(わかってる)


(次、跳ねる)


(任せろ)


声ではない。


心でもない。


魂の同期。


二人は手を取り合い、


一歩、踏み出す。



果てなき空間。


足元には無数の未来の道。


一歩進むごとに道が広がる。


二人が進むほど、


未来は整列していく。


収束していく。


一本の道へ。


確定未来。




零が歯を食いしばる。

楽譜は完成している。

音は支配している。

空間も掌握している。


それでも。

まだ届かない。


零の境地。

吹雪の雪山。

凍りついた指。

剥がれた爪。

血。


門を削り続ける。


「……開けろ……」



神代統の世界は最高潮だった。


白と黒の濃淡が躍る。


摩擦。

振動。

内部構造。

流れ。


合唱のように仲間の声が重なる。


統は笑う。


「最高だ……」




すきと全は歩く。


確定未来へ。


だが――


その道に、

ヒビが入る。


零の音の支配。

統の超集中。


世界が抵抗している。


だが、

二人は止まらない。


恐れない。

迷わない。


歩き続ける。



終点が見える。


静かな場所。

すきは足を止める。


全を見る。


「……ありがとう」


全は少し照れたように笑う。


「こっちの台詞だよ」


一拍。


「ババアって言って悪かったよ、すき」


すきは目を細める。


「試合終わったら、ね?」


その声は優しく、

少しだけ怖かった。


全が苦笑する。



二人の手が、

同時に動く。


現実のアームが降りる。


音はない。

歓声も遠い。


時間が、

静かに沈む。

触れる。

傾く。

滑る。


導かれる。


そして――


景品は、静かに


落ちた。



ゴトン。



音は小さい。


だが、

会場のすべての空気が震えた。


誰も声を出せない。


世界が、

その瞬間を理解していた。



神代は静かに息を吐いた。

零は目を閉じた。


晴谷は微笑み、

会長は立ち尽くした。



勝敗を告げる前に、


誰もが分かっていた。


到達したのだと。

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