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くれげの世界  作者: ぐろ
最終章“ 神域編”
198/205

第196話 負けられない

「――第三ラウンド、開始!」


アナウンスが響く。

最終ラウンド。


ここで決まる。



観客席は総立ちだった。


誰もが理解している。


今、目の前で起きているのは

ただの試合ではない。



応援席。


売田が柵を握りしめる。


「いけぇぇぇ!!相棒ォ!!」


ジョーは胸の前で手を組み、祈る。


「……」


雪平は前のめりになる。


「すき……全……」


バズ子が声を張る。


「全くんスマイル忘れないでー♡」



全が小さく笑う。

すきも、わずかに口元を緩める。


その瞬間――


二人の呼吸が揃う。



操作は全。


だが、

すきの視界がそのまま全の中に流れ込む。


重心。

摩擦。

アーム角度。


箱内部の動き。


未来予測ではない。

共有された感覚。



(そこは大胆に)


全の思考が流れる。


(右アームで投げる)


すきの感覚が重なる。


声は出ていない。


だが確かに、

二人は会話していた。



全のアームが降りる。


迷いがない。


箱が跳ね、


わずかに回転した。


観客がどよめく。


「動いた!」

「今の一手で!?」



零の眉がわずかに動く。


(……共有しているのか)


理解できない。

理解したくない。


だが確実に、

流れが変わっている。



神代統は、

楽しそうに笑っていた。


「はは……いいなぁ

最高じゃないすか」


胸の奥が熱い。

血が躍る。

心が跳ねる。



統の脳裏に、

晴谷への感謝が滲む。



ねぇ蓮二くん。


今、すげぇ楽しいよ。

ありがとう。

おれにクレーンゲーム教えてくれて。


おれの好きな主人公さ


明るくて、

優しくて、

仲間を大事にして、


そして

最後には絶対勝つんだよ。



統の瞳が輝く。


「……だからさ

ここは勝ちにいきますよ」



神代の操作。


色の差。

摩擦の違い。

内部の揺れ。


白黒の世界が情報の奔流になる。


箱がわずかに整う。



しかし。


すきと全は止まらない。


交代。


すきの操作。


全の感覚が重なる。


未来ではない。


今この瞬間の最適。


箱が滑る。

傾く。


重心が崩れる。



観客席が沸騰する。


「すげぇ!!」

「完全に合ってる!!」

「一体感がやばい!!」



零の歯が軋む。


(なぜだ)


(なぜ崩れない)


音は読めている。

動きも見えている。


だが、

流れが止まらない。



零の意識は扉内部


境地


雪山の中にあった。


吹雪。

凍てつく空気。

白い死の世界。


門はそこにある。


巨大。


冷たい。

動かない。


零は爪を立てる。


削る。


削る。


削る。


血が滲む。

指の感覚が消える。


それでも。


削る。



「……おれは」


息が白く散る。


「負けられない」


吹雪に叫ぶ。


「おれは……!」



現実。


零の目が鋭く光る。


統が隣で笑う。


「一条さん!

滾ってきましたね!」



観客席。


売田が絶叫する。


「ぶっ壊せぇぇぇ!!」


雪平が拳を握る。

ジョーが目を閉じ祈る。

バズ子が叫ぶ。


「いけえええええ!!」



最終ラウンド。


すべてが交差する。


門を開いた者。

門を削り続ける者。

楽しさの頂点にいる者。


そして、

仲間と共鳴する者。



決着の瞬間が、

近づいていた

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