第196話 負けられない
「――第三ラウンド、開始!」
アナウンスが響く。
最終ラウンド。
ここで決まる。
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観客席は総立ちだった。
誰もが理解している。
今、目の前で起きているのは
ただの試合ではない。
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応援席。
売田が柵を握りしめる。
「いけぇぇぇ!!相棒ォ!!」
ジョーは胸の前で手を組み、祈る。
「……」
雪平は前のめりになる。
「すき……全……」
バズ子が声を張る。
「全くんスマイル忘れないでー♡」
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全が小さく笑う。
すきも、わずかに口元を緩める。
その瞬間――
二人の呼吸が揃う。
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操作は全。
だが、
すきの視界がそのまま全の中に流れ込む。
重心。
摩擦。
アーム角度。
箱内部の動き。
未来予測ではない。
共有された感覚。
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(そこは大胆に)
全の思考が流れる。
(右アームで投げる)
すきの感覚が重なる。
声は出ていない。
だが確かに、
二人は会話していた。
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全のアームが降りる。
迷いがない。
箱が跳ね、
わずかに回転した。
観客がどよめく。
「動いた!」
「今の一手で!?」
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零の眉がわずかに動く。
(……共有しているのか)
理解できない。
理解したくない。
だが確実に、
流れが変わっている。
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神代統は、
楽しそうに笑っていた。
「はは……いいなぁ
最高じゃないすか」
胸の奥が熱い。
血が躍る。
心が跳ねる。
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統の脳裏に、
晴谷への感謝が滲む。
ねぇ蓮二くん。
今、すげぇ楽しいよ。
ありがとう。
おれにクレーンゲーム教えてくれて。
おれの好きな主人公さ
明るくて、
優しくて、
仲間を大事にして、
そして
最後には絶対勝つんだよ。
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統の瞳が輝く。
「……だからさ
ここは勝ちにいきますよ」
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神代の操作。
色の差。
摩擦の違い。
内部の揺れ。
白黒の世界が情報の奔流になる。
箱がわずかに整う。
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しかし。
すきと全は止まらない。
交代。
すきの操作。
全の感覚が重なる。
未来ではない。
今この瞬間の最適。
箱が滑る。
傾く。
重心が崩れる。
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観客席が沸騰する。
「すげぇ!!」
「完全に合ってる!!」
「一体感がやばい!!」
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零の歯が軋む。
(なぜだ)
(なぜ崩れない)
音は読めている。
動きも見えている。
だが、
流れが止まらない。
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零の意識は扉内部
境地
雪山の中にあった。
吹雪。
凍てつく空気。
白い死の世界。
門はそこにある。
巨大。
冷たい。
動かない。
零は爪を立てる。
削る。
削る。
削る。
血が滲む。
指の感覚が消える。
それでも。
削る。
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「……おれは」
息が白く散る。
「負けられない」
吹雪に叫ぶ。
「おれは……!」
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現実。
零の目が鋭く光る。
統が隣で笑う。
「一条さん!
滾ってきましたね!」
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観客席。
売田が絶叫する。
「ぶっ壊せぇぇぇ!!」
雪平が拳を握る。
ジョーが目を閉じ祈る。
バズ子が叫ぶ。
「いけえええええ!!」
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最終ラウンド。
すべてが交差する。
門を開いた者。
門を削り続ける者。
楽しさの頂点にいる者。
そして、
仲間と共鳴する者。
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決着の瞬間が、
近づいていた




