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くれげの世界  作者: ぐろ
最終章“ 神域編”
197/205

195話 九條恒一②

門に手をかける。

押す。


開かない。


叩く。

開かない。


集中する。

開かない。


何度も。


何度も。


何度も。


動かない。


「……なぜだ」


才能が足りないのか。

努力が足りないのか。

何が足りない。


静寂。


答えはない。



九條全(くじょうぜん)


孫の肩を見る。


何度見ても――


扉が、ない。

胸の奥で何かが崩れた。


希望。

未来。

可能性。


焦燥が怒りに変わる。


「扉がない」


沈黙。


母親が頭を下げる。


「申し訳ありません」


止まらなかった。


「才能がない」


全が母の服を掴む。


「ママ、泣かないで」


その声が、深く刺さった。

恒一の手が震えていた。


怒りの震えではない。

恐怖だった。


自分の言葉で、大切なものを壊した恐怖。


だが、止まれなかった。


──


才能を集めればいい。


磨き合えばいい。


協会設立。

大会開催。

扉持ちの収集。

境地到達者の育成。


だが――


門は開かない。


年月だけが過ぎる。


胸の奥が焼ける。


焦燥が溜まる。




その夜。


境地へ入る。


門はそこにある。


開かない。


押しても。

叩いても。

動かない。


なぜだ。


なぜ届かない。


膝が床についた。


初めてだった。


山頂に立ち続けた男が、

初めて膝をついた。



脳裏に浮かぶ。


晴谷の笑顔。

山口の穏やかな声。


三人で筐体の前に立っていた夜。


笑い声。


静かな時間。

共有していた景色。

胸が締め付けられる。


「……私は」


初めて理解した。


一人で登ることに執着し、

仲間の歩幅を切り捨ててきた。


一番、平等ではなかったのは

自分だった。



門の前で、恒一は額を押し当てる。


声は出ない。


だが心の奥で、


初めて言葉が生まれた。


(……助けてくれ)


静寂。


門は動かない。


それでも。


手を離すことができなかった

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